沖安「これ何ですか?」
「あ、それですか?リップクリームです」
「へぇ〜…貴方もこういうの、使うんですねぇ…」
沖矢昴とリップクリーム。
安室はこの2つがイコールで結び付かない様子で興味ありげに眺めている。
「安室さん、使ってみては?物凄く潤いたっぷりだと評判らしいですよ」
「僕が、ですか?」
「今使ってみたらいかがです?」
「今ですか?」
「はい、安室さん唇ガサガサですよ」
「……わかります?」
「ええ、安室さんは唇がふっくらしていますからね。よく分かります。」
「でも沖矢さんが買ってきたのに…」
「実は安室さんの為に買ってきたんですよ。ほら、使ってみてください」
ふうん、と照れたように唇をとがらせながら、安室はリップを箱から出す。
その音を隣で聞きながら、買い物袋の中に残っている品物を片付ける。
取り出した品物を手に取って机の上に並べていると、リップを塗り終わったらしい安室がこっちを振り向いた。
「沖矢さん」
「?ん、っ……!?」
すぐ横で安室に呼ばれて顔を上げると、チュッと可愛い音を立ててリップでツヤツヤになった安室の唇が沖矢の唇にくっついてきた。
突然のことで沖矢は呆けていると、安室がクスクスと笑って悪戯に成功したような顔になる。
「おすそわけ」
「………安室さんの味がしますね」
「ははッ、ばぁか」
人差し指で唇を触ると、まさに潤いたっぷりの売り文句通り、ツヤツヤとしたジェルが指に付いた。
「あ、取るなよ。折角付けてあげたんですから」
「じゃあもっと付けてください」
「だぁめ。僕が貰ったんですもん。そんな安々と貸せません」
「ええ…ちょっとだけでも」
「ふふっ、気が向いたらまた付けてあげますね」
嬉しそうに笑いながら、安室がリップを大事そうに握りしめる。そんな安室のツヤツヤした唇は部屋の照明で一層綺麗に輝いていた。
それがどうしようもなく可愛くて可愛くて、沖矢は吸い込まれるみたいに、気付けば安室の顎を片手で捕えて、その唇を塞いだ。
一瞬安室が抗議をしようと口を開いたが、リップを塗りつけるように強くて甘いキスを繰り返せば、諦めたのか自分から舌を絡ませてきてくる。
結局キスが終わる頃にはジェルなのか唾液なのかわからないくらいお互いの唇は濡れていて、2人してまた笑い合った。
End.