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    moonrise Path

    つまりこれはメッセージ・イン・ア・ボトルなんですよ。

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    moonrise Path

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    アドベント小説第三夜に登場する水とちいちゃい鬼のサイド。むしろ富士山へ向かう彼らの光景が先にあったのでした。

    「鬼太郎、ほら富士山だ」
     腕の中の小さな身体を揺するが、それは眠りのまにまに水木へ全てをあずけ、ぐんにゃりと柔らかいことは男の骨肉に染みついた肉体というものの脆さーー戦場、バラバラになった手足、物言わぬあの肉体ーーを思い出させ一瞬怖気が走る。口の端から垂れるよだれを袖で拭いてやると小さなてのひらがぺたぺた這い回り、水木の手を掴んでようやく落ち着いた。
    「……富士山だよ。遠くまで来たなあ」
     谷を走る列車は残照を背にした巨大な山影の下、毛虫か芋虫ほどでしかない。男はもう一度、鬼太郎、と呼んだが子どもが目を覚ます気配はなかった。
     いいさ、と男は胸の中で呟いた。お前は俺よりうんと長生きをする。その中で富士山を見る機会なんて何度でもあるだろう。この先の未来は明るいのだーー(そう約束したのだ、口約束だろうとも)と頭の中で誰かが呻くーー。それに、長い長い人生の中、流浪のさだめに従うこともあるだろう。
     ああ、俺の家はお前の家ではないのだなあ。水木は煙草を取り出すと、片手で器用にマッチを擦った。
     でも今は。
    「帰ろうな」
     水木は天井に向かって煙を吐き、腕の中の子どもに囁きかけた。
    「今夜は俺たちの家に行こうな」
     既に山影も夜空も溶け合って車窓はタールのように真っ暗だ。遠く、ちかちかと駅の明かりが灯っているが、水木の目にはまだ見えない。
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    moonrise Path

    DONEお誕生日のお祝いです。くわまつとは……。受け付けなかった時は「これは駄目」と一言教えてください。すみやかに消去いたします。
    誂さんの現パロくわまつの二次創作(鶴をそえて) 春の彼岸は桜の咲き初めにはまだ早い、が、童謡にもあるように季節は山からやってくる。長い石段を登る間に松井はちらほらと蕾をほころばせた桜の木を見た。それは純白と言ってもよかった。ソメイヨシノとはまた違う、この土地で育ってきた木なのだろう。そう思う。
     勤め先の関係で春秋の彼岸は物故者供養の法要が行われ、社員はそれに参加せねばならない。全員、では現場が回らなくなってしまうから、よほど春分の日の開催でない限りそれぞれ代表を一、二名出す程度だけれど今日は随分集まった。
     その中で一際目立っていたのが白髪の男だった。齢は自分よりいくらか上か、しかしそれでも若いはずだ。押しつけられた面倒ごとをひとりでこなしてきた結果今のポジションにいるのだと上司らの軽口の中に聞いたことがある。会社所有の不動産を管理しているということで、松井は自分が仕事をする周辺で彼の姿を見かけたことは一度もない。だが、この彼岸の法要では必ず、年に二回、見る。
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