ごっこ遊びに興じるアゼエメ 仮面の縁をなぞる指先が、導かれるようにエメトセルクの唇に触れた。硬いはずの指の腹に柔らかい皮膚を押され、一人鼓動が高鳴る。心の奥底にある欲求に流されそうになったエメトセルクは、意を決して首を左右に振った。
「……やはり、こういう関係は良くないと思う」
エメトセルクの言葉に、アゼムの指が微かに震える。一瞬停止した男は、それでも暫くするといつもの調子で「何故?」と今度はエメトセルクの頬を撫でた。その指先は何よりも温かくて、何よりも優しい。
「何故――なんて、言わなくても分かるだろう……?」
「いいや、俺には分からないよ」
しらばっくれているのか、それとも本当に分からないのか、アゼムの仮面越しに男の表情を読もうとして、エメトセルクは早々に諦める。どっちだっていいのだ。そのどちらであろうが、アゼムはエメトセルクの言葉でしかその事実を受け入れるつもりがないのだろう。目の前で深々と溜息を吐いても、男は薄く笑みを浮かべたままだった。アゼムの手に自身の手を重ね、仮面越しにその青い瞳を覗き込む。
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