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    Jane_Na_Doe

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    Jane_Na_Doe

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    宇隆(割と宇←隆かも?/あと奈緒琴がイチャ)SS書いたよー!
    カレハさんとのリクエスト交換で、大なり小なり性的なのってことだったのでちょっと性です!

    スキンシップ(多少過剰でも許されるものとする) きっかけは宇宙こすもの彼女である琴乃ことのさんとその親友の画像だった。
    「うお、何それ」
     配信部屋のリビング、ソファでくつろいでいた宇宙のスマホの画面を見て、俺は思わず声を上げた。
     特段覗き見のつもりもなかったのだが、後ろから近づいたときに見えたのだ。
     赤い顔でバカ笑いする琴乃さんに、同じく赤い顔でふざけた顔した琴乃さんの親友が、思いっきりキスしている画像が。
    「あー……なんだろ?」
     答えあぐねた様子の宇宙の前に、俺はマグカップを置く。それから隣に座って自分の分も目の前のテーブルに置いた。一応、視線はスマホから外す。
     宇宙は少しだけ困った顔でスマホを見て、それで俺に状況を伝える。
    「あ、送信取り消しとメッセージ来た。誤爆だって」
    「誤爆にしたって……見えたんだけど、なんか、えらいの来てませんでした?」
     存外けろっとしている宇宙に対し、俺は疑問を抱えたままだ。あたたかいコーヒーを飲んで口の中は洗い流しても、ひっかかりはそのまま、なんかゴロゴロした感触がある。
     琴乃さんの親友が俺のリスナー――アルタだから、プライベートを見てしまったことにも思うところはある。そもそもあの人が琴乃さんの親友だと知ってしまったときも『事故った』と青ざめたものだったし。……でも、そこじゃない気がする。
    「わかんないけど、飲みすぎた日の反省会用だって。女の子同士ってデフォルトで同性と距離近いし、まあ大したことないだろ」
     そこまで言ってから、女の子って歳でもないか、なんて言葉も付け加えられた。
     宇宙は何やら少し文字を打ったあと、すぐにスマホを置く。
     家庭の話題自体も切り上げるつもりなのだろう。『配信者として彼女のことを秘匿する以上グループ内でも琴乃さんとのことに触れない』という以前のお約束は婚約を機に緩和されたが、あくまで緩和ではあるのだ。グループ内の、コズミック三人きりでの緩和だし。
     だから俺は流れに逆らわずにいればいいはずだった。
     だけど、
    「堂々とした浮気かと」
     何故か俺の口から余計な所感がこぼれ落ちる。
     親友って、口にキスはしないんじゃないだろうか。酔っているとはいえ。
     対して宇宙は俺の発言に突飛さを感じているような笑い方で流す。
    「浮気? ないない、そのつもりならもっと焦った反応されるよ」
     そしてマグカップを持ち上げて、何の気なさそうに続ける。
    「異性ならともかく、友達同士のスキンシップなんてそれぞれだろ」

     雲母きらら宇宙こすもという人間を俺は知っている。
     だから暗に同性だったら気にしないって言いきってみせた理由だってなんとなくわかる。
     意外とレトロめな男女観から来る、『男と絡んだわけでもない』っていう単純な判断だろう。女同士のことに口出すことない、と。
     あいつはカワイイで売れる容姿にそぐわず、俺らの中で一番、所謂男っぽい性格だし。
     じゃあ、俺はどうなのだろう。
     俺の価値観では、同性の友達と……宇宙と、どれくらいなら触れ合っていいと思えるのだろうか。
     ……むしろ、どうにかしたいのだろうか、俺は。

     そんなことばかり考えていたせいか、数日後に俺はちょっとだいぶ飲みすぎてしまう。
    「面倒見切れねぇー! ー!」
     コズミックの三人で揃っての飯だったので、主に身長が近いくゆるに肩を借りて夜道を歩いていた。
     薫との距離は近いけど、別に嫌ではない。嫌ではないだけで、くっついてたいとかそういうのはない。祝いごとで抱き抱えたりばしばし叩きあったりの接触にはその時々の『そうしたい』があるけど、それとこれとはきっと別なのだろうなと思う。
    「何ぼうっとしてんのさ」
     思索に沈む俺に、一人だけシラフ(アルコールダメだから)の薫が苛立つ。
    「すまんすまん」
     謝った方がいいかなと思いつつ、ふにゃらけた笑い混じりの声と態度しか引き出せない。
     うっすい体の薫は背もでかければ厚みもある俺をギリギリぽいっとタクシーに放り込む。
    「俺、帰るからね⁉︎」
    「おぉ〜ありがとな」
     呑気に手を振る俺を押して、宇宙が隣に乗り込んできた。
    「あとは任せて。薫も気をつけてね」
     その言葉で俺は思い出す。そういえば今日の俺が飲みすぎだってことで宇宙は家までついて来てくれることになったんだったか。
    「あははっ」
     なんだかそれが無性に嬉しくて、俺は笑う。
    「あー、だめだこれ」
     呆れている宇宙の頭が斜め下にあったので、俺は肩に腕を回して頭を撫でくり回す。寄る辺が当たり前にあることを歓ぶような、猫を抱き抱えることに成功したからそのままでいたいような、どちらにせよガキのような気持ちばかり湧いて来る。
     タクシーから降りて部屋に入るまで、俺は足取り全然大丈夫なのにそれを無視して宇宙にまとわりついたまま移動する。宇宙もわかってて、ハイハイって流して引き剥がさずに歩いていた。
     やがて部屋についてソファに下ろされた俺の前にコップの水が来て、そいつを流し込んだところで少しだけ落ち着く。
    隆文たかふみ、大丈夫?」
    「おう」
     ローテーブル挟んで真ん前に座った宇宙に言われて、幾分すっきりしてきた頭と視界に沿って頷く。
     でも今抱えているフワフワした感覚も、まだ手放したくはなかった。
    「今日このまま泊まってけよ」
    「うーん別にいいけど……場所はソファがあるとして、毛布とかあったっけ?」
     気持ちのままに言う俺に、宇宙はやや冷静だ。こいつだって結構飲んでたと思うんだが。
    「ない。いや、どっかにあったかも。あるかも。いやないか?」
     思い返してみたけど、あやふやだった。
    「おいおい」
     呆れながらも、宇宙は帰ろうとはしない。
     まあいっか、なんとかなるか。そんないつもの空気感だった。

    「重……」
     ぼそっと漏らされた宇宙の声を無視する。
     まだ春にもなりきらない陽気も鑑みて、俺たちはなんやかんやと俺のベッドで一緒に寝ることになった。
    「ベッド広いから支障ないとかじゃなかったか?」
     向こう向きだった宇宙がごそごそこっちを向いて、自分の胴に腕を乗っけたままの俺を見上げる。
    「嫌?」
    「嫌っていうか……普通に重いよ」
     だるだるの態度を保とうとする俺に、宇宙はどこまでも自然体でいる。
    「……何かあった、とか?」
     やがて掛けられた言葉に、俺は心当たりを引き出すか、少し迷う。
    「いや、お前が心配するようなことは何もない。ただしたいようにしてるだけ」
     いつもより甘ったれる俺に対して、宇宙は思うところがありそうな、でも逃げたり嫌ったりというのではないとわかる相槌を打つ。
    「そうか? ……そう」
     俺はそんな宇宙の体を抱き寄せる。男にしては縦幅が小さい体は、簡単に腕の中にすっぽり収まった。
    「わぶ」
     服に口元が埋まった宇宙が、熱い息の感触を残して顔を上げる。閉まりきってないカーテンの隙間から漏れる街灯りで、可愛さと鋭さが同居するでかいギョロ目と目が合った。
     俺は頭と同じように丸みの見受けられる頬に口を寄せて、がぶりと甘噛みする。
    「わっ、オイ隆文」
     抗議の声が掛かっても無視をしてふにふにとした感触を歯で確かめる。ついでに鼻の頭にもかぶりつく。
     そこで流石に許容を超えたのか宇宙が腕を突っ張って俺と距離を取って、鼻を拭く。頬もついでのように袖でさらった。
    「悪酔いにしたって今日やけに絡むじゃんか」
     俺は物理で距離を取られたことも踏まえて拗ねたような気持ちになって、ぼそぼそ喋る。
    「…………俺は、口にキスしたいとかじゃない」
    「は? あっ。あの写真?」
     その声で困惑させていることもよくわかって、でも俺はそのままとろりとした酩酊感に甘んじる。
    「口にキスしたいとかのあれじゃない」
     似たような主張をただ繰り返して、宇宙の背中に回した手でその体温の面積の広さをなぞる。
    「…………」
     宇宙は少し考えるように押し黙って、ふと息をつくと、俺の腕に手を添えて背伸びするように顔を上げて、俺の鼻をがぶっとやる。
    「うわっ」
     鼻の穴付近に唾液がつく不快感に俺が思わず自分の鼻を手で拭うと、宇宙はちょっとドヤったような、ホレ見たことかって書いてある顔になった。
    「鼻噛むのはナシ。気持ち悪かったろ」
     そこで一線引かれたことで、俺はそれ以外の所業を許されたと知る。
     ん、と顎を引いてから、俺はまた、今度は息苦しさを与えないように気をつけながら宇宙を抱きしめる。背中を撫で下ろして、腰のあたりを抱え込むように身を寄せる。髪に鼻を埋めて、飲食店と皮脂のにおいを肺に入れる。一般的にくさいはずのそれが、全然嫌じゃない。
     俺と宇宙の関係性では、どこまでなら許されていて、俺は、どこまでをしたいんだろう。
    「よしよしどうどう」
     宇宙も俺の胴に腕を回して、いい加減に叩き撫でる。大型犬を扱うような感覚なのだろうか。でも、それもいい。犬は何も考えずに人間と触れ合っていい生き物だ。
     俺は腕を緩めて、宇宙の額や頬に沢山キスをする。
     宇宙はされるがままでいながら、時折あやすように俺の顎や後頭部を撫でてくる。
     あ。
    「どうした? 流石に酔い覚めたか?」
     急に止まった俺に宇宙が問うが、そうじゃない。
    「いや……」
     俺はどうにか全部やめにした方がいいと理性でわかりながら、下手くそに誤魔化すだけでいる。
     若干、勃ってしまった。
     バレてくれるなさっさと鎮まれと願うほかない。
     けど、
    「あ」
     抱きしめたままだったせいか、ワンテンポ遅れて普通にバレる。
    「はずっ……。ダメね今日はもう俺」
     語順も整えないで喋る俺の頬は確実に赤い。羞恥で熱くなっている。
     それでも、宇宙を離したくなることはなかった。
     むしろ合わせる顔がなくてまた宇宙を腕の中に抱えるように抱き直す。お陰でチンコはよりしっかり当たりに行ってしまうが。
    「ん何、そんなに疲れてる?」
     宇宙の心配に俺はやっぱりちょっと嬉しくなってしまうけど、ずるずると枕に髪を擦って首を振る。
    「そんなんじゃない。ただ……」
     ただ……のあと、何て言おう。
     疲れマラは今否定したばっかだし、寝落ちしかけて事故ったとかなんとか誤魔化すのも違う気がした。かといって本当のことを言おうにも、それ自身があやふやで形にならない。
     何て言おう。
     迷う間にも、俺は宇宙の頭に顔を擦り付ける。片膝を宇宙の膝の間に割り込むように乗っけて、より体をくっつける。そうすると言葉が見つからないのも気にならなくなるから。
    「……そこまで面倒見ねーぞ。琴乃いるし」
     回した腕を退かさないままの宇宙に、それでも釘だけは刺された。俺も特に抵抗なく頷く。
    「ん。べつに。盗りたいわけじゃないですし」
     琴乃さんの名前に胸が痛むとかそういうんでもない。むしろ当然だと思うし、宇宙と琴乃さんが上手くいってて嬉しい。
     つまり、俺は宇宙を自分だけのものにしたいとかではない。ましてや、恋人になりたいわけでもない。近くに感じることで舞い上がるわけでも、ない。
     直近で向けられた恋心たちのどれとも違って、今まで付き合うなりなんなりしてきた彼女たちへの気持ちとも違って、ただ、俺は宇宙の存在を求めている。
    「…………」
    「…………」
     お互い、しばらく無言になった。
     このままウトウト眠れてしまったら、それがいいような気もする。だって、宇宙も俺の胴に回した腕をそのままにしているし、こうして延々宇宙に触っていられるのが、本当にいい感じなのだ。
     俺は腕の中に宇宙がいることに安心して、すっかり目を閉じていた。
     そんな真っ暗闇の中、宇宙が眠たげな声で言う。
    「琴乃たち、結構気軽に好き好き言い合うみたいだよ。女子ってすごいよね。現金なときの薫みたい」
    「うらやまし……」
     俺が正直な心の声を駄々漏らしにすると、宇宙はくすっと微かに空気を揺らす。
    「だなぁ」
     俺たちの関係だと、滅多なことじゃ言わない。その滅多なことも、大概シリアスになりがちだ。気軽にとはいかない。
    「あんまし言わないけど、俺だって隆文が好きだよ」
     宇宙の言葉に、胸のあたりがほくほくする。
     それにはかゆいような気持ちいいような感覚がくっついてきていて、何かしたくなった俺はまた宇宙の髪に指を差し入れてわしわし頭を撫でる。
    「俺も、宇宙が好きだ」
     口に出すと顔の表面に羞恥心が走るけど、それ以上に幸せな気分が増す。
     俺はふと、もう一人の顔を思い出す。
    「薫には俺ハブって何キショいことしてんのって言われそう」
    「ははっ。どうだろ」
     宇宙は小さく吹き出した。
     俺たちはまた無言になって、今度こそどちらも口を利かない。
     背中にとんとんと一定のリズムを刻み出した宇宙の手で、俺の意識はゆったりと沈められていく。
     宇宙は俺にとって、特別で、好きで、何かと触りたくて、甘やかしたくて甘えたくて、そばにいると安心して…………あとなんだろう?
     どれにしたって、そばにいられることが、本当に幸福だった。
     これ以上のどこまで許されても、どこまで求めても、きっと変わらないくらいに。
     だから、ずっと変わらないままで一緒にいたいと、俺は思った。
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