ネロが冬の国に来て何度目かの春。年中雪に覆われている冬の国には、ほんのわずかな間だけ訪れる春がある。
しかし、もう長いことそんな短い春すら訪れないほどひどい寒波に襲われていた冬の国は、ブラッドリーの元に春の国からネロが嫁いで来て以来毎年きちんと春が訪れている。
国民は「春の女神の奇跡」と呼んでネロのことを崇めているのだが、本人にはそんな自覚はなく、今でも「ただの偶然」と思っている。
今年の春も問題なく訪れた。数日前にネロ達が住む城の周りの雪も融け、今日はとてもいい天気だ。
こんな日はバスケットに料理を詰め込んで陽の当たる草原でのんびりピクニックでもしたい気分だ。
春の国にいた頃なら、城中総出を上げてピクニックに出掛けただろう。
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