事故チューから始まる急ブレーキがかかりふわと足が床から浮く。
うわっと思ったところで同じように体勢を崩した男が背中からぶつかってきた。
ぎゅうぎゅうに詰まっていたからつり革もない場所でどうにか踏ん張っていられただけで、今の急ブレーキで微妙に隙間が空いた車内では押されたらひとたまりもない。
まずい。
踏ん張り切れない身体が重力にひかれるままに床へと向かう。
こういうときなんとなくスローモーションになるような気がするのはどうしてだろう。
走馬灯っていうやつか?ああでもあれは死ぬ時だな。
なんて馬鹿なことをぼんやり考えている俺の前に一筋の蜘蛛の糸のように、掌が伸ばされる。
とっさに掴んだけれど、もうその時俺の身体はほぼ床と並行に近い状態で、つまりは手を掴んだ男を巻き添えにしながら俺は倒れるしかなかった。
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