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    鶴田樹

    @ayanenonoca

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    鶴田樹

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    初音さんリクエスト『連携プレイ』

    「あちゃ〜!あんな高いところまで」
    「はっはー!あいつらちんまい体でよく登ったな!」

    桑名江と豊前江が見上げているのは樹齢300年を越える立派なイチョウの木。去年の秋にまばゆいほどの黄金色の絨毯を敷いたこの木は一度幹と枝ばかりの寂しい姿になっていた。それが白銀の冬を越え、春を迎えた今、新たな葉がぶわりと芽吹いている。そしてその幹と枝との間に両の手のひらに収まるほどの小さな毛玉が二つ、身を寄せ合って震えていた。

    この二匹はある大雨の日に桑名江と豊前江がまったく同じタイミングで拾ってきたはぐれ猫である。名はクボタとカワサキ。どちらもスタミナがあり、機動力が優れているというところから名がつけられた。

    クボタもカワサキも物怖じしない性格だが、子猫の2匹には自分の能力と世界との折り合い方が掴めていない。今回ばかりは楽しさに任せて高いところまで行き過ぎたらしい。完全に降り方がわからなくなって身動きが取れなくなってしまったようなのだ。

    それにしてもよくあんな高さまで登ったものだ。二匹がいる高さは桑名江と豊前江の身長を足したところより更に上。みぃみぃと助けを呼ぶ声が聞こえなければ二振りが小さな毛玉に気づくことはなかっただろう。

    「さて、レスキューにいきますか。」

    桑名江が太いイチョウの幹に手をかける。体格がしっかりとしていて重量もある桑名だが、裏の林の間伐なども行うため木登りは大得意だ。けれど、その肩に触れて豊前江が桑名江を制す。

    「もっと手っ取り早くいこうぜ!」
    「言うと思った。だけど衝撃で二匹が落ちたら危ないよ」
    「そん時ゃ桑名がなんとかしてくれっだろ」

    ニカっと笑った豊前江は完全に桑名江を信用しきっている。

    「もう、絶対に失敗できやんのに」

    そう零しながらも大好きな恋刀に絆されて、桑名江は登ろうとしていたイチョウの木から1m強ほど距離を取った。

    そして豊前江は、桑名江よりも更に木から離れていく。豊前が立ち止まった位置から桑名までは助走するのに十分な距離があった。

    「桑名!行くぜ!」
    「任せてっ!」

    豊前江の伸びやかな脚が芝生を蹴り、あっという間にトップスピードにまで加速する。その疾さをぐっと脚に溜めるとひときわ強く地面を蹴って飛び上がる。ふわりと跳ねたその先には桑名江が鷹匠のように腕を地面と平行に構えていて、豊前江は彼の腕を足がかりに更に高く遠くへと飛び上がった。

    重力なんてないかのように宙に踊る肢体。
    袖印の朱が、防具を結える紐が、翼のように翻る。

    本物の鳥のような軽やかさで空に融ける豊前の影と二匹の子猫の座標を視界に捉えながら、桑名江は木の裏側へと回り込む。

    豊前の美しい身体が描く放物線の頂点と二匹の猫の位置が重なり合う。縦に伸びるイチョウの枝々の狭い隙間を縫って豊前が二匹に手を伸ばす。小さな毛玉がやわらかく豊前の腕に匿われたのと同時に、天へと向いていた跳躍の力が重力に屈し、豊前の身体は一転、地面に向かって落下し始める。

    「桑名!頼んだ!!」
    「ええ?!自分で着地しないのお?!」

    これくらいの高さなら戦闘中に何度も経験しているはずなのに、豊前は桑名に受け止めろと言う。子猫達もいるからと、万が一に備えて落下地点付近で待機していた桑名は、豊前の影が落ちているところで大きく手を広げた。

    2匹の子猫を抱いた豊前が、ぽすん、とお姫様だっこをされる形で桑名の腕に収まる。

    「気が済んだ?」
    「最高の気分っちゃ!」

    晴れ晴れとした豊前の表情に、自然と口元が緩む。

    「いつからこんなに甘えたさんになったんだっけ?」

    健康的な豊前のおでこに、ちゅ、とひとつおまけをして、桑名はわざとお姫様抱っこのまま母屋へと歩き出した。
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    Hoopono41030595

    DONEエアSSその2。お題は「ゴムを買いに行くヘタレクワナ君」。
    ホントにヘタレですんでご注意。
    くらげ(@ao_krg)さんリクエストありがとうございました。

    #江楽宴
    僕は今、ものすごく悩んでいた。
    激安と名高い、大型のディスカウントショップ。その売り場の一角で立ち尽くしてもう30分にはなるだろうか。

    「ゴムって……こんなに種類あるん……?」

    目の前に壁のように並べられた各種コンドームに僕は圧倒されていた。

    僕が豊前と体を重ねるようになって、数か月。
    ゴムやら、ローションやらを準備してくれるのはいつも豊前だった。
    僕も、それには何の疑問もなかったんだけど……。

    「あ、今日、ゴムもローションもねーわ。」
    夜も更け。
    さてやるか、という段階になって豊前がそう言いだしたのだ。
    僕はすっかりやる気満々でいたんだけれども、その一言で豊前は「今日はナシだ。」と言い始めた。

    そんな!そんなのひどい!!
    僕は抗議の声を上げるが、豊前が否というのだから交渉は成立しない。
    それでもあきらめられない僕は……まあ、口でしてもらったわけだけれども……。

    っていうことは、豊前に用意してもらわなくてもゴムとかローションとかが常備されていれば、いいんだよね。

    そう思い立った僕は生まれて初めて、そういったたぐいのモノを買いに来て、今、そこに立ち尽くしているのだった。

    861

    野イタチ

    DONEこのタイトルで書くのn回目なんですけど、好きだから使っちゃう。
    おおこりゅのピロートークです
    三千世界の鴉を殺し主と朝寝がしてみたい明け方、大包平は目を覚ます。遠くでカラスが鳴いている。まだ部屋の中は青く、陽は昇っていないようだ。大包平の腕の中で眠る小竜を見る。彼はまだ起きそうになかった。
     夏至を抜けたいえ、昼は長く、夜は短い。二人で居ればなおのこと。起こすのも何かと大包平は思っていたが、指先が勝手に小竜の金色の髪を梳いた。ざんばらな猫っ毛は、髪を結っていないと、頬に落ちて邪魔そうだった。大包平はその髪を耳にかけてやる。その感触なのか、小竜がもそりと動いた。起こしてしまったのかと思ったら、大包平の胸の方に身体を寄せる。
    (いつもは甘えてこないのに)
    小竜の微かな仕草を見逃してしまうと、彼は本当にそっけない。だから、毎日小竜を見ていることになる。大人しくなるのは閨の中くらいか。小竜の髪を弄びながら、大包平は小竜の枕と化している、自分の腕を見る。そこには小竜が齧った痕が付いていた。日に日に小竜の噛み痕が増えていく。情事の時、小竜は尖った犬歯で、思いっきり噛んでくる。それは大包平が小竜に付けた赤い痕よりも、長く残る。数が増えるたびに、あまりまっすぐに話さない彼の、愛情のようで、大包平は嬉しかった。
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