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    moonrise Path

    つまりこれはメッセージ・イン・ア・ボトルなんですよ。

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    昔アンソロに寄稿したのの世界線とゆうひさんのふどふゆネタのミックス

    煙社降臨節暦 第六夜/ふどふゆ 指輪を渡す為にもう一度フェリーで海を渡った。地獄の扉という名前の港から、冬の、明るい海を越えて。
     浜は相変わらずのんびりしていて、観光客の姿もない。日が照っている間にすかさず日光浴をしようとするのは北にすむ人間らしい。年若い学生が数人、両手を広げて寝転がっている。
    「こんなに風が強いのに」
     風は砂を巻き上げて、それがパチパチ頬に当たる。喋っている間に砂を噛みそうだ。冬花は両手で口元を押さえて笑った。
    「でも、こんな日がいいの」
     指輪を差し出した明王の指を両手で包み込み、どんな口づけの瞬間よりも真摯に、そして強いまなざしで見つめ、囁く。
    「明王くん、素敵な日だと思わない?」
     ウィスパーボイスは風の中でもはっきり聞こえた。一番いい日、私たちのプロポーズにぴったりの日、と囁いた。
     日光浴の仲間に加わる。手をつないだまま横たわる。ラッコの真似なのだと冬花がネイチャー番組を見せてくれたことがあった。そんなことも時々忘れるくらい、今では手をつないで寝ることが当たり前になっている。
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    moonrise Path

    DONEお誕生日のお祝いです。くわまつとは……。受け付けなかった時は「これは駄目」と一言教えてください。すみやかに消去いたします。
    誂さんの現パロくわまつの二次創作(鶴をそえて) 春の彼岸は桜の咲き初めにはまだ早い、が、童謡にもあるように季節は山からやってくる。長い石段を登る間に松井はちらほらと蕾をほころばせた桜の木を見た。それは純白と言ってもよかった。ソメイヨシノとはまた違う、この土地で育ってきた木なのだろう。そう思う。
     勤め先の関係で春秋の彼岸は物故者供養の法要が行われ、社員はそれに参加せねばならない。全員、では現場が回らなくなってしまうから、よほど春分の日の開催でない限りそれぞれ代表を一、二名出す程度だけれど今日は随分集まった。
     その中で一際目立っていたのが白髪の男だった。齢は自分よりいくらか上か、しかしそれでも若いはずだ。押しつけられた面倒ごとをひとりでこなしてきた結果今のポジションにいるのだと上司らの軽口の中に聞いたことがある。会社所有の不動産を管理しているということで、松井は自分が仕事をする周辺で彼の姿を見かけたことは一度もない。だが、この彼岸の法要では必ず、年に二回、見る。
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