飛び立つ黄金 夜の帳が降りた室内。ネイキッドは報告を聞いた瞬間、張り詰めた空気が軋むのを感じた。
「……なんだ、それ」
掠れた声が静かに響く。
「ノアが……さらわれた?」
兵士の報告に、ネイキッドは拳を握り締める。自分の耳を疑った。ついさっきまで、ノアはストーリアに帰ることを楽しみにしていたはずだ。あれほど心待ちにしていた故郷への帰還が、一瞬にして奪われたというのか。
「……ふざけんなよ」
堪えきれずに拳を振り下ろした。机の上にあった書類が床へと散らばり、室内に鋭い音が響く。
「ストーリアに帰れるって、あいつ……あんなに嬉しそうにしてたんだぞ……!」
思い出す。荷造りを終えた彼女が、小さく微笑みながら言った言葉。
――『エテルナでの時間も、大切な思い出。だからたまには遊びに来るね』
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