朝早く、ボードレールが適当に文豪宿舎を散歩していたら叫び声が聞こえた。
「何があっ……ハワード!!」
部屋にはこたつがあり、ラヴクラフトが入っていて叫んでいた部屋の主は困惑していた。
「寒い。冷え込み。こたつ、ありました。入りました」
「人の部屋にいきなり入るな! この部屋は……君は……二号……二号だな」
「……尾崎放哉」
ボードレールは文豪全員の名前を憶えているわけではないが、それでも見たことの或るものだ。誰だと叫ぶとさらに話題が散るため誰だと想い出すと二号が浮かんだ。二号は尾崎放哉と名乗った。何が二号だったのだろうとなるが尾崎か放哉で一号がいるのだろうとなる。二号と誰かが言っていたのだ。
「何か出たのか」
「ホーサイの部屋にハワードがいきなり居たんだ」
「――それは驚くな」
叫び声に駆け付けたのは中里介山だ。ボードレールは彼を知っている。本館当番の時に万が一何かあったら彼に振れという文豪だ。
「暖かい。こたつ。つけっぱなし」
「寝る前に電気は切っておいた方がいい」
「それは大事だが。こたつにつられて部屋に入るな」
ラヴクラフトと介山の言うことはもっともではあるが、
ボードレールはラヴクラフトを怒る。
さらに文豪たちがきて放哉が布団にもぐりそうになったりする。騒がしい朝であった。
「図書館になれない」
「過ごしていれば慣れるさ」
疲れ切った放哉にボードレールは声をかけていた。