大人の読み聞かせ「月島!」
古い本の多い半地下の書架へ返却済みの本を戻しに来てみると、そこには鯉登の姿があった。鯉登は月島の姿を見つけるとぱっと表情が輝き、月島はそれを見てこころなしか薄暗い書架が明るくなったような感じがした。
「珍しいですね。貴方が9類の書架に来られるなんて」
そう二人がいる書架は9類、所謂文学のコーナーだ。鯉登は全く文学を手に取らない訳ではないのだが、学部に関連のある書架にいることが多い。しかもここは明治大正などに活躍した文豪の書籍が多く揃っている書架だ。だからこそ月島はここに鯉登が居ることに少し驚いていたのだ。
鯉登は月島に会えたことが嬉しいのか、子どものような笑顔で口を開いた。
「実は友人からオススメの本を紹介してもらってな、それを探してたんだ!」
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