カタチのない花束を君に「ジェイドの記憶がない?」
アズールからその話を聞いたのは、誕生日の一週間前だった。恨みを買っている生徒からのユニーク魔法を避け損ねた結果、ジェイドが記憶を全て失ってしまったのだと聞いたときには、フロイドはにわかには信じられなかった。今のジェイドは自分が何者であるかも、周りにいる人間との関係性も、なにひとつとして覚えていないのだという。アズールから呼び出されて保健室に駆けつけたフロイドは目の前にいるジェイドに視線を向ける。ベッドの上で起き上がっている彼は、一見いつもとなにも変わりがないように見えた。しかし、彼と目を合わせた瞬間に、自分の知っているジェイドとの決定的な違いをまざまざと思い知ることになった。一対の、不審の色を隠そうともしない瞳がこちらに向けられている。瞳の奥底に漂う鋭い警戒心は、いつものジェイドの視線にはないものだった。生まれる前から一緒である自分達には、初めましての瞬間なんて存在しない。だから、自分をこんな目でみてくるジェイドなんてフロイドは知らない。初めての経験に、喉の奥がからからに錆びたようになる。少なくとも、生まれてから一度も自分には向けられたことのない類の冷たささえ感じるまなざしに、一瞬怯む。
「ジェイド……」
ごくっと唾を飲み込んで、おそるおそる兄弟の名前を呼んだ。ジェイドがどう反応するか読めなくて、まるで他人になったみたいだなと心のどこかで思った。呼ばれたジェイドはすっと視線を下げ、軽く顎を引いて頷き、動作だけで応答してきた。しばしの沈黙が落ちる。それ以上ジェイドは何も話さない。軽めの会釈のみを返されて、必要最低限のやりとりしかする気がないことが態度からありありと見てとれた。そのまま、ジェイドは無言でフロイドから視線を逸らす。
「……記憶がなくなって、不安定になっているようです。先ほどからずっとこんな調子で、ろくに会話にならないんですよ」
「まさか、言葉まで忘れちゃったとかじゃないよね?」
「いえ、それはないようです。僕がことの経緯を説明したときには、流暢に質問をしてきたり、相槌を打っていたりしましたから」
それでは、この態度はあえてとっているということになる。フロイドは、ぎゅっと眉根を寄せた。ベッドの端に腰かけて、あえて距離を詰めてみた。ジェイドの肩がぴくりと揺れる。彼の全身に力が入っているのが見ているだけでも分かった。警戒と張り詰めたような緊張が伝わってくる。
「あのさぁ。知らねーやつだって顔してるけど、オレとジェイドは双子なの。顔もそっくりでしょ」
「……ええ、そうなのでしょうね。貴方は鏡で見た僕の顔によく似ていますから」
ジェイドから返事が返ってきた。確かに言葉は流暢だ。しかし、その内容はどこかよそよそしい。
「フロイド、でいいよ。先生に言って、しばらくオレが授業にもついててあげる。部屋も一緒だから。心配しないでいいよ」
ジェイドの堅くそっけない態度を不安が原因なのだと解釈したフロイドは、なるべく彼を刺激しないような言葉を選んだ。ジェイドがちらりとこちらを見る。
「はい」
短く答えて、ジェイドは再び視線を手元に戻す。アズールが畳み掛けるように言葉を続けた。
「お前はモストロ・ラウンジという学園内にある僕の店で働いているのですが、落ち着くまではシフトにいれないようにします。フロイドと僕で、はやくお前の記憶が戻るようになんとか算段をつけますから。そんな不安そうな顔をしなくても、大丈夫ですよ。ああ、記憶のない今のお前から対価なんていただきません。もちろん、後からで構いませんよ」
しばしの無言のあと、分かりました、とジェイドは短く頷いた。フロイドとアズールは視線だけで感情を交わし合い、ジェイドに勘付かれない程度に薄いため息を吐いた。対価をとることについて素直に了承して、何も言い返してこないジェイドはどうも調子が狂う。
数日間はあっという間に過ぎた。ここのところずっとフロイドがそばについていたが、ジェイドは記憶がなくてもさほど不自由はしていないようだった。なぜなら、ジェイドは教えればなんでも、まるでもとから知っていたかのように次々と完璧にこなしていったからだ。基礎的な部分の記憶はすぐに思い出せたようだった。しかし、相変わらずジェイドとフロイドの会話が弾むことはなかった。ジェイドが心を開いてくれないことで、フロイドも少なからずダメージを受けていたが、なるべく早く記憶が戻るように雑魚のかけたユニーク魔法の解析に勤しんだ。しかし、記憶を戻す方法はなかなか見つけられなかった。正確には、理屈の上ではユニーク魔法の効果はもう切れているらしい。それなのに、なんらかの他の原因によって記憶が戻らないままになっている。その「なんらかの他の原因」に見当がつけられないまま、とうとう誕生日の前日の夜になってしまった。
午後十一時。日付が変われば二人は誕生日を迎える。部屋で寝る準備をしていたジェイドは自分のクローゼットの中に、潰れないように高いところに大切そうに置かれているギフトボックスを見つけた。記憶を失う前の自分が、フロイドのために用意していたらしい。そのプレゼントをジェイドはまじまじと見つめる。綺麗にラッピングされた包装紙には全く見覚えがない。隣のベッドにはフロイドがもう、寝るだけの状態でスタンバイしていて、心なしかソワソワとしている。ジェイドはそんなフロイドの様子に気づいていたが、あえて自分から話しかけたりはしなかった。時計が十二時になったことを知らせるのとほぼ同時にフロイドからお祝いの言葉が贈られた。
「誕生日おめでとう、ジェイド」
フロイドはにっこりと笑っている。記憶が戻らないままなので内心はとても笑える気分ではないのだが、笑顔でジェイドのことを祝いたかった。たとえ、ジェイドの記憶が戻っていなくても、直接一番に祝うのは自分でいたかった。本当は、誕生日を迎えるのと同時に記憶も戻ったりしたら、それだけで最高のプレゼントなのだけれど。フロイドは密かに密かに期待する心を押し殺して、ジェイドのベッドの端に腰を下ろして陣取った。ジェイドは贈られた祝いの言葉を受けて口を開く。
「ありがとうございます。……一応、僕は貴方へのプレゼントを用意していたようです。中身は知りません。覚えていませんので」
たとえばよくある奇跡のように、呪いの眠りから覚めるように、誕生日を迎えた瞬間に魔法が解けるなんてことは起こらなかった。誕生日を迎えても、ジェイドの記憶は戻らない。今もなお、フロイドへのジェイドの態度は堅いままだ。それでも、フロイドはジェイドの手からプレゼントを受け取って、柔らかく笑った。まさか、今のジェイドからプレゼントをもらえるなんて思っていなかったから。一週間以上前からプレゼントを用意していてくれたなんて、と久しぶりに頬が緩んでしまう。自分のことを忘れる前の、オレのことをよく知っているジェイドからのプレゼントが、身に染みて嬉しかった。
「ありがと、ジェイド。オレからもプレゼントあるんだぁ」
ジェイドのベッドから立ち上がり、ごそごそと整理されていない自分のテリトリーを探し回って、あるものを手に取る。
「じゃーん。開けてみて。オレとお揃いだよ」
お揃い、という言葉にジェイドは眉を顰めた。
「いりません」
「……え?」
フロイドの瞳がわずかに揺れる。ジェイドはふいっと顔を背ける。
「貴方と揃いのものをもらっても、今の僕は嬉しくありませんから」
ジェイドは包み紙を開きもせずに、ぐいっとフロイドから渡されたプレゼントを押し返した。
「……そう。分かった」
フロイドの小さな声が床に落ちる。
「今のジェイドは、何にも覚えてないんだもんね。思い出したら、また渡すから」
無理やり自分を納得させるように、フロイドは受け取ってもらえなかったプレゼントを大人しく自分の膝の上に置いた。自分で断った筈なのに、フロイドが自分にプレゼントを渡すことをあっさり諦めたことが、なぜかジェイドの胸にわだかまりを残した。いつもぐいぐいくる彼だから、てっきり無理矢理おしつけてくるかと思ったのに。フロイドの物分かりの良すぎる態度が気に食わなくて、ジェイドはさらに棘のある物言いをしてしまう。
「貴方はそうやって飽きもせず、僕のことを兄弟として、ジェイドとして扱うんですね。いつか、僕が何もかもを思い出すと思っているんですか」
ジェイドはフロイドの目をまっすぐに見て告げた。
「一生忘れたままでいるかもしれないのに」
悪意。純然たる悪意からの発言だった。自分が選んだ覚えのないプレゼントをフロイドが嬉しそうに受け取ることにも胸がざわついた。完全なる八つ当たり。フロイドに意地の悪いことを言って、自分の中のもやもやを晴らすためだけに紡がれた言葉は、それまでのフロイドの表情を一変させるだけの力を持っていた。それは、ジェイドが見たことのない表情だった。その顔は、頼るべきものと離別した人のように悲しげだった。水を得るあてのない砂漠に放置された旅人のように、乾いた唇がかすかに震えていた。死刑宣告をされた囚人のように、絶望を湛(たた)えた眼差しをしていた。
フロイドは他人からどう見られているか、に対しての感度が高い。だから、身内に対してさえも滅多にここまで弱った顔は見せない。泣いた顔、怒った顔、困った顔、はフロイドのコントロールの及ぶ範囲において、いくらでも柔軟にみせてくるけれど、本気で弱っているところは見せてこない。共に生活しているなかで、ジェイドにもフロイドという人物の人となりがある程度分かってきていた。ジェイドの知っているフロイドの表情のバリエーションの中にこんな顔はない。フロイドがそんな表情をすると、なんだか胸のあたりが濁り水を飲んだときのように不快な気分になった。その表情をみて、ジェイドの悪意は後悔に変わった。言わなければよかった、と思った。でも、今更撤回なんてできない。何かを言わなくては、とまだ脳内で出来上がりきっていない言葉を、なんとか形にして声に出そうとして、フロイドに遮られた。
「一生、ね。最低のお祝いの言葉、どぉもありがと」
それからフロイドは、ジェイドのことを「ウツボくん」と呼ぶようになった。ジェイドにとっては、はなはだ不本意な呼ばれ方だった。ジェイドも、フロイドのことをあえて名前で呼んでこなかったのだが、彼から名前で呼ばれることに慣れきってしまっていて、そんな呼ばれ方をすると、とても居心地が悪かった。その呼び方をやめてほしいと何度か言ってみたけれど、フロイドにはとりあってもらえなかった。
「だって、記憶がないウツボくんはジェイドとして、オレの兄弟として扱われるのがイヤなんでしょ」
そう言ってすげなく断られてしまう。そうじゃない。そういうことじゃなくて。ただ、あのときはなぜかイライラしていて、わざとあんな突き放すような言い方をしてしまっただけで。胸の中で言い訳を並び立てるけれど、そんな理由で許してくれるとも思えず、謝れないまま唇を噛む。八つ当たりで憂さを晴らすどころか、逆に状況が悪くなっていくのでジェイドは途方にくれた。フロイドは、今の自分のことをジェイドとしては扱わない。じゃあ自分は誰だ、一体何だ。貴方がジェイドと呼んでくれないのなら、貴方のジェイドでないのなら、僕は一体、なんであればいいのか。
「お前、最近一人でいることが多いですね。ジェイドと喧嘩でもしたんですか」
「うん。ウツボくんはオレのこときらいだからね」
アズールとフロイドが廊下で立ち話を交わす。二人の死角にいるジェイドは二人の会話に、ぐっと眉間に皺を寄せた。嫌いじゃない。嫌いなわけではない。ジェイドは記憶を失ってからずっと、フロイドの前に立つと自分が自分でなくなってしまうような、常にないぞわぞわとした感覚を感じていた。彼の前でだけこうなってしまう。彼だけがあまりにも特別だった。フロイドに見つめられると、フロイドのことで頭の容積が一気にいっぱいになってしまって、首の裏側に血が集まってきて、じんじんしてきて落ち着かない。心臓が痛いくらいにばくばくして、明らかな異常を感じる。自分がこうなってしまう理由が分からなくて、いっそ怖くて、ジェイドはフロイドの前では態度がおかしくなってしまう。双子の兄弟ということは、鏡をみればなるほど確かに、とすんなりと納得できたけれど、どうして自分はこんなに彼に対してだけ過剰反応をしてしまうのか分からなかった。彼とだけは、普通に接することができない。他の誰とも違う、彼だけに、どうしてか心が揺さぶられる。やっぱり、彼には名前を呼んでもらいたい。あの声でジェイドと呼んでほしい。
ジェイドは、話している二人の前に姿を現した。
「僕は、ウツボくんじゃありません」
アズールが、やや驚いたような表情でこちらをみた。フロイドは、湖面のように凪いだ表情でジェイドを見つめている。
「じゃあさ、お前はなんなわけ?」
そんなこと、こちらが聞きたい。答えようもない問いかけだ。でも、フロイドに他人みたいに扱われることに、もうこれ以上我慢できなかった。
「僕、は」
「お前はオレの知ってるジェイドじゃないし。お前もオレのこと知らないままだろ。そもそも、知ろうともしてくれないし。思い出す気もない。ずっと、オレの知らないジェイドのままでいたがってるのはそっちじゃん」
フロイドはそう言い放つと、くるっと背を向けて歩きはじめる。
「あっ……、待って、待ってください」
ジェイドが呼んでもフロイドはそのまま立ち去ってしまった。
「お前が本気で呼んでも、フロイドが振り返らないなんてことがあるんですねぇ……」
アズールは軽く首を傾げたまましみじみとそう呟いて、遠ざかる彼の背をジェイドとともに見送る。ジェイドは眉をひそめてアズールを見下ろす。
「アズール。変なところに感心しないでください」
「ああ、そうだ。そうそう、それですよ。ずっと気になっていました」
アズールが、じっとジェイドの顔を見て、人差し指を突きつける。
「なんですか急に」
「僕の名前は呼ぶのに、どうしてフロイドの名前を呼んでやらないんですか? 知らないわけではないでしょう」
言われたジェイドの顔に焦りの色が浮かぶ。
「べつに、アズールには関係ないでしょう。単に呼ぶ必要がなかっただけです」
だって、フロイドは呼ばなくても、いつもそばにいてくれたから。視線を絡めているだけで、心臓が爆発してしまいそうなのに、フロイド、なんて名前を呼んでしまったら絶対に声が裏返ってしまうに違いないから。
「お前が名前を呼ばないのに、相手には名前を呼んでほしいなんて、無理があると思いませんか?」
痛いところを突かれて、ジェイドはぎくりとする。
「世の中はギブアンドテイク。等価交換が基本ですよ」
「……わかり、ました。それはそうですね」
「僕にとっては、きりきり働いてくれるのであれば、お前の記憶が戻ろうが戻るまいが、ジェイドはジェイドなんですがね。フロイドにとっては、どうもそうではないらしいので。『ジェイド』に昇格できるようがんばってくださいね、ウツボくん」
アズールにからかうように呼ばれても、せいぜいイヤな顔を浮かべてみせるくらいのダメージで済む。やはり、フロイドにウツボくんと呼ばれるときとは全然違う。今日こそフロイドときちんと話さなくては。
「善処します」
ジェイドはそのまま、フロイドの後を追うべく駆け出した。
***
「なに。しつこい」
フロイドに呼びかけて開口一番の返事がこれなので、ジェイドはめげそうになった。校舎内でフロイドの背中を見つけたけれど、ちっとも止まってくれなくて最終的にジェイドはフロイドを追いかけて部屋まで戻ってきてしまった。彼と同室であることに今日ほど感謝したことはない。
「あの、誕生日の日に僕が言ったことで、怒っているんですよ、ね」
「分かってるなら、放っておいて。嫌いなオレにもう構わないでよ」
「嫌っては、いません」
「名前さえ呼びたくないくせに?」
「それ、は……」
ジェイド自身も、うまく自分の感情を説明できずに言い淀む。貴方の名前さえまともに呼べなくなるほど、特別なのだと、この感情に名前がつけられないから、なんと伝えればいいか分からない。記憶を無くす前の自分は、この感情の名前を知っていたのだろうか。黙りこんだことを肯定と受け取ったらしいフロイドの機嫌が急降下した。
「記憶戻るまでオレに話しかけんな」
そう低い声で言い放つと、フロイドは壁の方を向いて寝転がってしまう。ジェイドは記憶が今すぐに戻ればいいのに、と初めて思った。記憶を失っている、と聞かされても正直全くピンとこなかった。生きていくのに必要な最低限のことは覚えていたし、生活してみても特に記憶がないことによる不自由も感じなかった。初めの頃だけは、警戒する対象が多くて気疲れしたが、究極のところ、自分以外の周りに関する情報なんてあってもなくても、ジェイドはたいして困らなかった。喧嘩をふっかけられても、やり返せるだけの強さがあったし、忘れたことはまた知っていけばいいだけのことだ。記憶を失くしたことを別段惜しいとも思わなかった。ただただ、フロイドに関することだけは自分の感情や状態が思い通りにならなくて、戸惑いを感じた。それでも、別にフロイドのことを思い出したい、とは思わなかった。今の自分がフロイドに関して抱いている感情が全てだからだ。自分が現時点で手にしていないものに執着はないし、惜しく思うことはない。
だが今は、違った。記憶が戻るまでフロイドに話しかけてはいけないのなら、いますぐにでも記憶が戻ってほしいと思った。しかし、それにしてもフロイドの言うことも理不尽と言えば理不尽である。どうやったって原因不明で記憶が戻らないことを、フロイドが一番よく知っているのに。戻るまで話してはダメだなんて。そんなこと、我慢できない。ねえ、フロイド。こっちを向いて。僕の名前を呼んで。ちゃんと、呼んで。
「フロイ、ド……」
ジェイドに久しぶりに名前を呼ばれたことで、フロイドはぴくっと肩を揺らす。しかし、彼は答えない。気まずい空白の時間が流れる。ジェイドが、痺れを切らしたように小さな声で何かつぶやいた。
「……、びしい……」
「あ? 何。話しかけんなってば」
フロイドは壁の方を向いたまま、短い答えを返す。
「だから、……い……でしょうが」
「聞こえねぇよ」
『だから! 寂しいでしょうが! 貴方が呼んでくれないと!』
ジェイドが思いのほか大きな声で、思いがけないことを言ったので、フロイドは思わず振り向いた。
「えっ」
「フロイドが、僕のことをジェイドと呼んでくれないと、寂しいって言ってるんです。記憶があるとか無いとかで差別するのはひどいです。僕だってジェイドです。貴方のことを、全部忘れてたって、今目の前にいるのはジェイド・リーチです。何も思い出せなくたって、貴方のことを怒らせていたって、僕は僕です。貴方に、名前を呼んでもらえないのが、一番堪(こた)えるんですよ。捻りのない渾名で呼ばれるたびに、イヤでイヤで仕方ありませんでした。僕をジェイドと呼んでください。僕は、ウツボくんじゃありません」
ジェイドがここまで長く一気に話すのを久しぶりに聞いた。フロイドは呆気にとられたまま、ジェイドの方を振り返る姿勢で固まっている。反応らしい反応が返ってこないので、とうとうジェイドはフロイドのベッドに乗り上げた。
「聞いてますか、フロイド!」
「え、……うん。聞いてるケド。……ジェイド、オレがウツボくんって呼ぶのイヤなの? 寂しいから?」
目を大きく見開いたフロイドは自分のベッドの上で身を起こし、ジェイドの隣に座った。
「さきほどから何度もそうだって言ってるでしょう」
「はっ、なんだよそれ。ふっ、ふふっ……。忘れられたのオレの方なのに、地団駄踏んで泣きたいのはオレの方なのに、なんでジェイドがそんな駄々っ子みてーになってんだよ」
「別に駄々は捏ねていません。正当な主張をしているだけです」
「あーはいはい。めずらしく素直で子供みてぇだね」
「これは僕なりに善処した結果なんです」
「いや、意味わかんねーんだけど」
フロイドはため息をこぼすように笑った。
「なんだ。記憶なくても、やっぱジェイドってジェイドなんだ」
隣にいるジェイドの肩にぐっともたれかかる。
「素直なのはオレの専売特許なのになぁ」
「そうなんですか? 言われてみれば、たしかにフロイドは素直かもしれません」
「はは……そういう、まったくオレのことなんて記憶にございませんってムーブ、今のジェイドからしたらマジでそういう反応しかできないんだろうけど、何度聞いてもグサッとくるし、ムカつくわ〜。
そっか。でも、寂しかったんだ。へ〜〜〜。そんなの…………そんなの、オレだって。オレだって、今年は、ひとりぼっちの誕生日で、寂しかったんだけど」
おどけたような調子で話しはじめたフロイドの声に、後半は水音が少しだけ混じりはじめる。
「ひでーやつ。ずっとオレのこと寂しがらせてたくせに、自分ばっか寂しいって、でけー声で主張しやがって」
真横に顔があるので、ジェイドからは表情が見えないが、聞こえてくるフロイドの声がずびずびと濁っている。
「……あのときは、フロイドに、酷いことを言って、すみませんでした」
ジェイドは謝りながら、もたれかかってくるフロイドを押し返すようにして、さらにぴったりと寄り添う。
「ほんとにね」
「フロイドが僕にプレゼントをくれなかったのが、なんだか面白くなくて、ついムキになってしまって……」
「はぁああ? だってジェイドがいらねーって言ったんじゃん!」
「そうなんですけど。そうは言ってもフロイドはなんだかんだプレゼントはくれるだろうと思っていたので、あっさり引き下がられてしまって、どうしようかと思ったんです。あのときは、お前はジェイドじゃないからあげないとフロイドから言われたみたいで、すごく、イヤでした」
「なにそれ? ほんとなにそれ? あ〜〜〜もう。ジェイドってめんどくせ〜〜〜〜」
「恐縮です」
「ぜってー、悪いと思ってねえだろ」
どすっとジェイドの脇腹めがけて肘鉄砲を数発打ちながら、フロイドは、あーあーもー、やってらんねー、と呆れたような声をあげた。
「たしかに、何も思い出せなくたって、オレのこと怒らせたって、ジェイドってどこまでいってもジェイドだってよくわかったわ。ジェイドがジェイドのまんまなら、別に一生これまでのこと思い出さなくたっていっかぁ」
どこか吹っ切れたように、潤んでいたフロイドのゴールドとエバーグリーンが、からっとした光を取り戻す。
「誕生日のときは、嘘をついていました。すみません。本当は僕も、フロイドとお揃いのもの、ほしいです」
「今更言われてもあげる気分じゃねーんだけど」
「そんなことを言わずに、そこをなんとか」
「んーじゃあ、ジェイドがもっかいオレのためにプレゼント選んでくれたらいいよぉ」
「……! 承知しました」
ちゃっかり二回目のプレゼントを要求してくるフロイドにジェイドは思わず苦笑いした。
「それに、オレ、まだジェイドに誕生日おめでとうって言ってもらってないんだけど」
唇を尖らせるフロイドに、ジェイドははっと目を見開く。
「そうでしたね……すみませんでした。お誕生日おめでとうございます。フロイド」
「誕生日プレゼントと一緒に言ってくれないと、やぁだ」
「ふふ。それもそうですね。貴方の気にいるものを何か探しておきます」
後日、ジェイドはきちんと祝いの言葉とともにフロイドの好みのものを見立ててきたので、フロイドは、もしダサいの選んできたら「ジェイドなら当てるよウツボくん」ってからかってやろうと思ってたのにと、嬉しそうに笑って彼を許してやり、ジェイドにも用意していたお揃いのプレゼントを渡した。バースデーのやり直しは、彼ら二人だけで部屋の中でささやかに行われた。
***
結局、記憶が戻ったのはずっと先だった。ちょうど一年後の誕生日の一週間前に突然記憶が戻ってきた瞬間、ジェイドは思わず苦笑した。今更。本当に笑ってしまうくらい今更だ。今ではもう、記憶が戻ったところで何も変わらないだろう、というほどにフロイドと積み上げてきた思い出が沢山あった。記憶が戻ったので、ジェイドには記憶を取り戻すのが遅くなった原因がなんとなく分かった。ジェイドは常々、兄弟の立ち位置ではなく、フロイドと出会っていたらどうなっていたんだろう、という思いをずっと抱いていた。兄弟だから、自分は彼を選んだのか。兄弟だから、彼も自分に応えたのか。兄弟という枠組みではない形で会っていたら、自分はどんな答えを出すのだろう。ユニーク魔法にかかったときに、知りたいと思っていた答えを知る絶好の機会を得たのが嬉しくて、おそらくそのまま無意識に記憶を閉じ込めてしまったのだ。どうも僕は、一度気になったことはどこまでも追求したくなる性分らしい。今はもう、知りたかったことが分かっている。記憶を失っている間に、自分のとった態度こそが全ての答えだ。あの態度こそ愛だった。フロイドはやはり特別な存在だという、もうすでに出ている答えに改めて答え合わせをした形だ。
ジェイドがフロイドを選ぶのに、理由はない。積み上げた思い出も二人だけのエピソードも、理屈もロジックも何もいらない。フロイドだから、フロイドがいいのだ。フロイドも、最終的には自分の記憶が戻ろうと戻るまいと、ジェイドはジェイドだと言ってくれた。しばらくは、フロイドには記憶が戻ったことを黙っていよう。滅多にない経験だから、しばらく、この立ち位置から二人の関係を眺めてみるのも悪くはない。
ブルームバースデーのイベントのための、色とりどりの花が混ざった箒は、祝われる本人以外の当番に割り当てられた生徒達が魔法やら占星術やらを駆使して作っている。その制作現場にふらりと現れた百九十一センチの影が自分にジェイドのアレンジメントをやらせろと脅してきたので、素直に生徒達はそのアレンジメントの権利を彼に譲った。そして、のちに別のタイミングでやってきた百九十センチの方からも全く同じことをされたので、生徒達はこれまた速攻で、フロイドの箒のアレンジメントをジェイドに任せたのだった。二人が互いに贈りたいものは他にもあるけれど、これは誕生日を彩るためのささやかなお遊びだ。
「差し色は白の薔薇にしよ。ローズマリーもいれとくかぁ。ジェイドがお茶にできるーって喜びそうだし」
「スターチス、ヘリクリサム……。フロイドにはカスミ草のように可憐な花も似合いそうですね」
双子はそれぞれ互いのための花を選んで箒を彩る。お互い、どんなものは出来上がるかは見てからのお楽しみということにしておいた。
誕生日当日。インタビューを終えた二人はバースデーロードに互いの選んだ花束をあしらった箒を持って並び立つ。手に持った箒をみて、陸の植物も悪くない、という感想をフロイドは抱いた。ジェイドはシックな色合いのチョイスを気に入ったようだった。
「ここを向こうまでビューンっといけばいいんでしょ? 簡単じゃあん」
「ふふふ。貴方が選んでくれた花で彩られた箒なら、いつもより高く飛べそうです」
ふわりと良い風が吹く。天気は快晴で、風もそこまで強くない。お互いの衣装の裾がばたばたとひらめいて、海の中にいるみたいだった。
「あはっ。イカの帽子に、ヒレみたいなマントだから小魚が寄ってきそう」
フロイドが楽しそうに、風にあおられて浮かびそうになる帽子を押さえた。
「そうですね。ここが海なら、あちこち泳ぎ回りたい気分です」
ジェイドが地面に置いた箒を跨いで、その上にしゃがみこみ、ほぼ地面に座り込んだような状態のまま相槌を打つ。両手はしっかりと箒の柄を握っているので彼はどうやらその姿勢から浮くつもりらしい。ジェイド、ほぼ地面に座ってんじゃん、ウケる〜と笑いながら、ヒールを履いたフロイドの足が高々と振り上げられて、勢いよく箒を跨いで腿の間に挟んだ。立った姿勢のままで握ったその柄の先は垂直に近くほぼ真上を向いている。トリッキーな飛び方をする気満々の姿勢だ。
「それじゃ、いっくよー! ジェイド!」
フロイドの浮遊するための魔法の余波が、ジェイドの前髪をふわっと浮かせた。
「ええ、フロイド。存分に皆さんに祝ってもらいましょうね」
ロケットのように真上に向かって浮かびあがるフロイドに続いて、ジェイドもゆっくりと浮上した。ふわふわと浮力が集まってきて、ジェイドの体がゆるゆると持ち上がっていく。じれったくなるような時間をかけて、ようやっと皆の腰の高さくらいまで浮かんだジェイドはのろのろとバースデーロードを進んでいく。まだ浮くと進むが同時にうまくできないので、高さは一定のままふよふよとゆっくりゆっくり、歩く位の速度で前進する。ジェイドは上背があるので、箒にまたがっていると大体集まっている生徒達と頭の位置が並んだ。
「いええええええーーい!」
聞き慣れた片割れのはしゃぐ声が頭上に近づいてはまた遠ざかっていく。急激に上昇と下降を繰り返しているらしく、フロイドの声がドップラー効果でわんわんと響き、高くなったり低くなったりしていた。どうやら生徒達の頭上スレスレを曲芸飛行のように飛んでいるようで、ぶつかりそうになった生徒達が慌てふためいて屈んだりするのを面白おかしく見物しているらしい。再びジェイドのもとにフロイドの声が近づいてくる。
「ジェーーーーイド!」
まるで落ちてくるみたいにこちらに急降下してきたフロイドは逆さまになって箒にまたがっていた。長い裾を器用にさばいて箒にしっかりと足を絡ませている。見上げた先の逆光の向こう側でフロイドが楽しそうに左手を伸ばしてきた。手を繋ぐことを求められているのかと思い、ジェイドは反射的に右手を彼の方に伸ばしたが、片手を離した瞬間にぐらぐらと飛行が不安定になった。ちょうど階段にさしかかったところで、高度を保ったまま斜めに進まねばならない難所だ。
「つかまえたぁ!」
楽しそうなきゃらきゃらとした笑い声が降ってくるのと同時に、被っている帽子の先についている房飾りをむんずとフロイドに掴まれる。そのまま帽子を持っていかれそうになって、悪戯な彼の手から帽子を守るために、ジェイドはフロイドに向かって伸ばそうとしていた右手で慌てて帽子を押さえねばならなくなった。
「ちょっと、帽子を掴まないで。フロイド! ふふ。もう、仕方ありませんね」
ジェイドは帽子をおさえてはいたけれど、遠慮なく引っ張ってくるフロイドに負けて結局帽子をフロイドにとられてしまった。
「ここまでとりに来れたら、返してあげるー!」
フロイドはジェイドの帽子を振り回して、さらに高く舞い上がった。フロイドが激しく動くので、ジェイドの選んだ箒の花束から花弁がひらひらと舞い落ちる。薄青と紫と緑の花弁や葉がちらちらとジェイドの視界を彩る。抜けるような青空に浮かぶ、ひときわ美しい青の髪色をふり仰ぎ、その眩しさにジェイドは目を細めた。フロイドのいるところまではとてもではないが、上がっていけそうにない。それでも、なんとか箒に魔力を込め直して前進を諦めて、ふわりと少しずつ少しずつ身体を浮上させた。
「フロイド、そろそろ帽子を返してください」
先ほどよりも一メートル程度は上昇しただろうか。ジェイドにはこれが限界だった。ぷるぷると箒を持つ手が震える。バランスをとりながら、なんとかフロイドのいる方に手を伸ばす。ジェイドが浮上してきたことに気がついたフロイドが帽子を持ったまま近づいてきた。てっきり帽子を手渡されるのかと思ったけれど、フロイドの手にあった帽子は彼がぱっと手を離したので自由落下した。ジェイドが、え?という顔をした次の瞬間には、フロイドはジェイドの手をぎゅっと握っていた。
「ジェイド、実は記憶戻ってるでしょ」
言われた言葉に動揺したジェイドは、がくんと箒を揺らす。フロイドもつられて下方に引っ張られて、あぶな!とはしゃいだように笑った。フロイドの勘の良さはジェイドの予想の上をいく。
「選んでくれた花束と靴見てすぐに分かった。だって、去年のジェイドだったら花も靴も、こういうのは選ばなかったから」
二人は、日付が変わるのと同時にお互いのために選んだ靴をお互いに贈りあっていた。フロイドからはフロイドが好きそうなカラフルな配色の靴をもらい、自分はフロイドが好きそうな靴を贈った。中のソールが特に彼のお気に召したようだ。
「ふふ、フロイド。貴方には全く敵いませんね」
「もー、なあんで記憶が戻ったってすぐに言わねぇの。ジェイドってそういうところあるよね」
落ちたと思った帽子は、ジェイドの箒の柄の先にちょうどよくひっかかっていた。帽子を被り直してジェイドは歯を見せて笑った。フロイドは、あ、オレの好きな顔だ、と思った。自分とは大きさの違うぎざぎざの歯が見えるときは、ジェイドが心から楽しんでいるときだ。フロイドは、この表情に昔から弱かった。ジェイドに思うところが百個以上あっても、ついついその笑顔に絆されてしまう。周囲からは恐ろしく映るようだが、フロイドには屈託のない、とてもいい笑顔に見える。
「改めて、お誕生日おめでとうございます、フロイド」
「ありがと。ジェイドも、お誕生日おめでとう」
フロイドはそろそろもっと高く飛びたくなってきてそわそわし始める。ジェイドが記憶を取り戻した件については、あとでまたアズールもまじえてゆっくり話すとして、今は高揚感のままもっと自由に飛び回りたい。そろそろとジェイドの手を掴む手から力を抜いて離そうとすると、今度はぎゅっとジェイドから力を込めて握り直された。
「去年は二回僕からプレゼントを差し上げたのですから、今年はフロイドからも、もう一回プレゼントがいただけるんですよね?」
「はあ? なんでそうなんの。去年はジェイドの自業自得でしょ」
「否定はしませんが。プレゼントはいくつもらってもいいものですから」
「それはオレもそうだけどさぁ」
「うん、と言ってくれるまで離しません」
「あはっ、そうくる? いいよぉ。オレは別にこのままもっとたかぁく飛んでもいいんだけど。ジェイドが落ちて頭でも打ったらまた記憶飛んじゃうかもねえ」
フロイドがにやりと虹彩の光を消して悪い顔で笑った。
「これは手厳しいですね。でも、記憶のない僕の扱い方をフロイドはもうよく知っているでしょ、う、おっと!」
箒ががくんっと大きく揺れて、ジェイドの瞳が驚いたようにきゅうっと小さくなった。手を繋いだままのフロイドが、ジェイドの箒の後ろに飛び乗ってきたのだ。そのまま器用にジェイドの魔法の上に自分の魔法を重ねがけする。フロイドが乗っていた箒もふよふよと大人しくそばに浮かんでいた。
「たしかに。一年、記憶のないジェイドと一緒にいたからもう慣れたっちゃ慣れたかも。それなら、ジェイドが手離してくれないし、もうこのまま飛んじゃおうっと」
「フ、フロイド?……っ!!」
フロイドはジェイドを乗せたまま縦横無尽に飛び回った。二人乗りは禁止だぞ!という先生の叱責の声が下から飛んできたが、そんなものはどこ吹く風だ。アズールが下で、降りてこい!怪我でもしたらどうする気だ!と怒鳴っているが、聞こえないふりをする。耳の横でびゅうびゅう鳴っている風が気持ちいい。くっついているジェイドの体があったかくて幸せだ。ついでにちょっと彼がぷるぷる震えているのが分かって、可愛い。フロイドは満足そうにさらに速度をあげる。二人の箒から花束二つ分の花びらがひらひらひらひらと盛大に地上に降り注いで、生徒達からわあっと歓声があがった。
「たぁのしーねージェイドォ!」
「は、い、そです、ね」
顔を青くしたまま困ったような顔で、まともに話せなくなっているジェイドが面白くて、フロイドはしばらく空中遊泳を楽しみ、最後の仕上げとばかりにバースデーロードを爆速といって差し支えない速度で駆け抜けて、地面にすたっと降り立った。ジェイドは少しよろよろしていた。結局ジェイドは(半分は恐怖のためだったが)乗っている間フロイドの手を掴んだまま離さなかったので、根負けしたフロイドはジェイドに二つ目のプレゼントをあげることになった。
「全く、本来は誕生日を祝われる一人しかこのバースデーロードを飛べないから、こんなことは起こりようがないのですが。双子というのはどこまでも厄介ですね」
迎えたアズールが肩をすくめる。当の二人には全く反省の色はない。もちろん、先生からきつく注意を受け、フロイドがやりたかった「誰にも文句を言われず好きにする」という抱負は早速つまづいたが、もはやフロイドが先ほどのインタビューで語った内容を覚えているかどうかすら疑わしい。結局のところ、好きにする、の部分が達成されれば、ほかは彼にとって些細なことである。フロイドがめちゃくちゃな飛び方をしたので、花束の中には花びらはもうほとんど残っていなかった。
「ねえ。ジェイド。次は何して遊ぼっか」
「フロイドが面白いと思うことなら、なんでも」
どんな形で出逢おうが、兄弟であろうがなかろうが、思い出を失おうが、花言葉を詰め込んだ花びらが全て散ってしまおうが、いついかなるときも、彼の手はこの手の中にあるし、この心は互いの元にある。
「カタチのない花束を君に」
+++++++
花言葉(諸説あります)
白の薔薇「あなたに夢中」ローズマリー「思い出」
スターチス「変わらぬ心」ヘリクリサム「永遠の思い出」かすみ草「無垢な愛」「幸福」「感謝」