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    murene_skb

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    murene_skb

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    恋ジェフで載せようと思っていたショタおにジェイフロ。
    全年齢ですが途中までなのでぽいぴく行き。

    僕の尾鰭と ジェイドが小さくなった。そう聞かされたのは、退屈な座学があと数分で終わるという頃だった。トレインの子守唄のような講義をBGMに、申し訳程度に卓上に置かれたノートにポップなウツボのキャラクターの落書きをしていた時、勢いよく開かれた扉。全員が音の鳴る方を向けば珍しく額に汗を流すツートンヘアの男――クルーウェルが焦った様子でこちらへと視線をやっていた。
     後ろを向いても誰も居ない。いつもフロイドの周りには誰も座ろうとしないのだ。という事はやはりクルーウェルの視線の先は自分だと察したフロイドは、落書きをする手を止めて首を傾げた。
    「イシダイせんせぇ、どぉしたの?」
     そんなに汗かくならその毛皮のコート、脱いじゃえばいいのに。フロイドの言葉にクルーウェルの眉間に皺が寄る。舌打ちを一度してから大きな溜息を吐いたクルーウェルは相当機嫌が悪いようだった。
    「フロイド・リーチ! 貴様の兄が緊急事態だ、着いてこい」
     そう叫ぶなりトレインに一礼をして教室を去るクルーウェル。ジェイドが緊急事態、一体どういう事だ。言葉通りの意味なのだろうが、あのジェイドが緊急事態なんて。理解が追いつかないフロイドはただ唖然と扉の方に視線を向け、薄く少女のような唇を開いた。
    「……ジェイドは兄じゃねーし」
     ぎゅ、と拳を握り立ち上がったフロイドは机を飛び越え、一目散にクルーウェルの後を追った。



    「……ジェイド、縮んだ?」
     連れていかれた先は医務室で、真っ白のベッドの上に座る小さな子供。フロイドと揃いのターコイズの髪に、ポイントで入れられた黒色。瞳だってオリーブとトパーズで、どう見たってフロイドの片割れ、ジェイドだった。しかしフロイドの記憶が正しければ、片割れはこんなに小さくない。今朝見た時はしっかりと190cmあった筈だ。
    「魔法薬の失敗だ」
     眉間を抑えたクルーウェル曰く、ジェイドのクラスは魔法薬の生成を行っていた。ペアでの課題だった為ジェイドはポムフィオーレの生徒と組んだそうだった。毒薬に秀でた寮の生徒と、あのジェイドがペアだったのにも関わらず、どうやらジェイドは調合に失敗し、爆発してしまった魔法薬を頭から被ったとか。
    「……ジェイドが失敗ねえ」
     何とも嘘くさい。心配して損したと思いながらもフロイドは目の前の小さな片割れに目をやる。対になっているその二色の宝石は普段のジェイドとまた少し違うように思えた。それが何だかジェイドじゃないようで、腹立たしい。これは自分のジェイドではないと判断したフロイドは興味を無くした様に瞳を細め、背中を向ける。
    「リーチ、何処へ行く」
    「あ? んー、かえるぅ。次ひこーじゅつなんだぁ」
     間の抜けた口調のそれにクルーウェルは止めたくなるが、授業に向かう生徒を足止めさせるのも教師として如何なものか。医務室に残された小さなジェイドとクルーウェル。仔犬は好きだが人間の仔犬は好まない。忌々しいと思いながらも、クルーウェルはその"仔犬"を持ち上げた。



    「なんでいんの」
     一日の授業も終わり、部活も休みの為営業前のモストロ・ラウンジへ向かったフロイドは小さなジェイドと再会を果たした。VIPルームのソファにちょこんと座らされたジェイドの手元には一通の手紙。そして傍には頭を抱えるアズール。
    「クルーウェル先生が連れてきたんだ、身内の面倒は身内で見ろと」
     お前たちは本当にトラブルメーカーだと大きなため息を吐くアズールを横目にフロイドはジェイドの座るソファの向いに腰をかける。
    「アズールが面倒見たげなよ」
    「どうして僕が見なきゃならないんだ、お前が何とかしてくださいよ」
     僕は忙しいんだと怒りを顕にするアズールに、フロイドは唇を尖らせる。なんでオレが、と不満に思いながらもちらりとジェイドの方を向けば、一点張りにフロイドを見つめる二つの宝石。それがどうにももどかしい。ジェイドのようで、ジェイドでないその宝石が、フロイドの心をざわつかせた。
    「おチビはさぁ、ジェイドなの?」
     何となくそう尋ねてみれば、小さなジェイドはこくりと頷いた。
    「ふぅん」
     きっと本当にジェイドなのだろう。フロイドは片割れだから、相棒がどんな姿であろうと見抜ける自信はあった。ただ、どうしてもこの目の前の小さなジェイドを、"フロイドの片割れの、17歳のジェイド"と同一視する事は出来なかった。
    「兎に角! 面倒を見るのはフロイド、あなたですからね!」
     有無を言わさずにそう言い放ったアズールは大きなため息と共にメガネのブリッジをくい、と上げ、苛立たしくVIPルームを後にした。残されたフロイドと、ジェイドのような小さな子供。
    「……稚魚の世話なんて知らないし」
     人魚や魚の稚魚ですらすぐ壊れてしまいそうでどうしたら良いのか分からないのに、人間の稚魚だなんて。それも、片割れ。――いやまだ認めない、この子供がフロイドのジェイドだなんて。
     それでもやっぱり放っておけない。陸だから、海と違って少し目を離した隙に死ぬ事はないだろうけど。何だかフロイドは、小さなジェイドを見捨てる事が出来なかった。
    「仕方ないから一緒いてあげる」
     ぶっきらぼうにそう言えば、小さなジェイドはその二色の宝石を大きく開いて、にっこりと口角を上げた。フロイドは伸ばされたその短い両手を握ってやった。
    「よろしくね、小さいジェイド」
     床に屈み、ソファに座るジェイドに視線を合わせる。絡み合ったその瞳は、やっぱりジェイドであってジェイドで無いようだった。



    「ジェイドは何したい?」
     先程から一言も発しないジェイドに、痺れを切らしたフロイドが話しかける。子供の相手というのは難しい。棒付きのキャンディを咥えながら、ジェイドが座るソファの向かいに横になったフロイドはその鋭い歯でキャンディをガリガリと齧る。
    「フロイドとあそびたいです」
    「オレと?」
     やっと聞こえた声は、いつもの落ち着いた低い声よりも幾分か高めだ。懐かしい、確か昔のジェイドはこんな声だったなと稚魚の頃を思い出した。 海の中で聞いた声と陸とでは若干違いはしたが少し懐かしく感じる。
    「陸の楽しい遊びが知りたいです」
     陸の楽しい遊び。バスケットボールにパルクール――楽しい事は山ほどあるけど、どれもジェイドとやった事は無かった。ジェイドの好きな"楽しい事"といえば山登りだったりキノコ狩りだったり、どれも退屈で楽しくないものばかりだ。フロイドは何か二人でできる楽しい遊びを次々と思い浮かべる。
    「……あ」
     一つだけ、二人で楽しめる遊びがあった。遊びなのかは不確かだが楽しめる事にはきっと変わりない。果たしてこの小さなジェイドと出来るかどうかは分からないし、そもそもフロイドだって知っているだけでやった事はない。ねれどやってみる分には楽しそうだとフロイドの胸が高鳴る。だってずっと興味があったから。
    「楽しいこと、思いついたよジェイドぉ」
     にんまりと笑ったフロイドは小さなジェイドを軽々と抱き上げて、上機嫌にその額にキスを落とす。
    「部屋行こっか」
     お部屋で出来る楽しい事だよと鼻歌混じりに言うフロイドに、ジェイドは小さくほくそ笑んだ。
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