「 ……目標額、あとちょっっとなのに、貯まんないねぇ、千空ちゃん…… 」
「 あ"〜……他、なんかねぇのかメンタリスト 」
「 ん〜……考えてるんだけどさあ〜…… 」
薄暗い部屋で、額を突き合わせるくらいの距離で二人は疲れたようにつぶやいて。
そこでぷつんと何かが切れた。
ふと、部屋の奥から秘めやかな声が響いて、銀狼は足を止めた。
ここは、千空とゲンの部屋のはずだが、こんな深夜にまた二人でなにか悪巧みでもしているのだろうか。
二人の密談の内容が気になって、耳をそばだてる。
「 ……ッあっ!……おれ、もう……無理……ッ!」
「 あ"ぁ?無理なわけあるか。……テメーなら、まだまだ余裕あんだろうが」
常にない、切迫した様子に思わず耳がダンボになる。……これは、もしや。
「 あっ、ああ……ッ!……も、やぁ、……んッ!おちん○ん、オクまで欲しいのぉ♡♡♡」
掠れた、女の子みたいに甘ったるいゲンの声に、ぎしりと言う音と共に千空の声が重なった。
「 ククク……ゲン、テメー……パンパンじゃねぇか」
「 ああ……ッ!!もっとぉ……!もっとちょうだい……♡♡♡」
情事の最中のような声に混じって、カシャカシャと金属質な音が響く。
……えっ、ひょっとしてそういう……なんか……エッチな道具とかで……????
生唾を飲み下しながら聞き耳を立てていると、更にゲンの声が艶を帯びてくる。
「 ……ら、らめぇ……ッ!そんなに無理矢理入れたら、入んないよぉ……ッ!♡♡♡」
「 あ"ぁ?……こんくらいはまだまだ余裕で入んだろうがよ、ゲン先生よぉ?……オラ!オラ!」
「 ……リ、リームーだってぇ♡♡♡……あぁん、……も、無理ぃ……♡♡♡」
……なんということだろう。二人が、そんな。みんなが寝静まった頃に、二人きりでそんな気持ちよくてエッチなことをしてる関係だったなんて!
衝撃を受けながら、その場を立ち去ろうとしても初めて直面した、しかも村長とその参謀の生々しい濡れ場に腰が抜けてしまって。ついでに、下半身にあらぬ生理反応が生じてしまって。
銀狼は這いずるようにしながらその場を立ち去った。
「 金狼にいちゃ〜〜ん、みんな〜ぁ、大変だよ〜ぉ」
動揺のあまり、口調が幼くなってしまったが、先程の出来事を自分一人で抱えておくことができず、銀狼は兄を叩き起こすと、見てきたことを洗いざらい吐き出した。
「 なーんか、外が騒がしいねぇ」
目の下に隈を作りながら、ゲンは千空を振り返る。いくら数えても、足りないものは足りない。
「 ……気分転換の茶番にも疲れたし、今日はもう寝ない?」
「 あ"〜、だな……これ以上の徹夜はパフォーマンスに響く。寝んぞ」
頷き合って、二人はゴソゴソと布団に潜り込んだ。……三徹目とは言え、おかしなテンションになってしまっていたようで。
さっきまでの茶番を思い出すと、なんだかお互い妙な気分になってしまう。
それに気づかなかったふりをして、二人は三日振りの寝床に突っ伏した。
朝起きると、二人を見る周囲の目が、どことなく変わっていて。
なんだか居心地の悪い思いをすることになった。