Addicted to you. / 明と朝陽「おいしいの?」
子どもが好奇心でするみたいな質問だった。
ベランダで蛍族になろうとしている俺のところに、朝陽が珍しく顔を見せてした質問がそれだ。普段であれば、煙草を吸っているときは臭い移りを気にして寄って来ないのだが。
「戸ォ閉めな。煙入っちまうから。……まあ、うまいもんではないわなァ」
苦笑いしながら煙草に火をつけて吸って、吐く。口中に広がる苦味と刺激は、純粋な味としては美味いものではないだろう。
そういえば、それこそ実際に朝陽が子どもだった頃には、こんな質問をされたことが無い気がする。子どもの時分に煙を吸わせるわけには行かないから、俺が朝陽に煙草を吸う姿を見せるようになったのは一緒に暮らし始めてからだが、臭いまで消して接していたわけじゃない。いま思えば、幼い頃に抱えて歩くようなときもよく嫌がらなかったものだ。
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