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    よしば

    @yoshi_R_K

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    よしば

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    サブマリンの奏千 何か書きたかったものがあったはずなんですけど飽きました

    「ちあき」
     ざざん、と静かに波が押し寄せる海岸に立っていた。自分を呼ぶ声に振り向くと、奏汰がいた。
     時刻は真夜中、同じ部屋で寝ていた鉄虎たちはぐっすり眠っているだろう。奏汰も寝ていたと思ったのだが、起こしてしまっただろうか。
    「こんな『まよなか』でも『しれい』ですか?」
     千秋は今回のSSで、流星隊メンバーと一定の時間を過ごしてはならないという指令で仲間たちから離れて行動することが多かった。今こうして外に出てきているのも指令なのかと奏汰は聞いてきているようだった。
    「いや、流石に寝るときは大丈夫だぞ」
    「じゃあ、どうして?」
     奏汰は妙に鋭いところがある。その海を映したような瞳は何もかも見透かしているのではないかと思うことも少なくはない。そんな瞳に覗き込まれて、千秋は肩を竦めた。
    「少し眠れなくてな。夜風に当たろうと」
    「いくら『おきなわ』でもよるはさむいですよ」
    「そうだな」
     今着ているのは旅館に備え付けてあった浴衣一枚だ。上着を取りに行くのがどうにも億劫でそのまま出てきてしまったが、流石に夜風が冷たい。
     奏汰はそんな千秋に呆れた顔で手に持っていた上着を渡す。
    「持ってきてくれたのか」
    「ただでさえ『たいちょう』をくずしぎみなんですから、ひえたらだめでしょう」
    「そうだな。ありがとう、助かる」
     受け取った上着を羽織れば寒さが和らいでほっとする。その様子を見ていた奏汰は小さく溜息を吐いてじとりとこちらを見る。
    「『たいちょう』が『あっか』するまえにもどるんですよ?」
    「わかってる。それくらいはわきまえているさ」
     とは言ってもすぐに戻る気はない。それを察したのか、奏汰は千秋の横に座ると、押しかける波へと視線を落とした。
    「お前まで付き合う必要はないんだぞ」
    「べつにいいでしょう?ぼくも、すこし『よかぜ』にあたりたかったので」
     本当は一人になりたかったのだが、そう言われてしまっては断ることは出来ない。無言のまま海へと視線を向けると、それを肯定と取ったのか奏汰は座ったまま顔を上げる。
    「で?いまはなにで『なやんで』いるんですか?」
    「……お前には隠し事は出来ないなぁ」
     ふふ、と奏汰は笑う。彼の前で格好をつけられた試しがないのだ。こちらの心を読んでいるのではないかと思うほどに、奏汰は察しが良い。特に千秋が悩んでいる時にそっと近づいて心を解いてくる。
    「ちあきのほんとうの『きもち』をおしえて?」
     柔らかな声でそう言われれば、答える以外に選択肢はなかった。
     千秋は奏汰の横に座り込んで空を見上げる。星々が小さく瞬いていて、ひどく寂しい気持ちになった。
    「……俺は、もう後悔したくないんだ。ヒーローに、なりたい」
     コメットショウでは信じていたものを曲げてしまった。己の軸を曲げてしまったのに等しい行為だった。だからこそ、今回のSSでは何も曲げたくなくて少々先走った行動も取ったりしてしまった。
     鉄虎たちはそんな自分にしぶしぶながらも付いてきてくれる。しかし彼らの意見はきちんと聞くことが出来ず、話し合いはその体を成していない。
     どうすればいいのだろう。理想としていたヒーロー像がどんどん遠のいてしまって泣けてくる。
    「『ヒーロー』って、なんですか?」
    「……懐かしいな、その台詞」
     それは初めて出会ったときの彼の言葉だった。あの時奏汰はヒーローとは何か、と問うてきたのだ。結局自分はそれにきちんと答えを返すことは出来ていただろうか。
    「いいんですよ、ちあき。『りそう』にはとおくても、あなたがしんじる『ヒーロー』になれば」
    「そうだろうか」
    「そうですよ。しんじるものはすくわれるんです」
     にこりと奏汰は笑って、それに、と続ける。
    「ちあきがどこにたどりついても、ぼくはずっとついていきますから」
     だからだいじょうぶです。そう言って奏汰は立ち上がる。もうそろそろ旅館に戻ろうと砂を払ってからこちらに手を伸ばしてきた。
    「お前がいるなら、きっとそれが正解だ」
     手と引かれるままに立ち上がって、千秋は静かに笑った。
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