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    edF1X2

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    ぼすみっち

    気持ち灰武とココ武。死ネタ。捏造。
    垢作った!
    @tmkrsheep

    Re:リベンジ「あーあ」

    こんなタイミングでなければ丁寧に味わっていたであろうワインを"男"へとぶちまける。
    匂い立つ葡萄の香りはひと舐めで天国へと誘われるほどの代物で、ピクリともしない"赤く染った男"が会談へと持ち込んだ献上品だった。
    「勿体ないことするなァ……」
    先方が森奥にある館を指定した時点で罠だと言ったのは誰だったか。揉めに揉めて、結局、護衛を灰谷兄弟へ任せて、留守中に何かあっては仕方ないと九井と鶴蝶を組ませて赴いたのが日没寸前。
    夕食をしながら話そうと灰谷兄弟と離されて別室へ。たわいもない話をしながら食事をすすめ、件のワインを"特別に"と傾け悪巧み。
    口をつけるふりをして相手の顔目掛けてぶっ掛けてやれば、慌てふためいて椅子から転げ落ちた。そこをすかさず二発。
    そして現在。
    「ボディチェックも無し。食事中の護衛も無し。どんだけ弱く見られてんだろオレ」
    『──いいからさっさと逃げろよボス。灰谷兄弟から応答がねぇんだ』
    骨電導を利用したイヤホンから逃走用の車で近くまで来ていた九井の声がする。
    はいはい、と短く返事をしながら食卓に並べられていたロウソクをワインで濡れた絨毯へ落とした。

    扉を開けて廊下に出ると血肉と硝煙の匂いが鼻につく。壁のちょうど頭の高さほどにある銃痕に手を当て、事切れている人間を避けながら歩いていくと、見知った紫色が目に付いた。
    「おっ、竜胆くん」
    ラベンダーで統一されていたスーツは血に汚れ、伸ばしていた美しい髪は引っ張られたのか、はたまた切られたのかところどころ短くなっていて見るも無惨という有様だ。
    近くに寄って顔をのぞき込むと微かに閉じた瞼が震えている。
    「ちょっと引きずるね」
    竜胆の腕を肩にかけてゆっくりと立ち上がる。それでも余りすぎる脚に軽くイラつきながらも落とさないように慎重に歩いていく。
    「……し、……れ……、」
    耳元で聞こえる竜胆の低い声は掠れていてとても聞き取れるようなものではなかった。
    ああ本当に死ぬんだな竜胆くん。ようやく納得した自分に泣きそうになった。

    捨て置けと耳元でうるさい九井を無視して歩く。そのうちぱちぱちと弾けるような音がしてロウソクの火が上手く燃えうつったことにほくそ笑む。
    「重い」
    「……ど、う……! 」
    「聞き取れなかったけどバカにしてんのはわかった! 」
    大方日頃の運動不足を笑っただろう竜胆に言い返したところでやっともう一人の紫色を見つけた。

    灰谷蘭。灰谷竜胆の兄である美丈夫はきっちりと後ろへ流した髪を血で汚し、斬られたのか腹からだくだくと血が流れ出していた。
    「──タケミチじゃん」
    「うっわそれで喋れんのはヤバいって」
    なるべく側へ、なんなら重なるように竜胆を傍に横たえると、竜胆は寄り添うように蘭へと体を傾けた。
    「館燃やしたから」そう武道が言うと「はいよ」と軽い声。蘭は弟をあやす様に手を弟の頭の下にやり、抱き合うように頭を撫でた。
    「うちの弟の髪切ったやつ誰」
    「竜胆くんがもう殺してるよ」
    「に……、はら、……れ」
    「蘭くんがもう殺してる」
    全くこの兄弟ときたら最期だっていうのにそんなことばかりで武道は心底呆れてしまう。
    顔にかかった髪かるく払ってやると灰色の瞳とかち合った。
    「タケミチさ、オレらが離れそうになるといやそーなカオすんじゃん。アレなんで? 」
    いつものように誤魔化そうとして彼らから流れる血に口を閉ざす。二度、三度と口を動かして、困ったように手を当てた。
    「なんだろ、みんな離れたくないのに離れちゃってさ。それなのにキミらはいつだって、どこでだって、二人で楽しそうだからさ、ちょっと贔屓。──楽しかった? 」
    命が消える。もう何度も立ち会っているはずなのに一向に慣れる気配の無い感情の渦に少しだけ視界が歪んだ。
    「──遊びたんねぇくらいにな」
    どこに行っても彼らは闇にいた。佐野万次郎が首領でも黒川イザナが首領でも、花垣武道が首領でも楽しそうに好き放題遊んでいた。世界に翻弄されず、幸せそうに日々を過ごす彼らに安心を覚えたのはいつ頃だったか。
    自分の選択で大きく進む道が変わってしまう仲間たちを見て焦燥するたびに、変わらない彼らを見て安心した。
    どこでも変わらない彼らを見て、武道程度が何をしたってみんなを幸せにできるわけが無いと絶望した。
    「──待ってんぜ」
    不思議とはっきりと聞こえた竜胆の声に俯いていた顔を上げる。
    ──まだまだ遊び足らない。次は地獄だ。お前も来るだろう?
    ──楽しいことをしよう。あの世だって絶対に遊べるから!

    「また今度ね」

    明日何をして遊ぶか考えるような表情で彼らは物言わぬ死体となった。







    外に出ると同時にドカン!と大きな音がした。ちょっとまずいものに引火したかもしれない。足早に見慣れた黒い車へと向かうと外に九井が外に立っていた。
    「──ボス! 」
    「ココくん、キミの引きずってる後悔って何? 」
    「は? 」
    さっさと避難しようと武道の腕を引っ張ろうとした手に自分の手を重ねる。冷たく、強ばった指を一本ずつ丁寧に外して指を絡めた。
    「キミの、後悔を、教えてほしい」
    お願いをする時はちゃんと瞳を見て。なにかに怯えるよな色が九井の瞳にチラついた。
    「そんなことどうだっていいだろ、逃げないと燃えちまう」
    微かに震えた声にやっぱり"火事"かと一歩後ろへ下がった。
    「ボス!! 」
    過剰とも言える反応。既に九井の瞳は武道だけではなく、自身の後悔までもを色濃く映していた。
    「オレね。タイムリープしてんの」
    今回では初のタネ明かしとなる秘め事を絡めた九井の手の甲に口を寄せながら明かす。
    ああ、この手がきっと今までより過去へとオレを飛ばしてくれる。
    期待と、安堵と、不安。ぐちゃぐちゃに入り交じったそれらを全部九井に明かす。
    ただ事ではないと降りてきた鶴蝶もまた絶句したように武道を見ていた。
    「オレ諦めたくないのにみんな"もうやめろ"って言うんだ。まだ負けてないのに。まだ走れるのに! 」
    ココくんはそんな事言わないよね? 知らず流れた涙は九井の掌へと伝い、落ちていく。
    「ココくんは! オレに助けて欲しい人がいるよね……? 」
    武道が最初にリープしたのは死ぬ直前だった。直人は死んだ姉のことを酷く思い詰めていた。万次郎は死ぬ直前だった。それほどまでに思い詰めていないとリープは出来ないのだ。
    昨日の事のように、何度繰り返しても橘日向を守ると誓った武道や直人のように、思いつめていないとダメなのだ。
    真一郎の死を万次郎たちは乗り越えようとしていた。それが当然だ。それが自然だ。でも、だからこそ、とある周回で万次郎と手を握っても真一郎が死ぬ以前には飛べなかった。
    ならもう九井一しかいない。彼しか可能性を武道は知らない。
    「ココくん! 」
    助けを求めるような声色に内心で苦笑する。過去をより近くに引き寄せるように火事を起こし、九井を追い詰めているくせになぜ自分が泣いているのか。熱風が武道を責めるように背中を撫でた。

    するりと手がほどかれた。

    「──乾、乾赤音だ。××××年××月××日××時××分! 乾家は燃やされた。治療費を稼ぐために何でもしたけど、……間に合わなかった」

    いいんだなと蛇のような瞳が光る。本当は自分が助けたいのに、他の男に頼まなければいけないという感情を煮詰めた瞳が武道を貫く。
    「オレが諦めなければ絶対に勝ち馬だ。後悔はさせない」
    改めて握手をしようと手を伸ばす。
    「握手をするのはオレじゃない。ボスの話じゃ"トリガー "は生存率が高い方が都合がいいだろう? オレじゃちょっとばかし危険だぜ」
    言いながら九井は銀に染めた髪をゴムでまとめ、護身用のナイフを取り出して切り落とした。
    「ココくん? 」
    「──イヌピーだ。これを渡して全部話せば、絶対にアイツは"トリガー"になれる」
    艶やかな銀色の束をタケミチに握らせ、九井は歩き出す。
    「ココくん、ねえ、まってよ、ココくん!」
    「お前のこと止めねぇよ。だから止めるな、ボス! 」
    「──っ!」
    そうして一度も止まることなく、彼は燃え盛る館へと消えていった。





    ___こぼれ話___
    ・赤音さんと同じ死に方がしてみたかったココくん。
    ・この後鶴蝶とイヌピーに会いに行って乾家火事事件より前に飛ぶ。
    ・九井のイヌピーや赤音に対する感情にシンパシー覚えてる武道。
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    Replies from the creator

    edF1X2

    DONE麟修
    https://twitter.com/edF1X2/status/1488662471934345217?t=nMQ27KB00WFkg_w6d3v5Dg&s=19
    これ。基本捏造しかない
    いつものふたり。たぶん、その日も雨が降っていた。

    麟児のどこか冷たさをまとった低い声がいつもよりハッキリと聞こえたと嬉しく思ったからだ。
    ぽつりぽつりと傘を叩く雨音に溶け込むように穏やかに麟児は話す。他人と話す際にはない温度を傘の内側で感じながら顔に出さないように前を向いていた。
    「お前がこの前言っていた橋が映るんだろう?」
    「え、あっ、はい。フライヤーに載ってたのでおそらく」
    海を越えたとある国のとても大きな橋がロケ地となる。そう教えてくれたのは同じく海を越えた先で働いている父だった。だが日本での公開は一ヶ月ほど遅れると知り、当時いつになくテンションを上げて麟児に話していたことが修は少しだけ恥ずかしかった。
    その映画のコマーシャルがテレビで流れたようで麟児はなんでもないように修へと話を振ったのだ。一ヶ月も前に話した、麟児の興味では無いような映画の話を覚えていてくれたことにのぼせる頭を傘の外へと傾ける。そんなことをしたって顔が赤いのはバレているし、なんなら傘の中の温度さえも上がったように感じて足が止まってしまいそうだった。
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