「ライトさんさぁ やたら肩が凝るとか
定期的に気分が落ち込むとかあったりしない?」
「なんだ唐突に」
「この部屋そういうのの原因がうようよしてんの
おばけ屋敷よマジで あらかた始末したけど」
「あんたもオバケだろうが」
「生きてる人間に害意のあるやつばっか集まってんの
死人のことばっか考えてるから変なの寄ってくるんだよ」
「……悠真のこと考えちゃいけないのか?」
「……僕のことなら大歓迎です じゃなくて!
そういうの片付けてあげるからさ ご褒美が欲しいわけ」
「相場はどのくらいだ」
「現金渡されたって使えないよ
多分僕が離れられないのは体液の交換が関係してると
思うんだよね」
「つまり?」
「最低でも舌入れるキス あわよくばセックス」
「どうせキスだけじゃ終わらないんだろ
始めからそう言えよ 毎日は無理だぞ」
「え————―——(不満顔)」
「こっちの身が持たん 勘弁してくれ」
「そんなに激しくしてないもん」
「………………よすぎてヘンになるから嫌だ」
「ちょ、それ反則……(吐血)」
うっかり生前の癖で血ィ吐いちゃったじゃん
かわいすぎでしょ その顔僕以外に見せないでね?
「話変わるけど なにあの冷蔵庫
水とニトロフューエルしか入ってないじゃん」
「…:.飯は外で食べるから ここは寝に帰るだけだし」
「不健康――!動けなくなった時どうすんの
非常食くらい置きなよ」
「……死ぬなら別に構わないし」
「よくないよ!セルフネグレクト禁止!!
沢山食べられて 発作が起きない身体の有り難みが
全然わからないんだね そういうとこ腹立つ」
生前のこいつは自分の事を『生きたくても
生きられないやつ』と言っていた
配慮が足りなかったかもしれない
「……!?」
身体が動かせない 悠真の金色の瞳が爛爛と光って
透けた手が喉と胸に入ってくる
「僕の発作がどういうものか ライトさんにも
教えてあげるね」
動悸過呼吸喉から血が出るほどの咳その他諸々を
人の身体で再現された こんな芸当が出来るなら
いつだって俺を殺せるだろうに
「……どうして楽にしてくれないんだ」
ちっともわかってないし!!!もうこれ
気が狂うまでいかせ続ける方が効くやつ?
「好きなひとを殺したりしないよ
明日食糧買いに行こう 作り方教えるよ」
僕が調味料どころか薬缶以外の調理器具も無いのに
ブチ切れてライトさんを押し倒すのはまた別の話だ