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    於花🐽

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    於花🐽

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    TDD時代の回想から始まるバチバチ期の左馬刻と一郎のパンツにまつわる話。

    ssメーカーで載せていたものの再掲。

    ##サマイチ

    不健全教育 十七歳の一郎は衝撃を受けた。
     バトルの後、寂雷も乱数もそれぞれ用があるというので、一郎と左馬刻は久しぶりにサウナでも行くかという話になった。
     サウナで疲れをとって、汗を流してサ飯を食べるというのに別に問題はない。
     さあサウナに入ろうとした脱衣場での出来事である。
     何気なしに隣で服を脱いでいる左馬刻を見たのだ。
     そこでもう下着一枚になっている左馬刻を見て、一郎は衝撃を受けた。
     左馬刻の下着がTバックだったのだ。
     ウエストは紐ではなく太いゴムでフロントもちゃんと生地がある。だだし後ろはTバックである。
    ───は?
     一郎が固まっているのに左馬刻が怪訝な顔で振り向く。
    「どうした? さっさと服脱げや」
    「いや、……えっと」
    「何だよ」
     一郎は言い淀む。そもそも何と言っていいものかわからない。
    「左馬刻さん、下着……凄いっすね」
     左馬刻は自身の下半身を見る。
    「別に普通だろ?」
    「普通、ですか?」
    「今日みたいなスキニーだとそういうパンツ穿くとパンツの線が透けて見えるんだよ」
     左馬刻は一郎が穿いているボクサーパンツを指差す。
    「そうなんすね……」
     ビックシルエットの服を好む一郎にはいまいち実感がない。
    「パンツの線浮き出てんのダセぇだろ?」
    「あ、はい……」
     一郎はしっかりと理解は出来なかったが左馬刻の言う事なので頷いた。
    「身だしなみの一つだぜ」
     一郎は左馬刻の説明に『大人の男はそういうところまで気を遣うのだ』と思った。そうして自分もこれからはそこまで気をつけようと思ったのだった。

     そうだ。思ってしまったのだ。

     ■

     ディビジョンバトルの代表メンバーは何かと担がれる。
     最も担ぎ出されるのがプロモーション撮影だった。
     中王区からディビジョンバトル関連のポスターなど諸々の撮影に呼び出されたり、果てはディビジョンバトルの協賛企業のイメージキャラクターまでやらされたりする。
     勿論拒否権はない。こちらのスケジュールは一応考えてはくれるが、断る事は出来ない。渋ればディビジョンバトル予選から勝ち取ってきた優遇措置や権利などの剥奪をちらつかせてくる。
     左馬刻やMTCに個別に出演依頼がくる事は少ない。左馬刻の職業が職業なので単体で出る事はまずない。だいたいは勝ち進んだメンバー十八人全員揃う時に呼び出される。
     今日も十八人で協賛企業主催のプローモーションポスターの撮影があった。
     こんな事にかり出される事も嫌なのだが、もっと嫌なのが控え室が大部屋で全員同じ事である。中王区が全て取り仕切っていれば大部屋で待たされる事はないが、今回は企業主催でそこまでの配慮がない。
     左馬刻は一郎と乱数が会話しているのを視界の端に捉えながら暇を持て余していた。
     撮影スタッフの一人が入ってきてそろそろ撮影だと言う。
     今回は企業側から衣装が用意されていてそれを着て撮影する。
     左馬刻は着替え終わっていたのだが、視界の端の二人はお喋りに夢中でまだ着替えていなかった。二人は少し慌てて衣装を手に取る。
     楽屋の隅にパーテーションで区切られた着替え用のスペースがあったが、今はナゴヤのメンバーが使用しているようだった。
     男しかいないからだろう二人はこの場で着替えてしまう事にしたようだ。
     乱数は自分のチームメンバーに呼ばれてそちらで着替え始めた。
     左馬刻の目は一郎だけを追い続けてしまう。
     一郎は豪快に服を脱ぎ捨てて行く。
     下着姿になった一郎を見て左馬刻はぎょっとした。
     一郎が穿いていたのは黒のパイピングのある真っ赤なボクサーパンツだった。
     色が派手なのはどうでもいい。問題は着丈だ。
     股上と股下が異常に短い。ビキニではなくボクサーパンツではあるが、一般的なものよりも格段に短い。勿論隠すべきところは出てはいないが鼠径部はほとんど出ている。
     一郎が左馬刻に背を向ける。
     ボクサーパンツの布は尻の肉を覆いきれていなかった。
     思わず『なんつうもん着てやがる』と叫びだしてしまいそうだったが、左馬刻はぐっと堪えた。
     叫び声を呑み込んでいると一郎はさっさと衣装を身につけていく。
    「左馬刻、撮影スタジオに行きますよ」
     銃兎から声がかかる。
    「お、……おう」
     左馬刻は一郎から視線を外して立ち上がった。
     この日の撮影はあの下着姿の一郎が頭にちらついてついつい目に力が入ってしまい、出来上がった写真を見たプロデューサーがこっそり「この碧棺さん眼光鋭いですね」なんて感想を呟く始末だった。

     撮影されたポスターは街頭を飾った。
     一郎は上着がめくれてへそが見えていた。ズボンも腰穿きであったがあのパンツは少しも写っていなかった。
     けれど確かに一郎はあの布面積の少ないパンツを穿いてこのポスターを撮られたのだと思うと、このポスターを見る時、左馬刻の眉間には深い皺が刻まれるのだった。


     ■


     また撮影に呼び出された。
     ディビジョンバトルを記録したメディアの発売で十八人でそのパッケージの撮影だった。
     今回、あてがわれた部屋は狭いが控え室は各チーム別々だった。衣装もなく自前の物でいいというのも良い。
     しかし控え室が狭いのでヘアスタイリングなどをするメイクルームは別にあった。
     銃兎も理鶯も控え室でスタイリングを済ませたが、左馬刻はメイクルームを使う事にした。
    「?」
    「げ」
     左馬刻がメイクルームに入ると先客が一人だけいた。よりにもよって一郎だ。
     一郎は力仕事帰りなのかツナギ姿だった。手には大きめの鞄を持っている。ツナギで撮影に入る気はないらしく着替えるようだ。メイクルームの隣は簡易のシャワールームに続いているから、仕事終わりの汗を流してから着替えるつもりなのかもしれない。
     左馬刻もシャワーで髪を軽く流してからヘアセットをしようを思っていたが一郎がいるのならば洗面台にあるシャワーヘッドで済ませる事にしよう。一郎がいるから一度退室して時間をずらすという考えはない。一郎もまた同じようだった。
     髪を濡らして鏡の前に座る。
     一郎に背を向けて座っていると鏡の中の一郎は居心地が悪そうに鞄を探っている。一郎も左馬刻に背中を向けていた。
     左馬刻がスタイリング剤を手にすると、一郎が服を脱ぎ始めた。
     手を動かしているのはボタンを外しているらしい。そしてツナギだから肩を抜けば着ていたものはストンと落ちた。
     体のラインが浮き出るタイトな上下のインナー姿になった一郎はそのインナーも脱ぎ捨てていく。下着一枚になった一郎を見て左馬刻はまたしてもぎょっとした。
     尻が丸見えだった。
     パンツを穿いていないわけではない。
     ウエストに黒いゴムと両足の付け根にゴムが這っている。一郎は尻を丸出しにした下着を穿いているのだ。
    「おい」
     左馬刻から地を這うような声が漏れる。
    「?」
     一郎が不思議そうな顔で振り向く。
    「テメェ何だそれ」
    「……何が、?」
     左馬刻は立ち上がって大きな一歩で一郎に近付いた。
    「それだよ、それ」
     左馬刻は一郎の体を正面から抱き寄せるようにして背中に手を回した。そして丸出しの尻を鷲掴む。
    「は?!」
     一郎の口から驚きの声が溢れる。驚いてるのはこちらだと左馬刻は思った。
    「お前なんつうパンツ穿いてんだ、?」
    「え? は?」
     左馬刻は一郎の肌に直接触っている掌を動かした。
    「っ!」
     尻を揉まれた一郎は突然の出来事に目を白黒させる。
    「何でこんなケツワレのパンツなんか穿いてんのか訊いてんだよ!」
    「ケツ、ワレ……?」
     とぼけているような一郎に腹が立って、左馬刻は尻を触る手に力を込めた。
    「このパンツだよっ」
    「ひっ」
     一郎が左馬刻の腕の中で体を捩る。
    「おい、さっさと理由を言え」
     左馬刻は尻を割開くように手を動かす。一郎の体が固くなる。
    「離せ、よ」
    「正直に言ったら考えてやる」
    「正直も何も仕事だったから……」
     一郎が穿いているのはジョックストラップのパンツだった。
     ジョックストラップのパンツは股関が固定される。今日は壊れた雨樋の応急処置など高所の仕事があった。大きく体を動かす仕事の時には一郎はこのパンツをよく穿いていた。脚を自由に動かすのにいいのだ。
    「仕事? こんなエロいパンツ穿いてどんな仕事だったんだよ!」
     左馬刻はジョックストラップのパンツを詳しくは知らずただ尻を丸出しにしているとしか思えなかった。
    「エロ!?」
     一郎からすると思いもよらない言葉だった。
    「……とにかく、揉むな!」
     左馬刻の手は一郎の地肌の尻を揉み続けている。
     一郎は左馬刻の体を押すけれど左馬刻の力は強い。
     そこに扉の開く音がした。
     左馬刻と一郎はここがどこであったかを思い出して、開いた扉を見た。
     入ってきた長身のその人物は寂雷だった。
    「何をしてるのかな、二人とも」
     左馬刻はぱっと手を離した。
     一郎は左馬刻の体が離れると逃げるようにシャワールームに入った。
    「おい、コラ。一郎。逃げんな。話は終わってねぇぞ!」
     シャワールームの扉が閉まる。
    「左馬刻くん」
     寂雷が静かに左馬刻の名前を呼ぶ。
    「一郎くんは十代である事を忘れないように」
    「……違うんだよ、先生」
    「二人の事に口をはさむつもりはないよ」
     寂雷にそう言われてしまうと左馬刻はそれ以上何も言えない。
     左馬刻がメイクルームを後にするまで一郎はシャワールームから出て来なかった。

     その日の撮影もまた左馬刻の眼光は一段と鋭いものになった。パンツ姿の一郎が頭にチラつくとどうしても人相が悪くなった。

     一郎が様々なタイプの下着を穿くようになった理由を左馬刻が理解するのはまだまだ先の事になる。
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