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    COMOYAMA

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    COMOYAMA

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    雨上がり、庭園にて

    ##小説

    雨上がりの庭園の隅。柔らかそうな土に植わった低木が花をつけている。その前で足を止めたソロモンは首を傾げた。

    (これ何だっけ、名前。)

    以前キマリスから聞いたことがある。葉は丸く、青や紫の細かないくつもの弁からなる大輪の花。ちょうど今のように、雨を受けるときらきら輝いて、目を細めれば宝石に見えるのだと。

    「たしか…ア…?」

    必死で思い出そうとしていると、すぐ後ろでベチャッ、と、ぬかるみを踏んだ音がした。

    「テメェ、靴が汚れたじゃねえか」

    この後ベリトが何を言うかは大体予想がついている。勝手にフラフラすんな、こんなところを歩かせやがって、そんなところだ。だから先に足を止めた理由を話す。

    「ベリト、この花なんだっけ」
    「アジサイがどうかしたか」
    「そうだ!アジサイだ」

    スッキリした様子でソロモンはコクコクと頷いた。

    「そんなに珍しいもんでもねえだろ」
    「ベリトの髪の色と似てたから」
    「そうかよ。つかテメェ、勝手にフラフラすんなつったろ。俺様にこんなところ歩かせてんじゃねえ」

    結局想像通りの言葉で叱られてしまい、背中を軽く突付かれた。

    「気に入ったんなら切り花にでもしたらどうだ」
    「ああ。きれいだろうな」
    「後で執事にでもやらせろ。テメェはぺたぺた触んじゃねえぞ」
    「え、なんで?」
    「毒があんだよ」
    「そ…そうなんだ…」

    なあ、あれとか色が近いだろと振り返ると、ベリトはすでに歩きだしていた。

    「あれ?俺を探しに来たんじゃないのか」

    ソロモンはその三歩後ろを歩くのがベリトからの指定だが、今日はなんだか追いつけない。いつもより早足な理由は、ソロモンにはわからなかった。
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