私の生まれた集落は海に向かって突き出た半島にあり、海風と山風に左右される気候がもたらす豊かな植物、それを目当てに集まる動物たちと紺碧の海に囲まれていた。半島らしい眩耀な夏と荘厳な冬に抱かれ私たちは日々の暮らしを紡いでいた。
燐音様がお生まれになったのは初夏であったように記憶する。私より二歳年下の燐音様は当時の君主(これを書いている時点では現君主でもある)の第一子長男としてお生まれになった。当時の私はまだ幼く、詳しいことは覚えていないがその誕生は集落で盛大に祝われた。私も甘いお菓子を振る舞ってもらった記憶があるがこれはその数年後生まれた燐音様の弟にあたる一彩様の誕生の時の記憶と混ざっているかもしれない。
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