嘘の嘘は真 四月一日の午前中、好きだと告白された。俺も想っていた奴に。相手は同姓で、昔から知っている奴で、鬼神の如くと評されているような奴だった。一生涯の片想いだと信じて疑わなかったというのに。
俺は柄にもなく、唇が少し震えていた。体温が上がっていくのがわかる。少しの間があって漸く口を開き、言葉を発しようとした、その時。
"嘘に決まってンだろ!"
エイプリルフールだと、お前を好きになるわけがないと言われた時、俺は出しかけていた言葉を飲み込んだ。多分ここ数年で、最も気力を振り絞っただろう。
一つ悪態をつき、朝日に輝く山へと足を向けた。いまだ赤い顔を隠すために。感情に任せていらぬことまで口走ってしまわないように。
1998