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    なまず

    @namazurinda

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    アイドルパロの続き。稀咲Pのアイドル論と推し語りに付き合わされて被弾する半間。何を書いてんだ感はんぱない箇所だけど、もう迷いもない。いずれ、みつ武になります!!

    #武道受
    martialArtsSuffer
    #アイドルパロ
    idolParody
    #稀武
    rareMartialArts
    #半武
    half-wushu

    東卍の稀咲Pの推し語り「こいつらは運がいい…」

    新曲のためのMVの編集前の映像を確認しながら稀咲が呟く。
    ダンスのチェックのためにソファーにだらしなく寝転んで画面を観ていた振付師の半間は物憂げに頭をもたげて稀咲を見た。

    「アイドルグループが売れるのに必要なものがわかるか?」
    「さあ…事務所の大きさとか?」
    「事務所は確かに一番重要だ。ボーイズグループは例のあの事務所からデビューしねぇと芽が出ねぇしな…」

    テレビの時代は終わったと言われて久しく、ネットやサブスクがエンタメの主流になろうとしている今であっても、商業的に成功するためにはテレビの力は絶大な宣伝効果がある。
    現代人に好まれない、観る時間や番組を選べないという弱点こそがテレビの商業的な利点になる。
    選択しない人間に任意の情報を伝える力はテレビが一番強いからだ。
    ラジオでも良いが、視聴数がテレビの方が多いし、やはり映像の持つ圧倒的な情報量には及ばない。
    元々興味を持って情報を取得しに来る層だけでなく、知識を持たないライト層への知名度が広がらなければ、世間一般の認知度は上がらないし、スポンサーも付かない。
    ボーイズグループは特に一強の時代が長過ぎ、その事務所のアーティストが基本的に他事務所の男性アイドルとは共演NGとなっているため、地上波に出ることが難しい。
    その事務所は多くのグループを抱えているため、毎月どれかの新曲が発表されていて全ての地上波の音楽番組に出場するため、新曲発表時に音楽番組に出演することは基本的には不可能だった。
    見てもらわなければ見つけてもらうことはできない。
    東卍をデビューさせる稀咲の事務所はは、ミュージシャンには強い事務所で過去にも何度かボーイズグループを結成させて売り込みはしたのだが、明確に売れたと言えるグループは残念ながらなかった。
    普通に考えると東卍はまさにヤンキーをコンセプトにした若い男性アイドルで構成されたアイドルグループで、某事務所のタレントとは駄々被りだ。
    売れるための戦略は思い付かない状況だった。売り出すのには非常にコスパが悪い。

    「グループに必要なのは、まずは貌だ」

    圧倒的にカリスマ性を持つルックスの視覚的な効果は強い。
    人を惹き付け、記憶させる。
    東卍のリーダー、マイキーにはそれがあった。

    「そして、アイドルに一番必要なのは…愛嬌だ」
    「……はぁ?」

    もっと、カリスマ性とか歌唱力とかメンタルの強さとか、何か凡人とは違う特別な能力を上げられると思っていたので、稀咲らしくないと思えるような言葉に半間はすっとんきょうな声を上げた。

    「顔が美しい人間なんて、この業界にはいくらでもいる。だが、例え世界一美しい容姿をしていたとしても、アイドルとして愛されるというわけじゃない。一番大事なのは、人から見たいと思われることだ。つまり、愛嬌なんだ」
    「あいきょう…」

    変なものを食べさせられたような顔で半間は繰り返す。
    稀咲のような冷酷なリアリストが言うとは思えない言葉だった。

    「林田には愛嬌があった。ラップの実力は本物だったし、マイキーと林田ならグループでデビューさせて認知が上がったところで、それぞれソロ活動に切り替えるって方針が使えると思ってたんだ…林田が抜けるなんて言い出したからな…グループよりマイキーをピンで売り出す方がまだマシだと思ってたんだが…それには若すぎるしな…」
    「あー…それで、こいつが…」

    丁度、映像では曲の大サビに入っていて、メインボーカルとして歌い上げる武道を中心にしたフォーメーションが組まれていた。
    東卍はKPOP方式を取っていて、センターとメボ(メインボーカル)が別である。
    センターのマイキーは情報番組などで短くカッティングされた時に使われるキリングパートを担当していて、CMなどで流されるサビの部分は歌唱力に間違いがない武道が歌っていた。
    この撮影の現場にも半間はいたのだが、画面で改めて観る武道は奇妙に人目を惹き付ける吸引力があるように思えて驚く。

    「立ち位置が良いんだ…この顔の角度も良い。全体の形がバランス良く見える」

    稀咲は一時停止をして半間の疑問に答えるように説明した。

    「こいつは、現場にいて自分の立ち位置が俯瞰して見えてる」

    武道が自分で考えてバランスを取っているのなら、それはデビュー前の素人にできることではない。
    確かにダンスは良い線いっていると半間も思ったが、年齢も結構いっているし、稀咲が見初めるほどの男とは思っていなかったのだが、テレビカメラを通して見た武道は不思議な存在感を放っていた。
    それは稀咲の言うような、深夜番組で見せる愛嬌とは違う才能のように思える。

    「フラワーみっち…聞いたことねぇか?」
    「ふらわー…え?は?…なんだそれ?」
    「オレのヒーローだ」

    稀咲は流していた映像を停止するとデスクの引出しから出した面に何の書き込みもない真っ白いDVDをセットする。
    再生されたのは古い舞台映像のようだった。
    主役を演じているのは、まだ小学生くらいの子供だ。

    「フラワーみっち、だ。当時11才以下。都内の有名劇場の最年少座長記録は全部あいつの名前になっている。塗り替えは不可能だろうな」
    「ふらわー…花…垣武道なのか、こいつが?」

    舞台はミュージカルらしく、映像の中から鳥肌が立つような美しいボーイソプラノが響いてくる。
    歌いながら踏むステップも子供とは思えない緻密さで軽快だった。
    小さな顔の中で異形かと思えるほどに大きな目がキラキラ輝いている。
    愛くるしい顔には今の武道にも面影があった。
    星のように輝く大きな瞳。それを邪魔しない小さな鼻が愛らしく、口は大きくて表情の変化が良くわかる。
    そして、この頃から立ち位置が良い。
    いつも絶妙な位置に立っていて舞台のバランスを担っている。

    「老若男女、観る者を引き込む本物の天才だ」
    「…マジかー…そのろうにゃくなんにょに、多分オレは入ってねぇわー…」

    半間は呆れ顔で呟いたが、結論から言うと、入っていた。

    物語はありきたりなお涙頂戴の名作童話だ。
    みっち演じる少年は襲い掛かる悲劇に明るく健気に耐えて、最後はハッピーエンド。
    何の意外性もないストーリーで観たことないのに観たような話だ。何なら全ての台詞が聞いたことがあるような気すらする。
    あまりにも陳腐な良くある話だ。
    しかし、ストーリーなど最早どうでもいい。
    自分の子供時代の辛かった記憶や、あるはずがないと思っていた幼子を守りたいと思う父性や、いとけないものが理不尽な暴力に踏み躙られることに対する怒りが込み上げて来て、どうしようもなく泣けた。
    誰かに作られたフィクションの物語に泣くなんて半間には屈辱的なことだったが、嘘だろ…オレ泣いてんのか…と気付いたとたんに抑えきれずに嗚咽を漏らして号泣していた。
    こんなことあるか?!と何が起こったのか自分でもわからない。
    半間はゴミ溜めのような場所で生まれ育って、ダンスで稀咲に拾われるまでは、この世のあらゆるクソみたいな泥水をすすって生きてきた。
    こんな馬鹿馬鹿しい話に感動するような情緒は持っていない。
    しかし、今、自分の過去を思い出して今更のように可哀想な幼い自分を思っても泣ける。
    泣くことが恥ずかしくはなかった。
    一緒に観ている稀咲も号泣していたからだ。
    半間は自分も泣きながら、頭の片隅の冷静な部分で初見じゃなくても泣けるのかよ…と考える。

    「子供の頃に、フラワーみっちのピーターパンを観に行った。それでオレは、エンタメの頂点に立つことを決意したんだ」

    鼻をかみながら稀咲が言った。
    不良の頂点を目指すよりは、あるあると言える将来の決め方かも知れない。


    深夜のバラエティ番組で気負いがないのは当然だ
    武道にとって深夜番組なんて昔の遊び場のようなものだろう。
    誰も自分を知らないと思っている今の方が自由で気楽なくらいだ。
    武道がテレビの前でネガティブな発言をしないのも、自分に金を払われていることに対して自覚的だからだった。
    例え、どんなにカスみたいな脚本やクソみたいな演出家の舞台だったとしても、チケットを買ってくれた人達に対して役者は本気を出す義務がある。
    払われた金の分だけ働く義務だ。
    視聴率も同じで、どんなに低い視聴率だったとしても、ゼロじゃない限りは見ている人がいるのだ。
    その人達に対して、自分の精一杯を見せる義務がある。
    誰も、卑屈さに支払う時間や金など持っていない。
    謙虚さや謙遜すら必要ないと武道は思っている。
    自信がないのなら、ステージを降りるべきなのだ。
    本当は自信がなかったとしても、それを見せて許してもらおうとするのは甘えだった。
    武道が常に前向きに上を目指していることを示してくれるから、彼のファンも卑下することなく、誰に何と言われようとも自分達の推しは世界一可愛いと言い切って、迷いなく応援することができるのだった。
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