桜の時期の雨の日のつるんばよろず屋に向かう道すがら、ぽつぽつと降り出した雨が頬を濡らした。
出かける時、念のために持ってきていた傘を開きながら、空を見上げると黒い雲が空一面に広がっている。
「また雨だ」
ポツリとこぼせば、「雨は嫌いかい?」と、隣で俺同様、傘を開いた鶴丸が問いかけてきた。彼は俺のおつかいに勝手についてきたのだった。
「普段はなんとも思わないが、この時期は桜が早く散ってしまうんじゃないかと気が気じゃない。お花見もまだなんだぞ」
ついこの前まで固い蕾だった桜の花は、ここ数日で急に花開き始めた。ほとんど満開と言ってもいいぐらいの咲きっぷりなのに、雨が続けばすぐに散ってしまう。
「まぁまぁ、いいじゃないか。散りかけの花を見ながら団子を食べるのも風情がある」
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