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    秋月蓮華

    @akirenge

    物書きの何かを置きたいなと想う

    当初はR-18の練習を置いてくつもりだったが
    置いていたこともあるが今はログ置き場である
    置いてない奴があったら単に忘れているだけ

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    秋月蓮華

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    ほーさいがにゃおきが作ったオハウを食べる話
    ウルタールシリーズ番外みたいなものではわとぽさまもいます

    しるものをたべる【】

    尾崎放哉はふらりと自室から外に出た。
    ずっと引きこもっていれば暮らせるものの、さすがに食事の時や浄化作業、本館の手伝いなどはやる。これでも最低限にはしてくれているらしい。
    時刻は夜、食堂に電気がついていた。

    「おっ、放哉じゃねえか」

    「文豪。新しい。来ました。一年、以上。不在」

    (誰だっけ)

    「私、ラヴクラフト。そちら、ナオキ。覚えられない。名乗る。名乗ります」

    放哉といきなり呼ばれた。尾崎と呼ばないのは尾崎紅葉が先にいるからだ。放哉は転生文豪で初めて名字が被っている文豪である。
    柔らかい茶色い髪がふわりとした文豪と対照的に黒髪の長髪をした文豪がそこにはいた。
    ラヴクラフトとナオキ……直木三十五らしい。直木の名を覚えているのは種田山頭火や自分が転生した時に必要な本を作ってくれた文豪だからだ。
    文豪の名前は覚えきれないがまず徳田秋声の名は覚えておけと言われたし、俳句関係の者たちの名は覚えている。紹介はされた。

    「きっついしな。八十四人を記憶しろってのは、大変だ」

    (何をして……?)

    「『ウルタール』終わり。夜食。ナオキ、作ります。私。食べます。ポー様、動物、相談、してます」

    「動物」

    『ウルタール』とはなんだろうとはなるが、確か種子島山頭火が屋台カフェをやっている文豪たちがいると教えてくれた。
    恐らくそれが『ウルタール』なのだろうとはなる。ポーはエドガー・アラン・ポーのことだ。さすがに山頭火も彼の名前は知っている。

    「犬を引き取らないかって相談されたんだ」

    「……犬?」

    「秋田犬。子犬。もふもふ。他、飼い主、病死。犬。引き取り。相談、されました」

    帝国図書館は猫を比較的見かける。それは文豪達を転生させた特務司書の少女が猫好きだからではあるが、犬もいるし鳥もいる。
    ラヴクラフトの言葉は聞き取りづらいのだが、解読してみると秋田犬と飼い主が死んだ犬を引き取ってくれないかと相談を受けたらしい。

    「考えているのか」

    「上に聞かないとな。川端とかはこっそり引き取ってきてるけど、お前は犬好きか」

    直木が察するがここは大きく頷いておく。

    「相談、次第」

    「俺たちはこれから夜食を取るけど、お前は」

    「食べる」

    意思表示をしておく。直木は食事を作りに行く。残されたのは放哉とラヴクラフトだ。沈黙が食堂を満たす。
    ラヴクラフトは壺を抱えている文豪で、壺からは触手が伸びていた。蛸でも飼っているのかと放哉は考えるが聞けない。
    放哉はラヴクラフトが座っているテーブルの隣にいる。

    「話は通して……お前は……ほうさい、だったな」

    待っているとポーが来た。ほうさいとよばれて逃げ出したくはなるが頷く。

    「犬。どうなりました。ポー様」

    「起きたら見に行ってほしいとは言うが……話を聞きに行くには志賀か。坂口がいいとはいう」

    「? かわばた? いぬ、すき? いかない? なぜ」

    「目で威圧してしまうから向いていないのだそうだ」

    起きたら、次の日ということだろう。まだ時計は次の日にはなっていない。名前が出たのは犬好きの文豪だろう。
    目で威圧する文豪らしい。

    (名前が覚えられない)

    まだ海外文豪の方が覚えやすい気がしないでもない。

    「貴様は変わった俳句を作るそうだな」

    「……自由律?」

    変わったとされているが、俳句は五七五に季語を入れるものとはされている。そこが基点だ。

    「俳句は日本の詩のようなもの。ボードレールが詩を開拓したようなことを貴様はやったのだな」

    「出しますか。腹」

    「出さない……!! 何でこんな寒い時に」

    さすがにそれは力いっぱい否定してしまう。寒い時だろうが暑いときだろうが、腹は出さないがラヴクラフトとしては
    ボードレールは腹らしい。

    「寒いよなー。汁ものでオハウを作ってみたぜ。味噌を入れずに塩だけで味付けして俺とポーさんと放哉のは鮭でラヴクラフトのは猪肉だ」

    白米は好きに入れろと言われたので茶碗をもって白米を入れる。
    ラヴクラフトはパンを準備していた。ポーはご飯だ。オハウとは汁物の名前らしい。直木が手際よく準備をしている。

    「鮭。魚。苦手。猪。美味しい」

    「冬の予定もそろそろ考えねばな。年末年始のことがある」

    「今年はどうすっかな……」

    (……慣れない)

    直木たちと違い、自分は転生したばかりだ。慣れているようで慣れていない。

    「行きますか。外。年末年始、長期休暇。日本国内。旅行。南極。駄目」

    「……南極? 行くやつがいるのか?」

    「行ったやつがいるんだよ。生前に」

    「引きこもりたい……」

    「それならば引きこもっていればいい。年末年始は長い休みが当たる」

    南極とラヴクラフトが呟く。戸惑うが生前に行ったものがいるらしい。どんな行動力だとなる。引きこもりたいと言えば
    ポーが肯定してくれた。

    「休み……山頭火は何処か出かけそうだけど」

    「引きこもるのも悪くはねーぞ。俺は今年どうすっか。食べようぜ」

    直木に促されて放哉は食事に手を付ける。
    オハウと言われた汁物には鮭の他にもギョウジャニンニクやジャガイモ、ニンジンや大根が入っていた。

    「いける」

    「さかな?」

    「嫌いか?」

    「食べ物。違います。この世、もの、違います」

    「……嫌いすぎるだろう」

    ラヴクラフトに対して放哉は呆れてしまう。この世のものではないというがそこまで魚が嫌いなものを放哉は見たことがない。

    「ハワードは魚介類が苦手なのだ」

    「いけてたならよかった」

    会話は苦手だが、彼等は合わせてくれている。放哉は今後のことを聴きつつも、食事をとっていた。
    転生したばかりではあるが、慣れてきた毎日の生活は、悪くはない。


    【Fin】
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