写納エロ習作(うーん……どうしようかな……)
色のない世界を歩きながら、ジョゼフは思う。
今はゲーム中で残っているサバイバーはイソップとルカの二人。
暗号機は三台。
投降しないところを見ると、サバイバーはまだ諦める気がないのだろう。それなら少し遊んでやろうと写真世界を作った。しかし、バグが起きたのか写真世界と現実世界を自由に行き来できるはずの瞬影留痕を使っても、カメラに写し出された写真を通っても写真世界から出られなくなってしまった。
(ゲームが終われば出られるかな……)
勝てるゲームがバグで駄目になってしまうのは癪だったが、今はそれ以外に方法が思いつかない。
ジョゼフは諦めをため息にして、階段に腰かけた。
髪の毛をいじったり、電車の音に耳を傾けていると、突然キンと耳鳴りがする。サバイバーのどちらかが迷い込んだのかと思い、ジョゼフは立ち上がった。しかしパッと見ただけではサバイバーの影は見つからず、時空残像を索敵に使う。
索敵にかかった方向へ歩いていけば、視線の先に不安げに歩くイソップの姿が写った。
「イソップ!」
そう名前を呼べば、当然のようにイソップの視線もこちらを向く。
「ジョゼフさん、」
「君も閉じ込められていたの?」
「閉じ込められた?」
何を言っているのかと言いたげに、イソップは眉を寄せた。
「気づいてなかったの? ほら」
ジョゼフが言って、近くのカメラに手を通してみせる。現実世界に消えるはずのその手はカメラに写し出された写真をすり抜けた。
「本当だ……」
信じられないと言った様子でイソップも手を通すが、その手が現実世界に消えることは無い。
「バグ……ですか?」
「多分ね。久しぶりにイソップたちを完封できたのに、バグで駄目になってしまうなんて残念だなぁ」
「今日のジョゼフさん本当にお強かったです。帰ったらみんなで反省会ですよ」
イソップは困ったように笑って、軽く肩を竦めた。
「ふふ、君に褒められると嬉しいよ」
ジョゼフも微笑みを返して、二人はしばらく他愛のない話を続ける。
「さて、どうしようか」
話の切れたタイミングでジョゼフがそう言い、立ち上がった。
「どういうことですか?」
「僕一人なら、このゲームが終わるまで待っていても良かったけれど、イソップがいるなら話は別だからね」
イソップはジョゼフの言おうとしていることを測りかねているのか、不思議そうな色をアイスグレーに浮かべている。
「バグでできた空間にいつまでもイソップを置いておいて、なにかあってからだと遅いから」
「別に大丈夫ですよ。今までも何度かバグに遭遇したことありますけど、大きな被害はありませんでしたし……」
「今までのバグはゲームができなくなるほどではなかったでしょ? それにいつもと空間が違うんだから、なにか不都合があってもおかしくないよ」
「…………心配性ですね」
そう言いながらも、イソップはまんざらでも無さそうに笑った。ジョゼフはその顔に呆れたようなため息をつきながら、ここから出る方法を探そうと歩き出す。そこでカサとポケットの中でなにかが動くのを感じた。
「ジョゼフさん?」
なにか入れていたかと不思議に思って、ポケットからそれを取り出す。コートのポケットから出てきたのは一枚の封筒。封蝋の印を見る限り、荘園の主からのものだろう。
「どうしてこんなものが……」
入れた覚えのない封筒に眉をひそめながらも、ジョゼフはそれを開けた。中には便せんが一枚だけ入っていて、ジョゼフはそれを取り出して目を通す。次の瞬間、ジョゼフのまとう空気に明らかな怒りが滲んだ。
「ジョゼフさん、何が書いてあったんですか?」
「ふざけてる」
イソップの問いかけも無視して、ジョゼフはぐしゃと便せんを握りつぶす。
「ジョゼフさん!」
イソップが少し声をはりあげて袖を引っ張った。ようやくジョゼフの瞳がイソップを写す。
「ああ、イソップ。ごめんね」
「なにが書いてあったんですか?」
「……君は読まなくていいよ」
イソップがジョゼフの手から便せんを取ろうとすると、ふいと手の届かないところへ逃がされてしまった。
「同じ空間に閉じ込められてる僕にだって、知る権利はあるでしょう?」
少し不機嫌を滲ませながらイソップは言う。ジョゼフは自分を見つめてくるアイスグレーに視線を重ねて、ため息をついた。
「……僕たちが写真世界に閉じ込められたのはバグじゃない。荘園の主による意図的なものみたい」
ジョゼフの言葉を聞きながら、イソップは渡された手紙を読む。
「これは……」
イソップはその内容に、ジョゼフが怒るのも無理はないなと思った。
「どうします? 僕最近、戦績があまり良くなくて、エコー持ってないんですけど……」
「僕も似たようなものだよ。それにこの間買い物をしたばかりだから、余計に手元に残ってるのは少ないよ」
「それじゃあこっちしかない……ですよね……」
イソップがなんとも言い難い表情をうかべる。
「なにを考えているのか……」
ジョゼフは便せんを破り捨て、イソップに向き直った。
「さてイソップ、そういうわけだけれど、どうする?」
ジョゼフの言葉の端に意地悪な空気を感じ取って、イソップはふいとそっぽを向く。
「自分でできますよ!」
「そう」
不満そうなイソップにジョゼフはくすくすと笑って、階段を上がっていった。
「ジョゼフさん?」
「どういう風に戻るかわからないからね。せめて見えないところに行こうかと」
ジョゼフの言葉に確かにと思い、イソップも後を追う。サバイバーが"離れ"と呼んでいる建物の中に入って、少し奥の方まで進んだ。
「さて、こんなところから早く出ようか」
言うが早いか、ベルトのバックルを外す金属音がする。先ほどジョゼフに揶揄われたこともあってか、夜の情事が一瞬頭をよぎった。
「ねえイソップ、どうしたの?」
ジョゼフに後ろから抱きしめられ、イソップはびくっと肩を跳ねさせる。
「なんでもないです」
赤くなった顔を隠すかのように俯きながら、何度目かの否定をイソップは口にした。
「ふぅん……、それじゃあどうしてそんなに顔が赤いのかな」
ふぅとジョゼフがイソップの耳に息を吹きかける。
「ひっ」
背筋を走るぞくぞくとした感覚にイソップは甲高い声を上げた。
「ねえイソップ、」
耳元で響く少し低めのテノールに、崩れ落ちそうになる。だけどそれをジョゼフの手が許さない。
熱っぽい息が耳にかかって、耳たぶを甘噛みされる。瞬間、耳の中に舌を捩じ込まれた。
「や、だ、」
突然耳に入ってきたジョゼフの舌と、脳に直接響くような水音からイソップは必死に逃れようとする。
「嘘つき」
ジョゼフの舌が離れて、代わりにとでもいうように、マスクが下ろされて、唇を割り開いた指が口内へ侵入してくる。上顎を爪先で引っかかれて小さな快感が全身へと走った。
「はっ……」
「恋人に嘘をつくような悪い子には、お仕置が必要だと思わない?」
優しい声でそう問いかけられるが、口内を指で蹂躙されて、淡い快楽に呑まれているイソップには、その言葉の理解が追いつかない。
「っ……ふ……」
空いている手が上着を取り去って、薄い胸の突起を的確に押しつぶす。優しく撫でられて、爪の先で引っかかれて、イソップは腹の下の方に快感が溜まるのを感じた。
乳首をいじられながら、指で口内を侵されて口の端から唾液が滴る。
「けほっ」
ジョゼフの細い指が喉をついて、イソップが咳き込んだ。
「やめ、へ」
苦しげなイソップの声に名残惜しそうに上顎をなぞって、ジョゼフの指が口内からいなくなる。
「はっあ……」
イソップは小さく息を吐き出して、身を震わせた。
「なんのつもりですか」
「君が期待してたみたいだから、答えてあげようかと思って」
「ふざけないでくださいよ」
イソップの瞳がきっとジョゼフを睨む。ジョゼフはその視線を笑顔で受け流して、イソップを押し倒した。
「ふざけてなんかいないよ、心外だなぁ。本当に出られるかわからないんだから、楽しもうとしてるだけなのに」
「貴方のお巫山戯に僕のことを巻き込まないでください」
「そんなこと言って、君のここ苦しそうだよ?」
ジョゼフはそう言って、ズボン越しに軽くなぞる。
「んっ♡ 突然戻っても知りませんよ」
「いいよ。今日はここに暗号機もなかったし、現実世界がどうなってるかわかんないけど、普通に進んでるなら通電なんてとっくにしてる。囚人だってもう出ていってるよ」
イソップは抵抗するのを諦めて、ジョゼフに与えられる快楽に身を委ねた。
「あ、ぁ……ん♡そこ……! やあっ♡♡あっ♡♡あぁっ♡♡♡」
ジョゼフの指が後孔に添えられ、そのままつぷ、と中指をゆっくり挿入される。ナカを解すように指を動かされ、いいところを擦る度、甘ったるい声がこぼれ落ちた。
気がつけばナカで動く指は三本になっており、ぐずぐずに解けたナカをぐるりと大きくかき回される。
「は……っ♡あああっ♡♡」
『待って』と止める間もなく、淡い絶頂が全身を満たした。
「……イソップ、いい?」
イソップのナカから指を引き抜くと、衣擦れの音がして、ジョゼフのモノが押し当てられる。問いかけられてはいるものの、イソップ自身に拒否権なんて無い。
甘く身体を震わせて、イソップは小さく頷く。
遠くでカシャリと写真世界の崩壊する音がした。
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「ひァ……♡や、ぁ……ッん♡そこっ♡♡んっ♡もっと……!」
「あんまり煽らないで」
「っ、あ♡ひっぅ♡」
ジョゼフは昂ぶる熱をゆっくり引くと一際奥まで突き上げて、奥の行き止まりのようなとこを責める。結腸が開いてきているようで、削るようにゴリゴリと奥を刺激していると少しずつ深く入れられるようになってきた。
「やっ……♡えっ♡ちょっ、まっ! あっ♡く、あぁぁーーーっ♡♡」
ごりっ、とえげつない音がなった。
奥の奥、暴かれてはいけないところまで入り込まれた快感に声も出なくなる。目の前がチカチカと明滅するかのようで、イく時の激しい快楽がいつまでも続く。
それだけでは終わらず、ジョゼフはそのまま繰り返し最奥へ自身を突き込んだ。
イソップのいいところを抉るかのように何度も何度も。
「ひっ♡♡あっ♡じょ、ぜふさ♡まっ、て♡ひっぅ♡♡またイく、ひあぁ♡♡」
イソップは感じすぎて、気が遠くなるほどだったが、絶え間なく注がれるに快楽に呼び戻されてしまってそれもできない。
「や、だぁ♡も、イってる♡♡イってるからぁっ♡♡♡」
絶頂の最中にさえ、締め付ける肉壁を容赦無く突かれる。ジョゼフの動きは次第に激しくなり、もはやいつイってるのかすらもわからない。
「も、むり♡ひっ♡ーーーーーっぁあぁっ!!」
快楽に蕩けた意識の中で、ジョゼフの精を感じた。
情事が終わってからしばらく、イソップは目の焦点が合わず、虚空に意識を向けていた。陶器のように白い肢体は、薄紅色に染まっている。
「イソップ?」
ジョゼフが自分の名前を呼ぶ声が聞こえるが、イソップに返事をする余裕はなく、代わりに小さく頷いた。
いつの間にか世界には色が戻ってきていて、写真世界から抜け出せていることがわかる。イソップの髪をすきながら、ジョゼフはゲームの状況に目を通した。
残りの暗号機は変わらず三台。
自分たちが写真世界に閉じ込められている間、こちらの時間も止まっていたのかと、不思議に思いながらもジョゼフは立ち上がる。そうして衣服を整えると、裏向きカードで瞬間移動に特質を変えた。
「イソップ、いい子で待っていてね」
快楽の余韻に震えるイソップに、そう声をかける。そうして甘いキスを落として最後の一人を飛ばしに行った。