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    suika_disuki

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    suika_disuki

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    隣の花垣くんが俺に助けを求めている。
    最近越して来たばかりのここは保証人なし、敷金なし、生保で無職歓迎な低所得者に優しい物件。現在諸事情により休職中、50歳という立場でも入れるありがたいところ。
    引っ越してまだ数週間。どこに誰が住むとか一切知らないし、知りたくもない。ただ隣が黒髪パーマの冴えない人のいい少年ってだけは知っている。
    それは、不動産屋に内見で連れてこられた初日に会ったからだ。
    遮蔽物のない赤い鉄柵、サビなのか色なのか分からない狭い通路に勝手に設置したであろうプランターのよく分からない花を世話して誰かと楽しげに電話していた。目が会いペコりと頭を下げる姿は大人しそう。悪く言えば弱気に見えてコリャラッキーと思った。
    自慢ではないが喧嘩は弱いし、こんな所に住まいを移さなくてはならない情況。自分より下を見て何が悪い。
    「うん、うん。それより海外はどう? え、普通? 俺行ったことないからなぁ。早く帰って来れると良いね。海外のお土産楽しみにしてるから! あはは、誰も入れてないよぉ? 俺信用ないかな?」
    恋人だろうか? 陰キャ臭いのに彼女持ちかよ、とその時はいっきに嫌いになった。
    案内の不動産屋が鍵を開ける。その鍵は真新しい。
    「いかがでしょうか? 最近リフォームしたんです」
    「鍵もっすか? 強盗とかそういうんじゃないんですか?」
    「そのようなトラブルはございません。以前は調子が悪く浮浪者が入っていたのですが防犯上全部屋鍵の付け替えを行っております」
    浮浪者が入っていたことを隠さないのも凄い環境だと感じた。
    「防犯カメラも増えましたし、1ヶ月前よりとても安心だと思いますよ? あ、勿論以前から事件もなく安全です。もしこちらでご納得頂けなければもう1件おすすめの場所がございます」
    もう1件と言われたのはシャッター街で外国人労働者が多いアパート郡。噂では借金を抱えた浮浪者のおっさん数人が不法移民か外国人窃盗団かにリンチされ殺されたと事件になっていた。
    そこをおすすめと言う神経が凄い。
    「そこ以外は?」
    「申し訳ございません。お客様のご予算内ですと我社で直ぐにご案内できるのはこちらの2件でしてぇ。あ、最近孤独死されたお部屋、クリーニングを最低限で宜しければさらにお安くご案内しますよ! 安く入れる事で事故物件人気ですよ? 一人暮らしも寂しくないですねぇ」
    イカレている。名前も知らない個人の不動産屋で格安を扱うとなるとこうなるのか。
    中を見てもリフォームしたというのに風呂場も汚く、フローリングは色褪せ、ヤニで汚れた壁紙。変えたのはドア鍵だけのようだった。
    「……ここでいいっす」
    「ありがとうございます! 即入居でよろしいですか? 1度お手続きに戻りましょうか!」
    嬉々としている。
    外に出るとまだ男が電話している。また頭をペコりと下げてきた。
    踏み心地の悪い鉄板の階段を下りる。
    「あのね! お隣さん来るかもだよ? これからうるさくできないから気をつけてね、えっそっそれは、さん……く……が、声……」
    のほほんとしたやつだった。うるさくするなら怒鳴り込んでやろう。まだ10代だろうしきつく言えば聞くはずだ。
    その後はトントン拍子に手続きが進み、入居の挨拶なんてしたりもしなかった。隣の部屋ガキは朝早くに出ていき夜遅くに帰り、夜に出て朝早くに帰るという静かな生活。
    騒音は日中プランターを弄りながらの電話くらい。
    ここに来て困ったのはゴミ出しだった。
    大家から説明は無いしどうするべきか悩み仕方なく外に出て行く少年を捕まえる。
    「あのぉーすんません。ちょっとききたいんすけど……」
    「おはようございます! えっと、お隣の……。どうしました?」
    「ゴミ出しなんすけど……」
    「あ、また大家さんなんも言ってないっすか? えっとですね」
    そこから親切丁寧に可燃不燃粗大を教えてくれた。
    そこから少し話すようになる。
    時折タッパに料理を沢山入れて帰ってきて、偶然会った時に余り物だがよかったら、と渡される。他人の、知らない奴が作ったものなんて気持ち悪いが食費が浮くので背に腹はかえられない。
    食べてみればどれもいい素材を使ってるのか美味かった。
    外でまた電話声が聞こえそこから1分で終わる時もあれば1時間の時もある。
    そろそろ終わる頃に外に出た。
    「ちわぁ、花垣くん今日は休み? なんの仕事しているの? 偶に家に帰ってないよね」
    「こんにちは! ハウスキーパーの仕事とレンタルビデオ店っす。もうレンタルビデオは辞めるんで殆ど行ってないんすよ。ハウスキーパーのお家に泊まったりしてます」
    だから食事を持って帰ってくるのか。
    「だから花垣くんって料理上手なんだね。ご飯美味しかったよ」
    「本当っすか?! 嬉しいっす。また何か持って帰れたら食べてください!!」
    二パッと人懐っこい笑顔を向けられ芋臭いと思っていたがそれなりに可愛い顔だと認識を改めた。
    それから数日後の日中。やたら低排気音と乱暴に止まるブレーキ、更に乱暴に閉めた事が分かるデカいドアの音。ガンガンと今まで聞いた事のない足音が響き、このアパートの空気がピリッとした。
    「クソドブ! 開けろ!!」
    お隣の花垣くんの部屋をバンバンと壊れるんじゃないかというくらい強く叩き怒鳴り散らす声。
    「居んのは分かってんだカス! とっとと開けろ!!」
    バタバタ廊下を走る音の直後ドアが開かれる音がする。
    「やっ、やめてくれません!? 近所明迷惑なんで……! お隣さん入ったんで……!!」
    「んなの知るか! オレになんの関係があるんだぁ? 言ってみろ」
    「だから、近所迷惑……」
    「うっせぇ!!」
    一体誰だろうとうっすら玄関ドアを開き薄目で見ると如何にも、な3Pスーツと信じられないピンクの頭髪が目に入る。
    どう見てもヤクザか半グレ。百歩譲ってホスト。
    「中に入れろ」
    「ちょっ、うわっ……!」
    押し込み強盗並の強引さで中に消えていく。
    もしかして、花垣くんは良くないところから借金でもしているのかもしれない。
    薄い壁に耳を当てて見るが先程の勢いとは裏腹に静かだった。
    それからどれくらいか、多分5分位すると声がする。
    「なんで……準備でき……ないんだよ!! スクラップにすんぞ!?」
    「ごめな……!! でも、急に……準備……。……頑張って……」
    取立てだ。間違いない。借金かホストのつけか知らないが、追い込みってやつだろう。あの純朴そうな花垣くんがホストに通っているなんて微かに信じられないが人間見た目とは違うことも多い。
    もし、花垣くんが困っているなら助けてあげないと……!!
    警察か、いや警察はまずい。どうするか悩んでいるとテレビの音がMAXまで上げられ騒音に中の声が聞こえなくなった。
    窓を閉めているのに薄い壁と隙間が出来た建付けで音漏れが凄い。
    それから1時間少し経ってドアが開く音が聞こえる。慌てて玄関に行きドアをうっすら開けて見るとジャケットを片手に持ちネクタイを触りながら階段を降りる後ろ姿。
    その男が微かにこちらを振り向き目が合った気がするが、殆どドアを開けていないから気の所為だろう。




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    DOODLE猗窩煉 - 追尋 (上)


    猗窩座x煉獄杏寿郎
    同人

    同陣if







      
    *正劇向猗窩煉。
    *《同陣》背景設定前提。


      
    雨下得傾盆。劈瀝啪啦地刷過林子。

      煉獄杏寿郎穿梭於這片漆黑的森林裏,躲避着鬼的追擊。


      他似乎毫不在意全身被淋得濕透,白披風緊貼在深色隊服上,勾勒出結實有致的身體輪廓。隨手甩了甩手掌上附着的雨水,防止影響出刀。


      他的雙眸迎着夜色睜得明亮,思索片刻後換了個方向邁步。

      雖徑直往前奔跑着,但他每一個感官都在留意四周的微弱變化,鬼隨時會出現。


      



      杏寿郎胸前貼着一片薄薄的紙符,它可以使人類的氣息變得淡弱,但還做不到完全在鬼眼中隱形。珠世他們仍在努力將它改良。

      符紙被雨水擊打得頹靡不堪,卻未見一絲破損,可見其材質中滲了特殊物料。

      
      伸手撥開面前樹木半垂的枝條,這邊也沒有鬼或任何其他活物活動過的痕跡。不然,這些茂密的枝葉應當會有明顯折損。杏寿郎慢慢走入樹群交錯的陰影之中,只有有心尋他者才有可能跟着找到這裏來。


      在大雨之中,他身後走過的足印轉眼被沖得模糊,驟眼與週遭尋常的泥土無異。



      雨使杏寿郎覺得冷。一點點的冷。它已經下了半小時了,即使是柱,也還是年輕溫暖的肉體,在惡劣環境下透過連其主人都不 9922