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    なまず

    @namazurinda

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    なまず

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    アイドルパロのみつ武部分導入。

    #みつ武
    #アイドルパロ
    idolParody

    あいどるパロみつ武?「デビュー曲が3週連続オリコン1位になった東京卍會の皆さんでーす!」
    「おはようございまーす!!!」
    「元気ですねー!それでは、さっそくですが、今回のMVの見どころをお願いします!」

    「キリングパートのマイキー!」
    「オレの舌出し」
    「千冬のラップ」
    「場地さんのアクロっすね!」
    「サビのフォーメーションですかねー」
    「タケミっちのソロ!」
    「サビの後に三ツ谷くんがウィンクしてるのがカッコイイんで見てください!!!」

    朝の情報番組でのインタビューで、全員口々に好き勝手なことを言っていたが、一人だけ早口で熱量が違う発言があって一瞬の間が生まれた。

    「してたっけ?」
    「してたか?」
    「してたんだ?」
    「…してたんだよ…気付いてくれてたかー、さすがタケミっち!」

    三ツ谷がパチリと綺麗なウィンクを送って、まともに食らった武道はその場に崩れ落ちた。

    なんだこれ?と三ツ谷は思う。
    何なんだ、これは?とずっと思っている。
    同じグループにゲイがいるということよりも、自分を好きなメンバーがいることの方が問題だと思う。好きという気持ちは自由だが、ちょっとは隠して欲しい。普通に気まずい。
    しかし武道はゲイではない。ファンなだけだと供述している。

    「違うんすよ~!推しってのは恋愛とは違うんです~。普通に好きな子できても、こんなことにはならないと思うんで!推しってのは本当に…違うんですよ!推しがカッコイイだけで興奮するし、推しが生きてるだけで良かった!ってなるし…」
    「生きてるだけで…?」

    さすがに戸惑いの声を上げる三ツ谷に横からドラケンが揶揄うように口を挟んだ。

    「この前、三ツ谷が弁当食ってるところ見て拝んでたもんな」
    「いや違うんです!あれは!…あれは…エビフライ残してるの見て、好きなものは最後に食べるんだなーと思ったら…なんかこう…尊くて…」
    「何も違わねーだろ。普通にキモイわ」

    冷たく切り捨ててくれる一虎の発言が逆にありがたい。
    付き合うつもりもないのに自分を好きな相手に思わせぶりな態度は良くないとは思うが、ファンだと言うのならアイドルたるものファンサくらいしてやるべきだろう。
    普段はパチッと綺麗なウインクができる三ツ谷だが、場地をマネて斜めに流し見るように色っぽくウィンクしてやると、武道は両手で乙女のように口元を抑えて、はわわーとなる。
    本当に「はわわー」と言ってることもある。
    三ツ谷は、はわわーって声に出して言うヤツいるんだ…と最初聞いた時は思ったが、武道からは結構頻繁に聞くので慣れた。
    オーバーなリアクションが面白いので、メンバーにも「ファンサしてやれよ!」と煽られることがある。
    調子にのって投げキッスを送ると、ぐっと胸を押さえて倒れ込んでいた。
    俺も俺も!とマイキーが張り合って武道に向かってウィンクする。
    まだ、慣れていないので上手くできなくて、片目をつむるために力が入って肩が上がる様子が可愛い。
    武道もそれには、かわいいねという穏やかな表情になっていた。
    三ツ谷の時と反応が違うじゃん!とマイキーは拗ねる。
    「三ツ谷にだけ、ずりーじゃん!タケミっち、オレのこと好きになれよ!」
    相変わらず、我儘全開なことを言い出す天真爛漫なマイキーに笑った。
    こんな露骨に好きな態度出されるのは気まずいんだからな!と内心で思いつつも、三ツ谷も多少は面白がっているところがあるのは否めない。
    面白いのもあるが、早く慣れて欲しいという気持ちもあって日常的にファンサしてやっているのだが、武道は一向に慣れる気配がない。
    ウィンクしただけで、毎回生死をさ迷うような反応をされている。
    武道は何も秘密にできないらしく、大きな目は考えていることがすぐに伝わるし、問いかけられるとなんでも正直にゲロってしまう。そこまで正直に話してしまうのかと驚くほど素直だ。10も年上の大人の男とは思えない。
    武道が、何でこんなに自分のファンなのか、実のところ三ツ谷にはわからっていなかった。
    本来、三ツ谷はこういうファンがつくタイプではないのだ。
    夢見がちなガチ恋は多いが、崇拝されるようなカリスマ性みたいなものは、あまりないと自分でも思っている。
    歌もダンスも何でも無難に器用に熟すが特筆するような個性はない。
    他のエキセントリックさのあるアクの強いメンバーに比べると平凡だ。
    ガチ恋の女の子達には、多分そこが良いんだろうと思っている。
    ファッションには関心があって、オシャレにはそこそこ自信があるが、東卍の活動時は今のところ常に特服なので髪色がシルバーパープルなのが珍しいのと眉に入れた剃りに特徴があるくらいだ。
    武道は、最初に現れた時から夢見るようなキラキラした目で三ツ谷を見ていた。
    何でそうなったのか、全くわからない。



    人が集まるところが苦手だった。
    いつも俯いて歩いていた。
    バイト先の店長に言われて、店で使うクリスマス装飾を買うために大型店舗の100均を求めてショッピングモールに行った。
    久しぶりの人混みで消耗し大荷物を運ぶのにも疲れて、喉も乾いたけど店に入る気力もなくて金もないし、見つけた自動販売機で水を買って並んだベンチに腰を下ろした。
    ぐったり項垂れて、床のタイルを見つめていると、いつの間にか目の前のスペースで何かが始まってしまった。
    武道が座ったベンチはイベントスペースの観客席だったのだ。
    寄りにもよって一番前の席に座ってしまっていた。
    振り返って見てみると座っている人は数人しかいない。
    その人達も武道のように休んでいるだけで、ステージを観に来ている人はいないようだった。
    イベントスペースには黒い不良集団がいた。
    白い文字の刺繍が入った今時珍しい黒い特服姿で迫力満点だ。
    ぼんやりと見るともなしに見ていると音楽が鳴り始め、6人のヤンキーは音楽に合わせて踊って歌い始めた。
    アイドルグループだったのか…と武道はようやく気付く。
    こんな聞いている人もいないようなステージでも、楽しそうに踊っていた。
    ちゃんと本気でパフォーマンスしている。
    こういうのは大変だと知っている。
    興味を持たない観客の前で熱意を持ってパフォーマンスを続けるのは集中力を要する。
    思わず口を開けて眺めていると、その中の一人が武道に向かって満面の笑顔で手を差し出してくれた。
    全員片手を前に突き出していて、そういう振り付けだったのはわかる。
    でも、自分に向かって手を差し出してくれた。
    その後も、彼はずっと武道に向かって笑いかけてくれた。
    完全にファンサがロックオンされていた。
    一曲終わると、先程から武道にアピールしてくれた紫色の短髪の少年がマイクを持って挨拶を始める。
    「東京まんじ会」というのが、彼らのグループ名らしい。
    名前まで暴走族みたいだ。
    彼らは今日が初めてのステージのインディーズのアイドルグループなんだそうだ。
    楽しかったと言う笑顔は本物だった。
    観客に見せることよりも自分達がパフォーマンスすることが純粋に楽しいらしい。
    明日も別の場所でイベントに参加するという情報を発信して退場した。

    その会場がたまたま武道の職場の近くで、翌日は早番のシフトで仕事の後に間に合いそうだったので行くことにした。
    地下の会場は、小さな箱で対バンもある。
    客は女の子ばかりなので、後ろの方で控えめに見ていたら、昨日の紫髪の少年が手を振ってくれた。
    自分にだとは、まさか思わないが、こういう場所で目が合ったかも知れないと思うことが想像以上に嬉しいことを武道は初めて知った。
    他にも3つのアイドルグループがパフォーマンスをしていたが、他のグループは武道がイメージしていた通りの、いかにもな地下アイドルだった。
    ダンスや歌に一生懸命なわけではなく、独りよがりでエンタメとして成立していない。ちゃんとしたプロデューサーがついているわけではないのだろう。プロには様々なテクニックがある。素人が自分達の姿を客観的に見るのは難しい。
    そんな中で、「東京卍會」はかなり美意識がしっかりしていて、完成度が高かった。
    CDを購入した武道は、既にグループ名の難しい表記も知っている。オリジナル曲はキャッチーで良い曲だった。また聴きたいなと思ったが、ここでCDを買わないと二度と聴けないんだろうと思って、貧乏なフリーターの武道にとっては大きな金額だったが購入した。
    応援したくなったからというのもある。
    こんな風にエンタメに対して楽しめる自分を武道は新鮮に感じていた。
    CDには握手券というものがついてくる。
    なんとなく、昨日ファンサをしてくれた男の子の列に並んだ。
    彼の名前は、三ツ谷くんと言うらしい。
    周りは女の子ばかりでじろじろ見られて居心地が悪かったが、貧乏なので金を払って貰ったものを無駄にするという発想が武道にはなかった。

    武道を見ると、三ツ谷くんは嬉しそうに笑った。
    「来てくれたんだな!」
    まさか、昨日のことを覚えているのかと驚いたが、昨日の今日である。
    しかも、客と言っても昨日は数人しかいなかったのだから、覚えられていてもおかしくはない。
    「名前は?」
    「…えっと…花垣武道です」
    「武道くん!」
    くん?!
    恐らく、10才ほどは年下の男の子に呼ばれるのは変な感じだったが、そういう文化なのかも知れない。
    友達になったみたいで、なんだかくすぐったかった。
    もうずいぶん長いこと、そんな風に親しげに名前を呼ばれていない。
    「ステージから手を振ったのわかった?」
    いたずらっぽく問いかけられて、武道は目を丸くする。あれは、やっぱり自分に対してだったのかと思うと不覚にも胸がときめいた。
    「来週また、ここでやるんだよ。よかったら来てくれよな!」
    「は…はい!」

    それから武道は、東京卍會、略して東卍のライブに通いつめることになった。

    毎回ファンは増えていく。
    三ツ谷は神対応と有名で、親しげな笑顔も優しい言葉も武道にだけではないのだろう。
    毎回、一枚しか購入していない武道のことを、三ツ谷はもうあまり認知もしていないと思う。
    名前も多分、忘れられている。
    武道自身もたくさんいたファンのことは誰一人覚えていないので、そんなものだと思っていた。
    それでも良かった。
    どんどん人気になり、どんどん洗練されていく彼らを応援したい。
    いつも楽しそうにパフォーマンスしている彼らを、ずっと観ていたい。

    東卍はYouTubeチャンネルを持っていて、武道は初めてまともにYouTubeの動画を見た。
    昔、エンタメの頂点にいた武道は、承認欲求もあまりなく、自分が見つかることも恐れていたので、SNSにはほとんど興味を持っていなかった。
    東卍を応援するようになって、ファン活動としてのSNSを知り、その楽しさを理解した。
    お金はそんなにないが、なんとかもっと応援したいと思った。
    それで、昔取った杵柄で踊ってみた動画を投稿してみることにした。
    バズることを狙ったと言うよりも、数が多い方が言いということがわかってきていたので、枯れ木も山の賑わいくらいの気持ちだった。
    久しぶりに踊ろうとすると思うように身体が動かない。
    店の倉庫でこっそり練習した。
    武道の場合は基礎ができているので勘を取り戻すのは早かった。
    体力がないので後半は失速する。
    短い動画にすることも考えたが、せっかく良い楽曲なんで全部見てもらいたいという気持ちから最後まで踊りきった。
    短い動画の方が見られやすいということを武道は知らなかった。
    「長い!」「え?まだ続くの?」「二番もあるのかよ!」「やりきりやがった…」
    最初は部屋の汚さや本人のダサさに注目が集まったが、視ている内にダンスのキレの良さに気付き、更には終わらない長さが感嘆されると同時に笑いに繋がる。
    続けて出た、歌ってみたの動画はシンプルに歌の上手さが話題になった。
    歌い終わった後に照れたように笑ってカメラに向かって手が伸びて来て映像が切れるというシンプルな構成もエモさがある。
    ダサくてイケてないのに割と顔が可愛いというのも男女ともにネットのオタクに受ける要因だった。



    可愛い子がいるなと思った。
    好みのタイプだった。
    ほっそりとしていてひ弱そうで、ちょっと暗い。
    顔立ちは可愛くて目が大きい。
    好みの顔だ。
    思い切りサービスした。

    三ツ谷は物心ついた頃には自分がゲイだという自覚があった。
    母子家庭で幼い二人の妹の面倒をなくてはいけないという環境が女への性的な関心を薄れさせ、男への憧れを増大させたのかも知れない。
    それとも単純に女系家族に囲まれて同化して男性を性的な対象にするようになったのか。
    苦労をかけた母親には知られたくなかったし、妹達にも気付かれないよつに気をつけていたが、いつか大人になったら新宿二丁目みたいな場所に行って、同じような性的嗜好を持つ相手を見つけるのかも知れないと夢想した。
    三ツ谷の好みは、教室の隅でおとなしくしているような男子生徒で、自分が面倒を見てやらないとと思えるようなひ弱そうな少年だった。
    とにかく、自分が助けてやらないとと思わせられる相手に弱い。
    そういう意味で、いつも一緒に遊んでいるメンバーは誰一人好みではなく、心の平安は保たれていた。
    三ツ谷は自分の性的嗜好に関しては注意深く隠していたので、好みのタイプの少年には近付かなかった。

    しかし、ステージの上では隠さなくて良いのだ。
    どれだけアピールしても、アイドルなら許される。
    好みのタイプの可愛い子にファンサしてたら見てくれた。
    しかも次の接触イベントに来てくれた。
    丁寧に対応しようと思った。
    ファンの子は、見てくれる。応えてくれる。
    ファンサの神と呼ばれる三ツ谷は、こうして生まれたのだった。



    アイドルとしてならば、どれだけファンサしても許される。
    いつも、からかわれると武道はそういう意味じゃないと慌てる。
    そういう意味じゃないのかよ、と三ツ谷は思う。
    そういう意味であって欲しかった。
    自分が必至で気持ちを押し隠しているのに、うっとりした目で見つめられるのである。
    それなのに、そういう意味ではないのだ。

    三ツ谷の情緒はぐちゃぐちゃに乱れた。




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