嫁にベタ惚れなrktと春の野掛け「利吉ーお花見しようよ!」
「花見か……あぁ。勿論いいけど」
「やった! 丁度咲く頃なんじゃないかなって思って」
夕餉を囲んで取り留めもない会話をしていると、思いついたように妻が言った。普段よりやけにそわそわしている彼女に自然とこちらの口角も上がる。
「確かに、いい時期かもしれないな。そういえば先日うちの近くに五分咲きの桜があった気が。……ここ数日一気に暖かくなってきたし、運が良ければ見頃かもしれない。明日一緒に行ってみようか?」
「穴場知ってるの!? ……うん! そこに行きたいな」
普段の生活では踏み込むことの無い獣道を少し抜けた所に、開けた野原がある。鍛錬をするのによい場所はないかと家の周りを以前散策した際に見つけた場所だ。だだっ広い野原と言うよりかは、桜の木が程よく自生している。特段意識はしていなかったが、先日も鍛錬しようとそこへ赴いた時に、ちらほらと開花していたのを思い出した。かくして、丁度休暇と重なっていたこともあり、急遽お出掛けが決定したのである。
「お弁当作るでしょ、莚を忘れずに持って行く、それと……」
「全く……あまりはしゃいで寝不足になっても知らないぞ」
――食べ終わった食器をさっさと洗い終え、弁当箱というより立派な重箱とそれを包む風呂敷をどこからともなく用意したかと思えば、るんるんな様子で彼女は明日の事前準備を始めた。……2人で重箱とはこれ如何に。厨でてきぱきと支度する妻を背後から覗き込みながらそう思ったが、これは私達が祝言を挙げた後に母上からいただいた物のうちのひとつだった。「こんなのにたまには食事を詰めるのも楽しいでしょう?」なんて言われて渡された事を思い出す。確かに、こうした行事にはうってつけだ。
指折りぶつぶつと用意する物を唱えながら、「うちに今ある物の範囲になるけど、利吉はお弁当のおかず何がいい?」とこちらを振り返りにこにこして聞いてくるその姿にきゅぅうと胸が甘く詰まりそうになる。愛しい妻が私の為だけに作ってくれるのだから何だって美味しいし全部食べるに決まっている。「何でも好きだ」と答えれば、「嬉しいけど、こういう時のそれは逆に困るんだって……!」と見上げて苦笑された。あぁ、もう、言葉では表現しきれないのでぎゅうぎゅうに抱きしめてしまいたい。否、気が付いたら彼女を背後から抱きしめていた。
「わっ、利吉?! どうしたの?」
「いや、その……私も楽しみだなと。明日出掛けるのが」
「ふふ、やっぱりお花見ってわくわくするよね」
「そうだな」
自分より遥かに線の細い彼女の体は、抱きしめると言うより包み込むという表現の方がより合っているかもしれない。やや体を曲げて互いの頬がぴたりとくっつくように顔を寄せそのまま体温を感じていると、甘える様に妻も擦り寄せてきた。……どうしてこうも可愛い事ばかりするんだ……!! 愛らしさにぐっときて、辛抱堪らずぷくりとした頬へ口付けたら、「もう、利吉こそ寝不足になっちゃうよ? 明日の用意は大体できたから。……そろそろ寝る支度しよう?」と先程まで注意していた私が逆に促され、床に着いたのであった。
***
――翌日。
「おはよう利吉、支度して」
「……おはよう……」
昨晩も、いつも通り妻を愛でようとしたら「明日は朝早いからダメ」とお預けを食らってしまった。悶々と葛藤したが、あまり我儘を言ったり無理強いをしたい訳でもないので、口吸いをして彼女を抱き枕にする事で譲歩した。寝ようと思えば直ぐに寝付けるもので、結局あっという間に夢の中だった訳だが、その分朝も早く来るわけで。気が付けば妻は早々に起きて支度を進め、私はといえば諸々ひと段落した彼女に起こされた。
本日の目的地は言ってしまえば近所だ。遠出ではないが、早起きをするくらいにはいつも以上に妻は気合いが入っているようだった。
「もう準備出来たのか?」
「うんっ、張り切っちゃった」
「……」
「……な、何」
「はしゃぎ方が大人のそれとは思えないな」
「童心忘れるべからず!」
「間髪入れずに突っ込むなよ」
近所へ野掛けしに行くにしては仰々しい重箱弁当と、しっかり整えられた御髪に化粧。見事に浮き足立っている。
「利吉だって原っぱ行くの好きじゃん」
「それは昔の話で……!」
逆に浮かれる気持ちが分からないのか? と訴えかけるような声音で彼女にそう言われては返す言葉に困る。
幼少期は確かに家族で野掛けに行くことが大好きで、稀ではあったがいつも楽しみにしていたのは事実だ。
「じゃあ久しぶりという事で」
「別に悪いとは言ってないし思ってもない。私も同じだ。ただ……可愛らしいと思っただけだ」
「……」
「何を今更照れてるんだ?」
「う……ほっ、ほら!! 準備出来たでしょう!? 行こうっ……!」
妻は口を噤んで瞳をぱちくりした後、取り繕うようそう言うと私の手を引いて家を出たのであった。
***
「すごい……! ドンピシャだね!」
「見事に満開だな」
少々賭けではあったが、思った以上に咲頃を迎えていた。普段は青々とした若葉が茂る野原だが、敷物を敷いたように一面桜の花弁で覆われている。しかし地面に根を張る木々の枝はまだまだといわんばかりにびっしりと桃色である。こうして花を愛でる事など何時ぶりだろうか。思わず息を吐くほど目を見張った。
「利吉……利吉!」
「……え、あぁ、ごめん」
「ふふ、本当すごいね。この辺でお花見しよう?」
つい目の前の光景にらしくなくボーッとしてしまった。彼女から声を掛けられてハッとするとは、随分と気を抜いているなぁと我ながら思う。そんな私を目を細めてにこにこと見つめる妻に、更に気が抜けそうだ。自惚れではなく、愛おしげにこちらを見上げるその視線に春の陽気とは違った温かさが内側から溢れる気がした。
妻の言う通り、程よい日陰に莚を敷き、手にしていた風呂敷から取りだした重箱を広げる。視界いっぱいに淡い桃色が霞んで見えるこの風景に、自分達だけがこうしている事がなんだか不思議なくらいだ。そして手元にある弁当はあるもので作ったとは思えない程色合いもよく、より一層特別感を演出している。
「「……いただきます!」」
示し合わせることなくぱんっと手を合わせ、自然と重なる声に思わず互いに笑ってしまった。
「美味しい……!!」
「そう? 良かった」
「いつも美味しいけど、今日はまた違った良さがあるな」
「えへへ……ありがとう。外で食べるのって気持ちがいいよね」
「そうだな」
甘く煮詰まった人参の朱色が映える煮物や、近場だからこそしゃきっとした食感がまだ残る葉物野菜、そして箸休めの香の物。その他どれをとっても美味しい。それが妻の手作りなのだから更に嬉しい。敢えて朝餉の量を減らしたのもあるが、あまりの美味しさに途中からお互い黙々と重箱と口の間を只管に箸を行き来させて驚く程あっという間に空になった。思わず子供かと突っ込みたくなるほど食に没頭してしまった。図らずして花より団子を体現する。これもまた何時ぶりの感覚だろうか。
重箱をまた風呂敷で包み片してからはお互い食休みも兼ねて暫くぼんやりしていた。言葉を特に交わすでもなく、ただただ春のそよ風が時折頬を撫でていく。仕事柄、基本的に完全に脱力したり気を緩めるという機会はそうそう無い。それはいくら休暇であっても同じである。忍務中よりかはリラックスしていても無意識に気を張ってはいるのだ。だが今は違った、我ながら完全に呆けている。遠くに鳥のさえずりを耳にしながら、雲ひとつなく晴れ上がった空に笠のように垂れる桜の枝を視界に入れ、すぐ横では愛しい妻がぽやんとした表情で同じ景色を眺めている。
……こんなに幸せな時間があるだろうか。よくよく思えば子供の頃にわくわくしながら家族で出掛けた時とはまた違った多幸感で心が満たされているなぁとふと気付いた。あの頃は父上や母上と一緒に出掛けて、めいっぱいに遊んでもらって、それがとても楽しかった。そして今この瞬間と言えば、好きで好きで堪らない妻と肩を寄せ、言葉にせずとも同じ空間を五感で共有し、ゆったりとした時間を過ごす……この時間の心地良さと嬉しさが共存する感覚――これを幸せと呼ばずして何と呼ぶのだ。嗚呼、愛しくてどうにかなりそうだ。
「利吉、こっち見すぎ…! 折角なんだから桜見なよ」
色々と想いを巡らせているうちに、どうやら隣の妻を穴が空くほど見ていたらしい。流石に……といった様子でそう言われて、そうか、妻を見ていたのか。なんて他人事のように達観する自分がいた。そのまま指摘を無視して見つめ続けながら、自然と体が動く。
「……見てる」
「何言って――ゎっ?!」
三角に曲げた膝を両手で抱えてぺたりと座っているところへ腕を伸ばして、体勢をさっさと変えてやる。彼女も気を抜いていたのか、いとも簡単に胡座をかいた此方の脚の中にすっぽりと妻を横向きに座らせることに成功した。これであればちょうどよく愛らしい表情をより見つめ続けることが出来る。
やや驚いた表情で見上げてくるその頬は仄かに桜色に染まっていた。
「どうしたんだ?」
「急に、引っ張るからでしょ……! もう、折角お花見しに来たんだからちゃんと――」
「私は花見をしているが?」
「へ??」
「あんまり可憐に咲いてるから今手折ってしまったけど」
左腕を横向きの彼女の背に回して支えながら、反対の手で彼女の華奢で白い手首を捕らえ、そこへ唇を落としてじっと見つめてそう答えると、忽ち眼前の妻の顔に一気に朱が走った。随分と照れる様子にこちらの気持ちも益々満たされていく。
「も、もうっ!? そういうことを…!」
「こういうのは好きじゃないか?」
「……!!」
妻にしては珍しく、分かりやすく図星だといった様子で口を噤んだことに思わず笑ってしまった。こちらの一挙一動に反応する姿があまりにも初心で可愛い。彼女も相当私の事が好きらしい事実を改めて実感して、もっと見たくなってしまう。
「たまにはいいでしょう? 私は何時も貴女に振り回されてるんだから」
「利吉、待って」
「……貴女の可愛らしい顔、私だけ見る事が出来るだなんて、勿体ないくらいだ……まぁ誰にも見せませんけど」
「なっ、、ちょっ……!」
そのまま大人しくいる妻へ顔を寄せ、一瞬触れるだけの口付けをしてそう伝えてやるとピシャリと固まっていだが、何事も無かったように捉えていた手首を解放して、若干熱を帯びた頬を撫でた。
「花見がしたいんだろう? ……ほら、丁度いいじゃないか。お互いにお花見できて」
頬から顎へ、くいとこちらを向かせるように固定してまた妻をまじまじと覗き込む。
丸く大きな瞳には、私越しに青空とそれを覆う程に咲き溢れて舞う桜が映っていた。対して私には、桜色……にしては色付きすぎた様子の可愛い可愛い妻しか映っていない。
「は、恥ずかしくないの……!」
「何を言ってるんだか。恥ずかしさなんてある訳ないでしょう? そもそも私は事実を言っているだけだ」
「う……だからっ……も、もうっ」
「そろそろ観念して私に愛でられたらどうだ?」
「……わ、わかったから……!!」
やっと引き出せたその言葉に自然と口角が上がった。
――瞬間、春風が通り抜けて雨のように桜が降り注いだ。幻想的な景色にまた夢心地のような気になっていると、ふわりと花弁が彼女の顔に着地し、ふるりと睫毛を震わせた彼女はあどけなさも残りつつ、色気を纏っているように見え、その様子にどきりと脈打った。……平常心を装いながら、顎に添えていた手で優しく取ってやる。こちらを向かせる為に添えた手であったが、離しても顔を向けたままでいてくれる事に本人は気付いているだろうか、おそらく無意識だろうけれど。
「擽ったい……!」
「こら、動くんじゃない」
身を僅かに捩って私といる時にしか発さない甘えた声音でそう言う姿にくらりとしてしまいそうだ。
花弁を払えた手はそのまま移動して妻の柔らかな唇をふにふに突ついた。
指で触れているだけでは物足りず、紅が引かれちゅるりとした唇に吸い寄せられるかの如く、目を見開く彼女に気付かないふりをして、逃げないように再度顎を捉え自身のそれを重ねていた。
何度か角度を変えて触れるだけの口吸いをする。彼女の鼻から抜けるような力無い吐息に、とくとくと自身の心音が高鳴るのを感じた。触れる毎に、ふにゃりとした自分とは違う口唇の感覚を思い知らされてうっかり貪ってしまいそうになる……のを必死に堪える。
ちゅっと音を立てて改めて間近で彼女を見れば、薄く口を開けてはぁ、と吐息を漏らす様子に、場所も忘れて先程まで堪えた努力も水泡に帰す位にはすぐに興奮してしまった。
「っん、りきち、、ちょっと……! ここ外だから……!」
「ごめん、つい」
「…ついって、……?!」
外だろうが何だろうがこの衝動を抑えてやることなんか出来ない。妻の発言は右から左へ受け流し、触れるだけでは飽き足らず、今度は啄むように口吸いをした。何だかんだ言っていた彼女も重ねる毎に控えめではあるが若干応えるように唇を寄せ返して……全く可愛いものである。
「ねぇ……!!」
「こんな場所、誰も来ないだろう?」
「そうかもだけど……」
「だから、もう少しだけ……ね?」
唇を解放するやいなや上体をこちらに捻って胸板をとんとんと叩いて抗議してきたが可愛いだけだ。すりすりと頬を撫でながら、触れそうで触れないところまで顔を寄せて強請ってみると、とろりとした瞳でじっと見られた。……思上がりではなくこれは事実だが、こうした表情を見せている時の妻といて、私の思い通りに事が進まなかったことは無い。人の事を言えた身では無いが、とどのつまり妻も私にぞっこんであり、珍しくそれが表立っている時の顔であるのだ。久々のこの妻の空気に、いつも調子を狂わされがちな私としては内心得意気になった。
「……ぅ、、す……」
「……ん?」
口を開けたり閉じたり……もじもじとして二の句を告げずにいる彼女の言葉を、余裕の心を持って慈しむように待っていると、急にぴたりと胸に凭れかかり小動物のようなつぶらな瞳を此方に向けて発した。
「…う、ん……少しだけ……だよ……??」
「ッ~~~~!!」
「……利吉?」
――なんと呆気ないことか。今の今まであった余裕は、たったその一言で雲散霧消した。
「貴女ね……どれだけ私のことを掻き乱すんだ……!!」
「……え、何? どういう事??」
「折角……!! 折角今日は私のペースできていたのに……!」
「??」
「……はぁ、やっぱり敵わないな……私の可愛い奥さんには」
何か意見したかったであろう開きかけの彼女の口を容赦無く塞ぐ。唇の隙間から舌を差し込むと、彼女は容易くこれを享受した。蕩けるような熱を持った口内を舌先でなぞりながら努めて優しく愛撫する。先程よりも深く、絡め取るように交わった。絡まれば絡まるほど、妻はくぐもった声を時々あげながらも、目尻を更に下げて懸命にもっと絡めようとするので、ただでさえ情けない程に余裕が無いというのにいよいよ体の中を巡る昂った熱に浮かされそうな気がして自分自身に警鐘を鳴らした。
「……っん……ん…はぁ……りきち……」
「……っはぁ……~~ッ」
(……なんて顔をしているんだ……!!)
人目の無いことをいいことに暫く互いに舌を激しく絡めていたが、歯止めが効かず事へ及び始めそうな自分がいる事を自覚してなけなしの理性で身体を離した。ぷつりと銀の糸を切らして離れていく妻のあまりに扇情的な表情に言葉を失った。
「……こ、ここまでだ……!!」
「……ぇ。……あ、うん……」
「外だから」なんてどの口が言っていたのか。頼むからそんな物足りなそうな顔で見ないで欲しい。本当に抑えられない。しかし抑えずにここで続きをしてしまえば絶対に後でとんでもなく怒られ……いや、怒られるならまだマシで、場合によってはもう二度と口も聞いてくれなくなるのでは……!? ……可能性のひとつとして最悪な事態までサッと過ぎり、お陰で冷水をぶっかけられたかのような勢いで冷静さを取り戻す。
「……利――」
「ッ、続きは……帰ったら……」
「……えぇと……む?!」
改めて認識して相当恥ずかしいのか、火を吹きそうな勢いで真っ赤になった彼女の濡れた口唇に、人さし指をぴたりと付けて物理的にこちらの意図しない発言はさせないと意思表示した。ここまでして万が一お預けとなっては流石に酷である。欲しい返事はひとつしか無いのだが、「返事は?」とそのまま聞くと、目を逸らしつつもこくりと確かに頷いた妻にどくどくと鼓動がうるさくなった。満足する回答も貰えたところで指を離して、愛しさ堪らず抱擁する。こてんと彼女も横を向いたままこちらへ身を預けてくるものだから、自然と耳を胸板に当てられるような体勢になる。この脈拍もとっくにバレバレなんだろうなぁと自身の格好のつかなさに羞恥心を感じていると、腕の中にいる妻が「でも……」と口を開いた。
「……利吉ともう少しこのままお花見したい」
「うん、勿論。――そうしようか」
ぽんぽんと彼女を撫でて一緒に辺りをまた見渡していると、春特有のぬるい風が桜の雨を降らせながら吹き抜けた。熱った体にはちょうど良い温さだ。
「綺麗……!」
「あぁ、本当……綺麗だな」
感嘆の声を漏らして木々を見上げる妻の姿に心を奪われる。その美しい横顔をこの先もずっと隣で見ていたいと切に思った。
「……来年もまたここへ野掛けに来ようか」
「うんっ、また利吉と来たい」
「良い穴場を見つけたな」
「ふふ、私達だけの桜だなぁ……なんて思っちゃうくらい素敵だね」
儚げな美しさを見せていたかと思えば、次に向けられたのは眩しいほどの純粋爛漫な笑顔でまた見惚れてしまう。
「これからも、ずっと一緒にいよう」
完全に無意識にぽろりと出た言葉は願いに近いものだった。妙に気恥しく、ぐっと顔を上げて妻に此方を見られないよう視線を外そうとしたら、ぬっと伸びてきた彼女の手に両頬を掴まれて強制的にばちりと視線を交わらせられた。
「ずっとずっと一緒にいようね」
瞳いっぱいに私だけを映して柔らかな笑みをした妻に真正面からそう言われて、守らない夫が居るだろうか。嗚呼、本当に心の底から彼女と家族になれて幸せ者だなと噛み締める。……改めて、雨が降ろうが槍が降ろうが添い遂げるんだと密かに己へ誓いながら、目の前の妻へそれが伝わるように影を重ねた。
fin.