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    kusari_to_yaiba

    デュエスえちえち

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    kusari_to_yaiba

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    途中で何が描きたいかわからなくなったので供養してください。日常生活の中でちょっと血が出ます。

    ※ワタシ!リョナヘキチョトアルネ!
    ※デュース、チョトオラツイテルネ!


     薔薇の花の香りが鼻腔をくすぐる。自分にはこういうファンシーな世界観は今まで無縁だったので、やはり肌に合わないように思う。だが、魔法の鏡が選んでくれたこの寮に誇りを感じているので全うしようとは思っているのだが…どうにも紅茶を啜って優雅に過ごすこの時間が煩わしい。せめて顔と態度には出さないでおこうと、何とも洒落たティーカップに口を寄せると隣の席からけたけたと笑い声が聞こえた。自分に向けられた下品な笑い声の正体はクラスメイトでルームメイトのエース・トラッポラだった。   


    「ぶっ、あははは!!お前、渋い顔しすぎ!!」
    「…顔に出していないつもりだったんだが」


     ぶっきらぼうにそう答えると、エースは「いや、わかりやすすぎだから!」と可笑しそうに腹を抱えている。僕はそんなエースを横目にティーカップの中のダージリン?アッサム?とかなんとかを啜りながら、鼻に抜ける紅茶の香りとともにため息をついた。僕の態度に飽きたのか、エースはもう別の人間のところへ向かっていた。本当にやかましいやつだ。昔の僕ならすでに5、6発は殴っていたと思う。今の僕こそそんなことは絶対にしないが、絶対に過去の僕はしていたと思う。ミドルスクールの時に出会っていたらな…と物騒なことを考えていると、遠くで先輩と話しているエースと目があった。なんだか気まずくなって視線を一度外し、再び顔を上げた頃にはエースは先輩を見ていた。


     最近、こういうことがよくある。



     エースの視線を感じて目を向けると目が合い、逸らすとまた逸らされているのだ。時に授業中、時に移動中…食事中、動物たちの世話の当番をしている時など、様々な場面で目が合う。目があっても先ほどのように逸らされて終わりなのだ。だんだん自分も嫌気が差してきて、最近では無視したりもする。一体何を考えてるのか普段からよくわからないやつだが、僕が考えたところで何もわからないのは悔しいことに明確だ。直接聞いてみようかとも思ったが、「お前が見てるから目が合うんだろ?」とかなんとか得意の言葉でペラペラと僕を言いくるめるだけだろう。ぼーっと茶とケーキを飲み食いしていると、隣の寮生に口元を拭われた。よほど口の周りにクリームをつけている様が目に余ったようだ。その寮生にお礼を言うと、そそくさと食べ終わった皿を運びに行ってしまった。何か失礼なことでもしたか?と首を傾げると寮長が手を叩く合図が聞こえた。皆その音の方向に目を向け、賑やかだったパーティー会場も静寂が訪れる。寮長の響く声を合図に今日のなんでもない日のパーティーは幕を閉じた。


     パーティーの後片付けは正直面倒くさい。なんで今日は誰かの誕生日じゃないんだとか、アイツが5分遅く生まれていれば今日はなんでもない日じゃなかったのにとか、もはやハーツラビュル寮生の口癖になってしまった愚痴をみんな口々にぼやいている。僕も皿を2枚ほど割りながら皿洗いをしていると、後ろからまた厄介な声が聞こえてきた。


    「デュース、お前また皿割ってんの?ダッセ〜!!ゴリラにも程があるでしょ!この皿滅多に割れないらしいぜ?」
    「…エースか、お前も…」


    割られたいか?と言う言葉は声に出さず、途中で喋ることをやめて皿洗いに没頭する。すると、不服そうに鼻を鳴らしたエースに膝の裏側を蹴られた。ガクッと崩れる膝に、慌てて体勢を立て直すと舌を出してニヤニヤするヤツがこちらを嘲笑っていた。プッツン、と何かが切れる音がしたが拳を握りしめて極めて冷静な表情でいることに努めた。こいつは本当に僕の神経を逆撫でしてくるな。どうなっても知らないぞ、と頭の中でボコボコに殴ってやる。エースと喧嘩になったらどう戦おうとか、そういった妄想はもう何百としてきた。何百としてきたのでいつきても僕は勝てる自信がある。
     また反応が悪い僕を見て、面白くなかったのかエースが僕の首筋に皿洗いでびちょびちょに濡れた手をぴとりと当ててきた。その瞬間反射的に手を振り払おうと手を出したところで拳頭のあたりに鈍い痛みと手応えを感じた。ゴッ、とエースの鼻に僕の手が当たる。たまたま当たってしまったらしい。


    「っい、な、何!?は?お前俺のこと殴ったわけ!?俺の鼻折れてない!?」
    「お前が悪いんだろ。間違えて当たっただけで騒ぐな…」


    重たいため息をつくと、エースの自分の鼻を押さえている手からどぷっと生温かそうな血液が溢れていくのが見えた。指の股から流れ落ちて、肘までゆっくりと滴り落ちている。思わず見入ってしまって黙り込んでいると、エースが血の気が引いたのかバランスを崩してよろけた。咄嗟に肩を抱いたが、その線の細さにこんなに華奢だったか?と不安になる。赤くなってしまった鼻と、頬にこびりついた固まった血と、生理的な涙で赤くなった目元に目が離せない。全てが赤い。
     エースの真っ赤な瞳にじっと見られている。見つめると言うより、見られている。目の奥で何かを悟ったような鋭さを感じて恐れ慄く。魅入られていると、エースが首に腕を回してきた。男のくせにしっかりケアされた唇が耳元に寄せられる。


    「ねぇ、今興奮してるでしょ。」


     にんまり、と口角を上げて目を細めて笑うエースは自分が見てきた表情の中で1番似合う表情だなと思った。大きな目に、まだ幼さを残した骨格と肌荒れを知らないまろい頬がその表情と対極でなんとも言えぬ妖艶さを放っている。こんなこと今まで感じたことなどなかったのに。そんなことを考えてる間にも、エースは鼻血を流し続けている。だいぶあたりどころが悪かったみたいだ。流石に可哀想だなと思い、エースのペラペラの体を支えながら保健室へと向かった。


     かといって、処置方法が特に思い浮かぶわけでもないので、エースをベットに座らせてティッシュを雑に詰め込んだ。だんだんと白いティッシュが赤い血に濡れてくるのが面白い。間抜けな姿だな、と吹き出すと機嫌が悪そうな返事が返ってきた。


    「…何笑ってんの。お前のゴリラ突きが悪いんだからね。」
    「突きなんてしてない。払っただけだ。」
    「お前の払っただけは殴るのと同義なの!!」


     ティッシュを鼻に詰めているせいですこし鼻声になりながらも憤慨するエースはマスコットキャラクターみたいだ。腹を押すと喋る人形が昔家にあったな…と頭の片隅で思いふけていると、少し粘液っぽい鼻血のついたティッシュを鼻の穴から間抜けに引っ張り出すエースの姿が視界に入った。さらさらと流れる血は綺麗なのに、どうして粘着性があると途端に汚く見えてしまうんだろう。これは僕の感性だと思うが。


     「うへぇ、まだ血ィ止まんない…ちょっと!俺をこんなふうにしたんだから、責任とってよ変態デュースくん。」
    「なっ…!?僕は変態じゃないぞ!!」
    「変態じゃん!!さっきから俺の可哀想な姿見てニヤニヤしながら怖い顔しちゃってさ?ド変態にもほどがあるよね。」


     ふん、と得意げになりながらエースは僕をいつものようにバカにする。
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