愛を纏う 大きな窓から柔らかに朝陽が差し込み、乱れた白いシーツがそれを照り返す。小鳥がささやかに唄うのを聞きながら、ジャミル・バイパーはするりとベッドから抜け出す。衣擦れの音が微かに鼓膜を震わせて、レオナ・キングスカラーが瞼を震わせた。
「……もう行くのか」
起き抜けの、掠れた声がジャミルを咎める。目を閉ざしたままの男に、ほんのりと眉を下げる。ただのポーズだ。気配でその表情を覚ったレオナが、不機嫌そうに喉を鳴らす。
「仕事がありますから」
「はっ……その雇い主を陥れようとした男が」
「何年も前のことを未だに蒸し返すのは、俺か貴方くらいですよ」
呆れたような声がレオナの耳を打つ。そうだろう。当の本人であるカリムは、あのとおり。当時も、今も、まるで気にしちゃいない。それがレオナには気に食わないのだが、いい子の従者くんはそれで納得していると言うのだから、どっちもどっちだ。
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