104Hz≒秒速5センチメートル2年の春。桜が散り始めて中道に舞い落ちた花弁を大股で避けて駆けていくあいつの背中を、俺は急ぐでもなくただ自分の速さで着いていく。
「よ、っと…、ほいっと」
あいつが靴音を立てて着地をすれば靴が着いた反動で周りに散っていた花弁も舞い、そこだけ靴跡を残すように綺麗になくなったところをなんとなく目指して歩く俺に、何故か嬉しそうに微笑みながらあいつはこちらへ振り向いた。
「桜、きれいだな〜!まぁセナのほうがきれいだけど!!」
「当ったり前でしょお」
「わははっ!うん、そうだな…赤ん坊でも分かるくらい"当たり前"のことだ。セナが桜よりきれいなのも、いつかこうして花弁を落として散ることも、全てが必然で当然だ」
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