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    edF1X2

    @edF1X2

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    edF1X2

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    百P♂
    ハートマークは描いてる設定
    たぶん土日。
    基本捏造。

    最近はたぶん楽しいんだと思う。
    アイドルになってから日常のすべての見え方がちょっとずつ変わっていって、キラキラと日々が流れていく。
    それは絵の具の色が増えたような感覚に似ていて、あお、あか、きいろ、と苦心しながら置いていった色たちが自ら踊るように世界を彩っていた。
    だから嬉しくなって筆を走らせようと筆を持ったのに、しろいキャンパスに触れる前に止まってしまう。
    (──なんでだろう)
    アイドルになっての初仕事では描けたはずだ。迷いながらも"ぴぃちゃんのために"と決意して、遊びに来てくれた子供たちの笑顔をたくさん描いたはずだったのに、今は描けない。

    うつうつとした気持ちを切り替えるように画材を片付けていく。何かを期待するように絵を描く百々人を見る母はもういない。
    それがすこしさびしくて、───ほっとした。
    (そんなのだから、一位を取れない)
    もっと必死に、すがりついて、血反吐を吐くように描けば何かが変わったのかもしれないのに"あの日"百々人は諦めた。母から愛されないということを受け入れた。
    「……って、きます」
    パチンと誰もいない家のライトを消して外に出ると体が軽くなる。一歩、二歩、三歩と進んで家が見なくなった頃ぐっと背を伸ばすとすこしだけ気分も軽くなった。

    街中を流れる音楽はアマミネくんがオススメしていた一曲だ。なんでもドラマの主題歌に選ばれたことがきっかけに日の目を浴びたけど、アマミネくんは前から知っていてバズり待ちをしていたとかどうとか。
    実力があっても最後は時の運。より多くに認知されなければ意味が無い。だからC.FIRSTの売り方を考えなければ。
    そう言ったアマミネくんにぴぃちゃんは深く頷いて、315プロダクションの動画チャンネルを開き、話し合っていた。
    得意なことや好きなことを動画にするのはいいな。同じ趣味の人が見つけてくれる可能性が上がる。
    そうマユミくんが言って、なら僕は絵なのかなと何となく思った。
    絵を描く過程を撮って動画にする?塗り方の解説とか?どんな画風が好きなのかを話す?なんで絵を描き始めたとか、これまで取った賞の話とか?
    全部話すほどの事じゃないと思った。全部誇れるものでもなかったし、好きでもなかった。
    ただ愛されたくて、描いていただけなのだからそういった好き同士が集まるコミュニティに絵を持ち込むのは、諦めてしまった僕ではなおさら場違いに思えてしまうのだ。
    「おはようございます。百々人さん」
    「おはよう、ぴぃちゃん。今日一番に会えたから僕嬉しくなっちゃった」
    「一番……?」
    「ちょっと寝坊しちゃって」
    時刻は既に九時を回っていて、家庭のごたごたを知らないぴぃちゃんは少し首を傾げてから僕の言葉に納得したように頷いた。
    「あの、百々人さん」
    「なぁに、ぴぃちゃん」
    少し周りを見渡したぴぃちゃんは半歩ほど僕に近づいて声を潜めた。内緒話みたいな距離が面白くなって僕も声を潜めて近くなったぴぃちゃんの瞳を覗き込むと、僕の顔が映り込んでいて、
    「目元のハートマーク消えちゃってますよ」
    「あ、ほんとだぁ」
    「ほんとだ?」
    「ふふ、ぴぃちゃんの瞳に映ってる!」
    何も無い目元をなんでもないように笑って誤魔化した。
    「今日は撮影とかは無いですけど、どうしよう、事務所に常備してあるメイク用品で大丈夫ですか? あ、そもそもご自分のを持って──」
    「──るね。ぴぃちゃん落ち着いて」
    いつものようなアイドルたちを見守り、支えようとしてくれるぴぃちゃんの姿とは違う一面に心がそわそわと落ち着かない。
    「あ、すみません、俺、気をつけてたのに、すみません……」
    「なんで謝るの?」
    ぴぃちゃんが慌てたせいで離れてしまった距離をつめるように足を向けると、ぴぃちゃんはビクッと肩を跳ねさせた。
    「すこし、心配性でして、社長は『それでアイドルたちを助けてあげてほしい』って言ってくれたんですけど、やっぱりみなさんにとっては、頼りがいのあるプロデューサーでいたいと言いますか……」
    確かにぴぃちゃんは気配り上手だ。アイドルの相談事をいつでも受けていて、解決できそうな相手(これもまたアイドルである場合が多い)に繋げている。仕事にしたってぴぃちゃんが気づいたこと、アイドルが気づいたことをそのままにせず先方に伺って調整してくれている。
    踏み込みすぎず、係っきりにもならないように、みんなが成長できる手伝いをぴぃちゃんはしてくれている。
    「──驚いたな」
    「で、すよね。心配性なことを知っていて助けてくださる方たちも多いんですけど、びっくりしましたよね。すみません」
    「ううん。ぴぃちゃんの素敵な所だと思っていた所を、ぴぃちゃんがあんまり好きじゃないことに驚いた」
    それはたぶん、僕が言われたことのある感覚だった。
    自分ではどうしようもないと思っていることを、誰かに褒められた時に上手く飲み込めない感覚。
    ぴぃちゃんはそれを飲み込もうと頑張っている人だったのだ。
    「──ねぇ、ぴぃちゃん。ハート描いてほしいな」
    するりと口から出た後に認識した提案は、改めて考え直してみてもとても素晴らしいものだと思った。
    「僕今ね、ちょっと悩んでて、ぴぃちゃんが"おまじない"してくれたらがんばれそうなんだ」
    周囲との齟齬を無くそうと、期待に応えようと前を歩くぴぃちゃんと同じ道を行こうとする僕への"おまじない"。
    「あの、百々人さん?」
    「そうしたら、今度は僕がぴぃちゃんをいっぱい助けてあげるから」
    そうしてできることが増えたら、もっとぴぃちゃんの役に立つよ。
    ぴぃちゃんの役に立って、ぴぃちゃんの助けになりたい。だから、
    「……もしかして気を使わせてますか?」
    「んーー? 打算かな」
    「ださん」
    だから、見捨てないでほしい。
    そういう打算
    「でも俺メイク下手ですよ」
    「今日は撮影ないから大丈夫〜! いっぱい描いて上達してね」
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    Replies from the creator

    edF1X2

    DONE麟修
    https://twitter.com/edF1X2/status/1488662471934345217?t=nMQ27KB00WFkg_w6d3v5Dg&s=19
    これ。基本捏造しかない
    いつものふたり。たぶん、その日も雨が降っていた。

    麟児のどこか冷たさをまとった低い声がいつもよりハッキリと聞こえたと嬉しく思ったからだ。
    ぽつりぽつりと傘を叩く雨音に溶け込むように穏やかに麟児は話す。他人と話す際にはない温度を傘の内側で感じながら顔に出さないように前を向いていた。
    「お前がこの前言っていた橋が映るんだろう?」
    「え、あっ、はい。フライヤーに載ってたのでおそらく」
    海を越えたとある国のとても大きな橋がロケ地となる。そう教えてくれたのは同じく海を越えた先で働いている父だった。だが日本での公開は一ヶ月ほど遅れると知り、当時いつになくテンションを上げて麟児に話していたことが修は少しだけ恥ずかしかった。
    その映画のコマーシャルがテレビで流れたようで麟児はなんでもないように修へと話を振ったのだ。一ヶ月も前に話した、麟児の興味では無いような映画の話を覚えていてくれたことにのぼせる頭を傘の外へと傾ける。そんなことをしたって顔が赤いのはバレているし、なんなら傘の中の温度さえも上がったように感じて足が止まってしまいそうだった。
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