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    yuuuhi108

    @yuuuhi108

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    yuuuhi108

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    小学生くらいのハルト視点で8桐とのじじ孫の交流が見たい。そしてそこに真桐を匂わせるという自分だけが楽しいやつ見たい。ただそれだけの話です。

    捏造しかない。ほんとに作者だけが楽しいやつです。

    #真桐
    Makiri

    じじまご/はじまり【軽く設定】
    桐は基本的に沖縄で畑仕事したり釣りしたりしながら暮らしてるけど、不定期に東京まで行って大吾の手伝いしてるという設定です。
    雑誌で栗羊羹に悪くない反応してたから小豆系好きなのかなと思って真にあずきバー食わせてます。
    かき氷系以外でイチゴ味のアイスって少ないよなぁ、まあいいか、と思いながら書いてました。

    *****

     学校が終わって我先に帰る子供たちの波に紛れて校門をくぐる。向かった先は家とは反対方向にあるモノレールの駅だ。
     改札をくぐってホームに上がるとそそくさと日陰へ駆け寄った。じりじりと肌を焼く日差しが遮られてほっと息を吐く。とはいっても暑いことに変わりはなく、おでこを流れる汗を拭って、肩にかけた水筒から中の水を一口飲んだ。
     そのままモノレールを待っていると、数名のクラスメイト達がホームに駆け込んできた。こっちは琉球街方面の乗り場だから、琉球街にあるという塾に行くところなのだろう。向こう側から目当てのモノレールが近づいてくるのが見えた。
     車両に乗り込む背中を追いかけて声をかけた。
    「あれ、ハルトじゃん」
    「こっち来てるってことは、まだ爺さん帰ってきてねぇの?」
    「うん」
    「大変だよな。爺さんの畑の水やりなんてさ」
    「毎日じゃないし、爺さん居ない時だけだから。学校終わってからもまた勉強に行かなきゃいけないお前らの方が大変そうだよ」
     確かに、とみんなで笑い合う。
    「そうだ、今週末また海行こうぜ」
    「いいね。それじゃタケシにも声かけなきゃ」
    「明日だな。忘れんなよ」
    「お前もな」
     じゃあな、と声をかけて、みんなより一足先にモノレールを降りる。通い慣れた道を歩く。そうかからない内に目的地に着いた。よくある平屋の一軒家。玄関先の表札には『桐生』の文字。家主の不在は分かっているので玄関は素通りして庭に回る。
     庭いっぱいに立派な畑が広がっていて、ランドセルを下ろして端から順番に水をやっていく。トマト、キュウリ、トウモロコシ。ナスにオクラ、そして――
     水をやる手が止まる。視線の先にはつやつやと緑に輝く身を付けたピーマンの苗が植わっている。このまま水をやらなければ、枯れてうちのごはんに出てくることもなくなるのではという考えが頭の片隅にちらついている。だが、帰ってきた爺さんがそれを見たら。
     悲しそうに肩を落とす爺さんの顔が目に浮かぶ。よくない思いを振り切って、止まった手を再開させた。
     一通り水をまき終わると次は収穫だ。二日前に水やりついでに収穫したトマトとキュウリだが、見るとまたでかくなっている。放置するとすぐに大きくなりすぎてしまうので、せっせと収穫しては袋に放り込んでいく。大きくなったピーマンも視界の隅に入っているが、あれはきっとまだ収穫するには早い、はずだ。
     ものの10分もしないうちに袋はいっぱいになり、ずしりと重たくなった。ランドセルの隣に置いて今度は別の区画へ行く。
     青々と茂る蔓をかき分けると、大きく育ったスイカが姿を現す。軽く叩くとぽんと弾むような音が返ってきた。多分、これは食べごろだ。爺さんに教えてもらった判別法。隣のスイカにも試すと、同じく食べごろの音が返ってくる。
     できたものは自由に取っていいとは言われているが、こんな大きいスイカは取ったとしても持ち帰れない。
    「爺さん早く帰ってこないかな」
    「呼んだか」
     背後から聞き覚えのある声が聞こえてきて、はじかれたように振り返った。
    「爺さん!」
     そこに立っていたのは今まさに帰ってこないかなと思っていたその人だ。
    「おかえ――り?」
     そばに駆け寄ろうとした足が止まる。爺さんの後ろには、なんだか得体の知れない人が立っていた。
     ハーフパンツにビーサンを履いて、アロハシャツを着た服装だけ見れば、まあ観光客にも見えなくはない。でも両手に黒い手袋と片目に眼帯を付けてるのはファッションにしても普通じゃなかった。
    「遥ちゃんの息子やなぁ、面影あるわ」
    「えっと、あの?」
     聞きなれない響きの言葉遣い。テレビの中でしかみたことがないけど、これが関西弁ってやつなのだろう。
    「そういや初対面やったか。はじめまして、俺は真島いうねん。そこの桐生ちゃんとは古い付き合いでなぁ」
    (きりゅうちゃん?)
     聞きなれない名前に少し首をかしげて、爺さんの名前だったことに気付く。母さんはおじさんとしか呼ばないし、俺たちは爺さんとしか呼ばないから名前を意識したことがなかったのだ。
    「時に桐生ちゃんの大親友で、時に宿命のライバルで、時に頼れる兄貴分や。これからちょいちょいこっちに来る予定やねん。せやから、おっちゃんとも仲ようしてしてくれると嬉しいわ。今日は桐生ちゃんからスイカでっかくなった聞いてなぁ、こら食わなあかんと思って東京からこうして一緒についてきたんや。やっぱ夏はスイカよな。ハルト坊はスイカ好きか?」
     絶え間なく浴びせられる慣れない関西弁が右の耳から左の耳へ通り抜けて、頷くことすらできずに固まってしまった。
    「兄さん、少し止まれ。たぶんハルトがついてこれてない」
    「兄さん?」
     兄さんと呼ばれた男と爺さんとを見比べる。
    「似てないね」
    「ホンマの兄弟ちゃうからな」
     兄弟じゃないけど兄さんと呼ぶ。なるほど、俺にとっての太一兄ちゃんたちみたいな感じなのだろう。意外とよくあることなのかもしれない。
     爺さんが家に友達を連れてくるなんて初めてで驚いたけれど、そんなことより大事なことがある。
    「爺さん。スイカいい感じだったよ」
    「そうか、じゃあ後でアサガオにもってくから、母さんに言っておいてくれ。水やりは終わったのか」
    「うん、取れるやつも一通り取ったよ」
    「助かる。ありがとな。お、こいつもちょうどいいから持ってけ」
    「ああ、うん……」
     止める間もなくキュウリとトマトが入った袋に爺さんがピーマンを追加していく。ありがと、と力ない声でお礼を言った。
     手伝いの駄賃代わりにアイスをもらえることになって、三人で家に入っていく。爺さんの友達が真っ先に冷凍庫へ近づいていき、我が物顔で中を漁っていた。
    「ハルト坊は何食うんや」
    「イチゴ!」
     ほれ、と手渡された棒アイスは淡い赤色をしている。アイスといったらやっぱりこれが一番好きだ。
    「桐生ちゃんはこれやろ」
     爺さんは俺のと同じ赤いアイスを渡されていた。あれ、と首をひねった。
    「爺さん。イチゴ嫌いじゃなかったの?」
    「なんでなん?」
     爺さんの友達は、自分の分のアイスを取り出しながら首をかしげている。
    「だってそのアイス、いつもイチゴ味ばっかり残ってたから。俺は好きだから残っててラッキーって思ってたけど」
     話しながらも、溶けないうちに、と思ってアイスにかじりつく。
    「イチゴはお前が前に好きだと言っていたから、つい残しちまうってだけだ。イチゴ自体は好きな方だよ」
    「好きなら普通に食えば良いのに」
     自分で食べるためでもないのに、好物をわざわざ残しておくなんて信じられない。
    「じじいになるとな、好物を自分で食うよりも、うまそうに食う奴の顔見るのが嬉しくなるんだよ」
     よくわからない感覚に首をひねる。その様子を見て、爺さんは笑っていた。
    「まぁ、なんだ。お前は気にせずに好きな物食えばいいんだ」
    「ちゃんと爺さんしとるなぁ」
     そう言って笑う爺さんの友達は小豆味のアイスをかじっている。
     いつも入っている割に爺さんが食べてるところを見たことがなかったやつだ。誰が食うのかと思っていたが、爺さんの友達の好きなアイスだったらしい。イチゴのこれといい、小豆のあれといい。爺さん家の冷凍庫に入っているアイスは誰かの好物ばっかりみたいだ。
     そんなことを思いながら、イチゴのアイスを一口かじった。



     玄関を開けてただいま、と声をかけると、キッチンの方からおかえり、という母さんの声が聞こえてきた。他のみんなの声は聞こえてこない。どうやら外に遊びに行っているみたいだ。
     野菜を置くためにキッチンに行くと出汁のいい匂いがして、腹の虫がぐう、と鳴いた。
    「母さん。これ野菜。あと、爺さん帰ってきたよ」
    「いつもありがとね。元気そうだった?」
     返事をしながらも母さんの夕飯の支度をする手は止まらない。その背中を見ながら冷蔵庫から麦茶を出した。
    「うん、いつも通り。でも、なんか変な人も一緒だった」
    「変な人?」
    「眼帯付けてて……暑いのに手袋してて……えーと、たしか」
     最初に名乗られたきりの名前が思い出せない。爺さんも呼ぶときは『兄さん』としか呼んでなかったし。
    「真島さん」
     驚いた声を出してこっちを振り向いた。
    「そう、それ」
    「へー、珍しい。仕事忙しそうにしてるって、おじさん言ってたのに」
    「ふーん」
     止めていた手が再開されて、また母さんの背中との会話が始まる。
    「真島さん、なんて言ってた?」
    「えーと、スイカ食いに来たって。あ、そうだ。スイカが食べ頃だから爺さんが後で持ってくるって言ってたよ」
    「ほんと?みんな喜ぶね。そうだ、ハルト。明日はおじさんのとこ遊びに行くのやめておこうね」
    「え、なんで」
     いない間にカスタムしたポケサーのマシンを見てもらうつもりだったのに。
    「疲れてるところに騒がしくしたら悪いでしょ」
    「大丈夫じゃないかな。爺さんいつも元気だし」
     諦めきれなくてちょっとだけ食い下がってみる。今度こそ爺さんのゴーレムタイガーに勝てそうなマシンが組み上がったのだ。
     それに爺さんが疲れるというのもピンと来ない。畑の手伝いをしていても、ばてて動けなくなるのはいつも自分の方だ。
    「ハルト、おじさんが大きい病気してしばらく入院してたの覚えてないの?一緒にお見舞いにも行ったのに。でも、そっか。あの時ハルトはまだ小学校入ってなかったっけ。もうそんな前になるんだね」
     そう話す母さんの声はどことなく嬉しそうだった。
     母さんと二人でどこかへ遠出したという記憶はうっすら残っているが、それが病院かどうかなんてもう覚えていない。あんな元気な爺さんが病気をしていたなんて信じられない思いだ。風邪の一つも引いたところを見たことがないのに。
    「東京でお仕事して戻ってきたばっかりだし、きっと疲れてると思うから遠慮しときなさい。それに、真島さんも一緒にいるはずだよ」
    「そっかぁ」
     真島さんはいい人そうだったけど、友達と遊んでるところを邪魔するのは悪いかもしれない。
     そういえば、と麦茶を飲みながら記憶をたどる。真島さんは、スイカ食いに来た以外にもいろんなことを言ってた気がする。
    「んーと、えーと、あ」
    『これからちょいちょいこっちに来る予定やねん』
    「ねぇねぇ、母さん。真島さんが言う”ちょいちょい”って、どれくらいだと思う?」
     爺さんと遊ぶ時間が減るのは、ちょっと、いや、だいぶ困るんだけどなぁ。



    ・おまけ

     家路につく小さい背中を二人で見送った、その後のことだ。
    「ピーマン、押し付けとったなぁ」
    「押し付けるとは人聞きが悪いな。元々アサガオにあげるつもりで育ててる野菜だから、渡しただけだ」
    「ひひ、そういうことにしとこか」
     真島は何か言いたげな目線をよこしてくるが、こちらには後ろめたいことなんてこれっぽっちもない。
    「しかし、自分じゃ食わへんくせになんで植えとるんや?」
    「苗を買う時には遥についてきてもらうんだ。実際料理する人に聞いた方がいいと思ってな。で、今年もまた断りきれなかったって訳だ」
     『育てるよね?』と話す遥の顔はにこにこといい笑顔だったのに、その裏に滲む迫力に頷かざるを得なかった。
    「目に浮かぶようやわ。おかーちゃんっちゅうのは、強いなぁ」
     まったくだ、と同意して頷いた。
     ここに暮らすようになってしばらく経つが、真島が訪れるのは初めてのことだ。ここ数年は本当に忙しくしていて、休む間もない、という言葉通りの生活をしていたことだし。
     物珍しげに家の中を見回している背中に声をかけた。
    「どうだ、気に入ったか?」
    「ああ。ええとこやないか」
     振り返った笑顔が楽しそうで、つられて目を細めた。
    「今すぐ、ちゅう訳にはいかんのが残念やけどな」
    「そうか。まぁ、ゆっくり待ってるさ」
    「ようやく遊びに来れるくらいには落ち着いてきたんやけどなぁ。遥ちゃんとこにも一回挨拶に行かんとあかんし」
    「そういうことなら、アサガオにスイカを持って行くのに手伝いが欲しいと思ってたところだ」
     アサガオまで運ぶのには愛車の軽トラを使うとはいえ、積み下ろしの人手はあった方がありがたい。
    「約一名就労希望や。で、駄賃は?」
    「現物支給でどうだ?」
     元々スイカを食いに来たと言っていたことだし。アサガオまでの足の提供と、スイカのお裾分けでちょうどいいだろう。
    「もう少し色つけて欲しいところやな」
    「しょうがない。とっておきのピーマンをつけてやろう」
     足りない報酬を求めて腰回りをうろつく不埒な手を叩き落として、代わりにピーマンを提案すると、不服を表すように唇を尖らせた。
    「桐生ちゃんのいけず」
    「向こうでもしただろうが。明日はスイカ持っていってやりてぇんだよ」
    「しゃあないなぁ。んじゃ、キスと添い寝で手を打ってやろう」
    「よし、交渉成立だ」
     それくらい何もなくともしてやるとも思わなくもないし、真島だってそれは分かっているだろう。
     小気味よい軽口のやり取りに浮かぶ笑顔をすり寄せて、とりあえず駄賃の一つを前払いしてやることにしたのだった。
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