押し倒されたみたいな攻の腹の上に受が手ついてるやつふと視線を横に反らすと、間近に山姥切の横顔があって驚いた。布の下できらきらと光る瞳が、鶴丸の手元の本に注がれている。いつもなら気づくはずの気配に、今の今まで気づかなかったのは、今、夢中で文字を追っている山姥切、同様、鶴丸もこの本に夢中になっていたからだ。文机に向かってちょっとだけのつもりだったのに。
「おい、鶴丸ページをめくってくれ」
いつの間にか部屋を訪ねてきて、興味本意で俺の手元をのぞきこんだまま、一緒になって没頭していたらしい山姥切が、こちらにはちらりとも視線を寄越さずにそう言うのがちょっと面白くない。パタンと本を閉じた。
向けられた顔は、むっとしていたけれど、俺は満足だ。
「よし、これは俺が読み終わってから君に貸すとしよう」
「俺は今すぐ続きが読みたい」
「あとでゆっくり読むといい」
「じゃあ、先に貸してくれ」
山姥切が手を伸ばすより先に本を取り上げた。
取り上げたは良いが、長時間同じ姿勢だったせいかうまく足に力が入らずよろけてしまった。そこへ山姥切が身をのりだしてきたものだから、鶴丸は、ほとんど押し倒される形で畳に転がった。
仰向けになった俺の腹の上に山姥切が手をついている。
「きみ、大胆だな」
下からなら、山姥切の白い頬が、みるみる赤くなっていくのがよく見えた。