ヨナカーンは愛を拒む これはもう処分してしまわないとならないな。気にいった靴だったのだが仕方がない。稀咲は自分の足元を忌々しく見下ろした。
長く隠し持っていた感情そのままに蹴り上げたそれは、今や稀咲の足元にごろりと無力に横たわる。足元に転がる醜悪を憎々しくも見下ろして、くいと視線ひとつでそれの行き先を促すと、これが最後だとでも言うように稀咲は吐き捨てた。
「さぁ、最後の茶番です。しっかりと努めてくださいよ、ドラケンくん」
◇
拒むことは許さない。背に回された手が佐野を扉の前に促して逃さない。向かい合った鉄の扉は佐野のためにギイイイと耳障りな音をあげて開かれた。その音が悲鳴のように聞こえたのはどうしてだろう。立ちつくす佐野に、こちらですよ、とくすぐるような低音が囁いた。
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