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    moonrise Path

    つまりこれはメッセージ・イン・ア・ボトルなんですよ。

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    ふどふゆ十年後結婚前

    煙社降臨節暦 第五夜/ふどふゆ 十二月だってのに異常気象は週末の気温を上げてきやがって落ち着きゃしねえ。そんな中インフルエンザは流行するしナースは今日も残業で、それでも今日の鍋パは諦めてないらしく、待ってて、今から行くから、食べないで! と悲鳴が聞こえてきそうなメッセージが届いた。落ち着けよ。
     慌てるのが似合わないタイプの女だけど、最近はこんな顔も見せるようになった。で、インターホンが鳴る。オレは鍵を開けてやる。自分の荷物や紙袋をガサガサ鳴らしながら冬花はほとんど倒れ込むように玄関ドアの内側に滑り込む。
    「汗かいちゃった。大丈夫? 明王くんお腹空いてない?」
    「ぺっこぺこなんだけどな?」
    「ごめんなさい。すぐ用意するから。でもその前にシャワー使わせて」
    「謝んなくていいし準備できてるし。あと袋の中身入れればいいのか?」
    「そう。あとこれ」
     しゃれた紙袋が押しつけられる。
    「お父さんが注文してくれてたの。シュトレン」
    「つか何があったよ」
    「それが夕方になって……あ、やめるねこの話」
    「尾籠な話題で恐縮ですってやつか」
    「そういうこと!」
     冬花は脱衣所のドアを閉めてすぐ開ける。
    「バッグ! 着替え!」
    「着替えったって今日着てたやつだろ」
    「そうだけど」
    「オレのスウェット貸してやるから」
    「でもパンツはないでしょう?」
    「履いてもいいぜ」
    「明王くんの!?」
     ケラケラ笑いながらTシャツとスウェットを手渡すとブラウスのボタンを幾つか外した冬花が顔を出して「お父さんも来るのよ」と囁いた。
    「オレは道也のことも愛してるぜ?」
     夜明けを待つ空みたいな深い色の瞳が急に挑むようにオレを見て、捕まえる。オレは道也が来たらできないことをする。六秒、頭の隅で自動的にカウントする。ぷはっと小さな息が漏れて、冬花がやっと笑う。
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    moonrise Path

    DONEお誕生日のお祝いです。くわまつとは……。受け付けなかった時は「これは駄目」と一言教えてください。すみやかに消去いたします。
    誂さんの現パロくわまつの二次創作(鶴をそえて) 春の彼岸は桜の咲き初めにはまだ早い、が、童謡にもあるように季節は山からやってくる。長い石段を登る間に松井はちらほらと蕾をほころばせた桜の木を見た。それは純白と言ってもよかった。ソメイヨシノとはまた違う、この土地で育ってきた木なのだろう。そう思う。
     勤め先の関係で春秋の彼岸は物故者供養の法要が行われ、社員はそれに参加せねばならない。全員、では現場が回らなくなってしまうから、よほど春分の日の開催でない限りそれぞれ代表を一、二名出す程度だけれど今日は随分集まった。
     その中で一際目立っていたのが白髪の男だった。齢は自分よりいくらか上か、しかしそれでも若いはずだ。押しつけられた面倒ごとをひとりでこなしてきた結果今のポジションにいるのだと上司らの軽口の中に聞いたことがある。会社所有の不動産を管理しているということで、松井は自分が仕事をする周辺で彼の姿を見かけたことは一度もない。だが、この彼岸の法要では必ず、年に二回、見る。
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