エムカ合コンモチェのやつ(手のツボ) 最近頻度が上がってきたチェズレイとの晩酌の時だった。
そろそろ酔ってきたかなと水を差し出すついでに
「また酔い覚ましのツボ押してあげようか?」と誘ってみた。
なんとなく、ミカグラ島を発つ前にしたおふざけを思い出したのだ。もう半年くらい昔の話だ。
「そうですねェ、ではお願いします」
チェズレイは考え込む様子もなく手袋を外し、素直に手を差し出してきた。
今日はかなり機嫌が良いらしい。とろんとした笑顔に首のあたりがソワソワする。ちょいと無防備すぎやしないかい?なんて、下心を曝け出すようで言えないけれど。
「えいっ」
ふざけてますよと分かりやすい態度で、昔聞きかじっただけのツボを押す。ちょうどあの時みたいに。
「……、……ん?」
でもチェズレイの態度はあの時とは全然違った。変なスイッチが入ったりしない。それどころか「んっ」なんて小さな声が聞こえた気がする。
「あれ?」
思わずフリーズしそうになった。恐る恐るチェズレイの方を見ると、とろんとした目と目が合った。
「あの、チェズレイさん」
「はい、モクマさん?」
汗が噴き出してくる。目の前の相棒が酔ってるのか酔ってないのか分からない。
「今日は、あの、変なスイッチ、入らないんだ?」
俺の慌てっぷりがおかしかったのか、チェズレイはそれはもう楽しそうに笑った。
「ええ、もうあんな風に誤魔化す必要はないので」
「ごまかす……」
「そうです」
言いながらチェズレイはしっかりと俺の手を握った。そのうえ指まで絡ませてくる。ああ、細くて長い指だな。
「ただ手を握る、ということを楽しめるようになりました」
あなたは?と首をかしげる仕草が下心に刺さってしまって、俺は返事のかわりにチェズレイの手をぎゅっと握りこんだ。