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    よしば

    @yoshi_R_K

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    よしば

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    メテオライツありがとう
    30分で書いたなにか

     大掃除が終わったのは、終電も終わっている深夜だった。最初から学校に泊まるつもりだった千秋はともかく、一年生たちは慌てて家に連絡をしていた。彼らの親御さんには後日お詫びに伺わねばならないな、なんて独りでに考える。
     翠だけは家に帰れない距離でもなかったが、こんな夜更けに一人で帰すわけにもいかず、本人もしぶしぶながら家に泊まっていく旨を連絡していた。
     こんな時間まで彼らを付き合わせるつもりはなかった。申し訳ないことをしたななどと考えていると、隣からチョップが降ってきた。
    「か、奏汰」
    「ちあき。あのこたちはじぶんで『えらんで』ここにいるんですよ」
    「うむ、そうだな」
     申し訳ない、なんて思う方が彼らに失礼だ。そう奏汰に諭されて思わず顔がにやける。彼にいろんなことを教えるのは千秋の役目であったはずなのに、いつの間にやら彼から教わることも増えてきた。
     奏汰とは正直長い付き合いと言えるほどの時間は過ごしていない。海神戦の直後、二年の半分と三年になってからの時間だけだ。それでも奏汰は千秋のことを良く理解してくれている。それだけ気にしてくれていたのだと思えば、嬉しさがこみ上げてきた。
    「なあ奏汰」
    「なんですか、ちあき」
    「……もうすぐ、卒業なんだな」
     大掃除をしながら常に頭の片隅にそのことがあった。夢ノ咲学院に入学したときに憧れていた青春と、もうすぐ別れを告げなければならない。一年生、二年生とずっと日陰者であった千秋がようやく手に入れたものは、もうすぐこの手から離れていってしまう。そう思うとこみ上げるものがあった。
     奏汰は何も言わずそっと身を寄せると、静かに笑った。
    「『もうすぐ』は『いま』じゃないですよ」
    「……うん」
    「まだ『おわり』ではないんです。あのこたちにも、まだおしえなきゃいけないことがたくさん、ありますね?」
    「うん、そうだな」
     千秋はもうすぐ卒業という形でこの学院を去る。しかし彼らはまだ一年生で、先があるのだ。もしかしたらこの一年間以上の青春を送ることがあるかも知れない。いや、そうあって欲しいと千秋は思う。
     彼らに教えなければいけないことはまだ多くある。まだまだ危なっかしいこどもたちをおいて、独りで感傷に浸っている暇はないではないか。
     そんな風に鼻息を荒くしていると、奏汰は隣でふふ、と笑う。彼にはどんなに格好付けても内情を見抜かれてしまう。それだけこちらのことを理解しようと努力してくれているのだろうと思うと、頭が上がらない。
    「隊長ー、深海先輩ー!布団の用意が出来たッスよ!」
    「この部屋は狭いから、みんなで雑魚寝でごさるな。修学旅行みたいで、拙者わくわくするでござる」
    「ええ、忍くんは元気だね。俺はもう掃除でくたくただよ。早く寝たい」
     布団の準備をしてくれていた鉄虎たちから呼ばれ、座っていた腰を上げる。本当は布団の準備を手伝うべきだったのだろうが、鉄虎から「独りで掃除をしようとしていた罰」と言われ奏汰と共にっとしていることを命じられていた。
    「あいつらは、どんな青春を送るんだろうな」
    「さあ。でも、きっとちあきがのこしたものは『むだ』ではないですよ」
    「そうだな。そうだといいな」
     形骸化して脆く崩れそうになっていた流星隊を諦められずもがいてなんとか繋いできたバトンを、もうすぐ彼らに託さなければならない。しかしそれはまだ先の話だ。
     そのもうすぐが出来ることならまだこないで欲しいと願いながら、千秋は鉄虎たちを抱きしめようと駆け寄った。
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