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    こもやま

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    こもやま

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    雨上がり、庭園にて

    ##小説

    雨上がりの庭園の隅。柔らかそうな土に植わった低木が花をつけている。その前で足を止めたソロモンは首を傾げた。

    (これ何だっけ、名前。)

    以前キマリスから聞いたことがある。葉は丸く、青や紫の細かないくつもの弁からなる大輪の花。ちょうど今のように、雨を受けるときらきら輝いて、目を細めれば宝石に見えるのだと。

    「たしか…ア…?」

    必死で思い出そうとしていると、すぐ後ろでベチャッ、と、ぬかるみを踏んだ音がした。

    「テメェ、靴が汚れたじゃねえか」

    この後ベリトが何を言うかは大体予想がついている。勝手にフラフラすんな、こんなところを歩かせやがって、そんなところだ。だから先に足を止めた理由を話す。

    「ベリト、この花なんだっけ」
    「アジサイがどうかしたか」
    「そうだ!アジサイだ」

    スッキリした様子でソロモンはコクコクと頷いた。

    「そんなに珍しいもんでもねえだろ」
    「ベリトの髪の色と似てたから」
    「そうかよ。つかテメェ、勝手にフラフラすんなつったろ。俺様にこんなところ歩かせてんじゃねえ」

    結局想像通りの言葉で叱られてしまい、背中を軽く突付かれた。

    「気に入ったんなら切り花にでもしたらどうだ」
    「ああ。きれいだろうな」
    「後で執事にでもやらせろ。テメェはぺたぺた触んじゃねえぞ」
    「え、なんで?」
    「毒があんだよ」
    「そ…そうなんだ…」

    なあ、あれとか色が近いだろと振り返ると、ベリトはすでに歩きだしていた。

    「あれ?俺を探しに来たんじゃないのか」

    ソロモンはその三歩後ろを歩くのがベリトからの指定だが、今日はなんだか追いつけない。いつもより早足な理由は、ソロモンにはわからなかった。
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    幾星霜/ひとり/導く
    目の疲れを感じ、私は書類を読むのを止めた。眼鏡を外し、眉間の辺りを揉みほぐす。どうやらいつの間にか、私は険しい表情でこの捜査書類を読み続けていたようだ。これでは「また眉間のヒビが深くなった」と言われてしまう。目を休めるため、私はワーキングチェアを回転させて、窓の外の景色を見た。青い空に、一筋の飛行機雲が見える。
    「メイ……」
     私は無意識のうちに、その名を呼んでいた。
     日本に戻り幾星霜。まだアメリカにいたときの方が、キミと会えていたような気がする。ひとりで過ごす時間は嫌いではないが……。やはり、その……違うのだよ。
     キミが幼い頃から、キミを導くのが、私の役目だと思っていた。しかし今、キミは私と肩を並べ、さらには追い越そうとしている。私がこうして手を休めている間にも、キミは真実を追求するため、黙々と捜査書類を読み込んでいることだろう。私も負けてはいられない。キミに相応しい男でいるためには、常にキミに認め続けてもらわねばならない。それは、並大抵の努力では成し得ないことだ。
     私は再び机に向かった。次にキミに会えるその日まで、私も先へ進まねばならない。

       了 488