愛おしい人これは、ある娘と仙人のお話。
璃月港から望舒旅館にて。
「ねぇ、魈様。
もし私がいなくなったら、探し出してまた愛してくれますか…?」
突然🌸に問いかけられて一瞬思考が停止してしまった魈。
「…っ!急に何を申し出すのだ!!お前は!!我を置いていこうとするのか!?居なくなろうとするのか……!?」
突然の事で取り乱す魈。
「た、たまたまです!!…っ。私は魈様のお傍から離れるつもりは、一切ございません!で、ですか!!どうか落ち着いてくださいませ!!」
「だったら、馬鹿なことは聞かないでくれ……。我を1人にしないでくれ。頼むから……」
🌸の肩を掴みながら切な想いを伝える魈。
「……ええ。もちろんですよ。私にとっても魈様はとてもとても大切な愛おしい人なのですから…!」
「ならば、なぜそのような事を我に、我に問いかけたのだ」
ようやく落ち着いた魈。
「ふと、気になってしまったのです。もし、私に何かあれば、いなくなってしまったら、また愛してくださるのか……探し出してくださるのか……と気になってしまったのです」
「そうか……」
「ですが、ふふっ…魈様はいかなる事があっても私を愛してくださるのだと確信がもてましたからとても安心しました。」
「……ふん。なら、もう二度とあのようなことを聞くな。とても心臓に悪いのだからな…!」
「ええ。もう聞きませんよ…魈様っ!」
「もう時間か。璃月港まで送る。」
「もうそんな時間なのですね…時間が経つのは早いです……。もう少しだけ一緒に居たいです……魈様。」
「ダメだ。これからの夜は魔物が増える。危険だ。
それに、また明日会えるだろう?」
「…っ。そうですね。またお話しましょうニコッ」
「…?なぜ苦しそうな顔を……」
魈は、不思議に思った。なぜ苦しそうな顔をするのかと……しかし、それはまた明日聞けばいいと思い聞かなかった。
「?魈様、何か言いましたか?」
「いや、何でもない。行くぞ。」
「はい。」
その日の夜。🌸の自室にて。
「こんな形で手紙を残し、この世からいなくなることをお許しください。魈様……!」
泣きながらも愛おしい人を想い浮かべながらなんとか力を振り絞って手紙を書く🌸
次の日
望舒旅館に岩王帝君事モラクス、改め、鍾離がやってきた。
「オーナーか?すまないが魈に言伝をたのめるか?」
「ええ、構いませんわよ。お伝えしておきます。」
「助かる。では。俺はこれで失礼する。」
望舒旅館から離れ、人里の気配が少ない場所で待つこと数分後。
オーナーから言伝を聞いたであろう魈がやってきた。
シュッ「帝君!!い、いえ!鍾、鍾離様!!こ、こちらにはどのような様でいらっしゃったのでしょうか!?
我を呼んでくだされば、すぐ駆けつけましたのに…!!」
「魈……。お前に伝えなければならないことがあって来たんだ。」
「わ、我にですか……?」
魈はドギマギしながらも内心とても慌てている。
「ああ。お前と意中の仲であった娘の事だ。」
「……!?あやつに!!あやつに!!何か会ったのですか!?!あやつは無事なのですか!?あやつは……!」
まさか鍾離様の口から出てくることになるとは思わず取り乱してしまう魈。
その魈を落ち着かせながら話を続ける鍾離。
「魈。落ち着け。そんな慌ててたら伝えれるものも伝えられない…。」
いや、この事実をお前に伝えればきっとお前は……取り乱すのだろうな。
「す、すいません。ス-ハ-。落ち着きました。
して、あやつの身に何か会ったのですか??」
「娘は、今朝亡くなったのだ。」
「は?い、今なんと……い、いくらなんでも鍾離様でも言っても悪いことが……あ、あるじゃないですか……??」
困惑しながらも喉が震えながらも何とか、絞り出しながら声を発した魈。
「すまない……。魈。事実なんだ。
お前宛ての手紙だ。」
「う、受け取ります……鍾離様……」
手紙を受け取りその内容を確認する魈。
この手紙を受け取ったということは、私はもうこの世に存在してないのでしょう……。
ごめんなさい。魈様。嘘をついてしまって……。もう私の体は持ちません。
あの時、私がいなくなったら、と問いかけましたよね。
あの頃には既に、私がこの世から亡くなることがわかっていたのです……
だから、あの様な形で貴方が、私のことを本当の意味でどう思ってるのか、確認したかったのです。
だって、私はこんなにも一緒に居たくて、愛していたからです。
私は、必ず生まれ変わってあなたを探します。
だから、しょう様も私のことを探してくださることをねがってます……
いつの日かまた、魈様と愛し合える日を望みたいのです……
貴方に本当のことを告げずにいなくなることをお許しください…魈様。
ドサッ「な、ぜ。何故!!我に本当の事を言わなかったのだ……!!🌸!!何故だ!!なぜ我を1人に……🌸……🌸……あ"ぁ"……な、ぜ……うっぐっ……ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙」
力尽き絶望した中で泣き叫び声を荒らげる魈。
「……。」
そんな中魈が落ち着くのを見守る鍾離。
それから数時間後。
「……落ち着いたか、魈。」
「……はい。」
「そうか。なら、その手に持ってる槍をしまえ。
自害しようとするな。」
「止めないでください。例え、鍾離様に言われても、もう我には希望がございません!!」
深い溜息をつきながら話し出す鍾離
「あの娘は、必ずお前の前に現れる。」
「何をおっしゃっ……て……。」
「あんな事があり、取り乱すのもわかる。そして、理解ができないのもわかる。
だが、手紙にも書いてあるだろう?必ずお前の元に、と。
それが、答えだ。
これは、おそらくだが、もう既に何処かに転生又は、生まれ変わってるだろうな。」
「そ、れは、まさか、、」
「あぁ、あの娘は体が少し弱かったのが幸いだったのがこうやってまたお前の傍に、来ることが出来るのだ。おそらく次は、神の目を所持するだろうな。
お前も事が落ち着いたら探しにゆくと言い。
では、俺は行くぞ。魈」
ズルズルと力が抜け木にもたれ掛かる魈。
「あぁ……我が一人でいるのは少しの間だけで済むのか……。良かった……良かった……。まだ、あやつに言えてないことが沢山あったんだ……。また、あやつと共に過ごせる日々がやってくるのか……。」
魈は安心して少し木にもたれながら目を閉じた。
「……ん。ここは……。あぁ、あれからまたあやつに、🌸に会えると思ってしまったら安心して、眠ってしまったのか……。
ははっ……我ながら情けないな…。」
木にもたれながら手をぎゅっと拳を作るかのように握る。
「必ず、例え、何年かかっても🌸を見つけ出す。
もう次は、一人では逝かせない…!!」
魈は声に出しながら己にそう誓った。
こうして、魈は、時間があればくまなく璃月で🌸に会えることを信じて探すのであった。
〜それから〇年後の出来事〜
「やはりまだ見つからぬか…!」
「だが、我は諦めない」
その頃璃月港では…。
「あ、鍾離先生…」
「ふっ。🌸久しぶりだな。」
「…っ!覚えてくださっていたんですね。」
「あぁ。あやつが最後まで好いてる人だからな。
ここに来たということは…」
「はい。魈様にやっと会いに行けるようになったからです」
ニコッと微笑みながら鍾離先生と魈様のことで盛り上がる🌸。
「あれー!?!🌸さんじゃないのー!?
私だよー!!私!!私のこと覚えてるかなぁ??」
「はぁ…」
と鍾離は思わず頭を抱えながらため息をついた。
「もちろん。覚えてますよ!胡桃さん!」
「おやおやー?私のことは胡桃と呼び捨てで良いって言ったではないですかー!
いつになったら呼び捨てで呼んでくださるんですー?」
「あはは…。
胡桃さんは胡桃さんですから…。それで許してくれませんか??」
「もう!仕方ないですねー!
🌸さんの可愛い顔に免じて許してあげよう!!」
「で、胡堂主。ここには一体なんのようできたのだ?」
「あっ!いっけない、いっけない!鍾離先生に用事があったんですよ〜!
という事で、仲良く話してる所申し訳ないけど連れてっていいかいー?」
「ふふっ。そういうことでしたら大丈夫ですよ。
むしろ久々に会えて胡桃さんともお話出来ましたから嬉しかったです!
また、お時間合う時お話しましょう?」
と🌸は微笑みながら鍾離と胡桃に言った。
「助かるねー!もちろんだとも!」
「ああ。また時間ある時にお茶を共にしよう。」
と鍾離と胡桃は言い、🌸とわかれ、去っていった。
さてと、流石に転生して記憶を持っていて尚且つ神の目を所持してるとは言えこの時間から望舒旅館に向かうのは時間かかるからさすがに明日にした方が良さそうかな?
と🌸は声に出さずに頭の中で考えながら宿泊先に戻るのであった。
次の日
「んん〜!よく寝たぁ…。
やっぱり健康体が1番だね!
さて、今日こそは魈様に会うために望舒旅館に向かわないと!
って覚えてくれてるかな…」
朝起きて朝食をとる前に身だしなみを整えながら不安を吐露する🌸。
無理もない。何故なら、🌸自身は転生前に魈に告げずこの世を去っているのだから。
手紙を残したと言えどあれから随分月日が、年月が経ってしまっているのだ。
それ故に不安になるのも当たり前のこと。
「はぁ…やめやめ!!
こんなネガティブな事は魈様が居ないところでは、言わないって決めたんだから!」
そう言ってため息つくのをやめ、自身に自問自答する🌸であった。
「んー。朝食はー…万民堂で取ってから望舒旅館に向かう事にしよう。
そうと決まれば行動に出さなきゃね!
やっと今日魈様に会える…へへ」
🌸は万民堂に向かうため宿泊施設から幸せそうな表情で出ていったのであった。
おそらくここに魈が居れば
「なっ!そんな表情で外を歩くな!もし誰かに誘拐でもされたらどうする!?」
と言って🌸が出ていくのを頑固拒否と言わんばかりに引き止めるであろう。
万民堂に着いた🌸を出迎えたのは…
「あっ!🌸ちゃーん!おはようー!」
「おや?🌸さん。おはようございます。」
「お、おはようございます。🌸さん」
三者三様で香菱、行秋、重雲が🌸に向かって挨拶を交わした。
「香菱ちゃん、行秋くん、重雲くん、おはよう
朝から3人揃ってるなんて珍しいね?」
「あぁ。実は軽策荘の方まで僕が出向くことになってね。重雲にも付き添いを頼んだんだ。
ただ、行く前に朝食を万民堂で取ってから行こうって話になってね。」
「本当に行秋から急に呼び出されたからびっくりしたよ。」
「あはは。ごめんごめん。でも、手伝ってもらうんだから必ず報酬は支払うよ。重雲」
「それで2人が珍しく朝から万民堂にいるって訳!ね!グオパー!」
香菱に問いかけられて頷くグオパー。
「そういう事だったんだね。
なら、そこに私も混ぜてもらっても?」
「あぁ、もちろんさ!」
「もちろんです!」
「喜んでだよー!🌸ちゃん!」
「ふふ。ありがとう。」
「そ、その🌸さんってつかぬ事を聞いても構わないだろうか。」
ふと行秋に問いかけられた🌸。
「ん?どうしたの?行秋くん」
「あの無事降魔大聖と再会できたのでしょうか?」
「あー…はは…。実は今日望舒旅館の方に行こうと思ってるの。」
どこか悲しそうな寂しそうな表情を見せる🌸。
そんな🌸を見てすぐに重雲が小声で行秋に向かって突きながら言い放った。
「バッ馬鹿!行秋!
デリカシーって言葉を知らないのか!?」
と行秋も重雲に言われて🌸の顔の表情を見て自ずと小声で重雲に言った。
「ぅぐっ…す、すまない!どうしても気になってしまって…
ただ、こんな表情されるとは知らなかったんだ!!」
「普通わかるだろう!?」
と通常の声の大きさに戻して
「🌸さん!!この馬鹿行秋がデリカシーのないこと言ってすみません!!
ほら、行秋も謝れって!」
「す、すまない!!僕としたことがデリカシーのないことを聞いてしまい本当に申し訳ない!」
🌸に謝る重雲と行秋であった。
「え?!いいよ!謝らなくて!!私そんなに顔に出てたの!?」
🌸は、急に謝られてびっくりして思わず重雲と行秋に問いかける。
「う、正直に言うと顔に出てました。」
「は、はい。言ってから気づいたのですが、顔を見たらどこか悲しそうで寂しそうな顔をしておりました…。」
「ひぇ〜〜〜〜!!!ほんっっっとうにごめんね!?
そんなつもり無かったの!!だから気にしないで??ね??」
「で、でも、」
「し、しかし…」
「ほら!そ、それに!これから朝食食べるのにこんなしんみりした空気でご飯食べるのは嫌だから。そうでしょ?!?」
「ごもっともです」
「それに関しては全く同意見です」
「なら、みんなお互い様ってことで!」
重雲と行秋は顔を見合せて
「「🌸さんがそういうのであれば」」
「うん!じゃあ、この話はこれでおしまい!!」
と🌸、重雲、行秋の3人で会話にキリが着いたタイミングで香菱の声が聞こえた。
「皆ー!もうすぐで朝食できるよー!」