僕とふしぎな猫のはなし あるところに、一人の若者がおりました。
若者は家族と共に幸せに過ごしておりましたが、両親も、兄弟も、皆若くしてこの世を去ってしまうと、彼は古めかしい家で一人きり、寂しく日々を送ることとなったのです。
ところがある時、彼の前に一匹のお客様が現れます。
これより語られるは、そんな至極奇妙で不可思議な、出逢いの物語。
果たして若者が幸せを掴むことができたのか否か、どうか貴方の目で確かめてくださいますよう──。
寂しくないと言えば、嘘になる。僕は家族と一緒に過ごしたこの家が大好きで、すっかり古くなってしまった今でもここを離れる気はないけれど、それでも寂しさを覚える日は多い。僕を一人残して旅立ってしまった家族たちの部屋は今も当時のままになっていて、僕もその頃の思い出を失うことのないよう、時折彼らの部屋を訪れては懐かしい気持ちに浸った後、必ずと言っていいほど僕の心は寂しさで塗り潰されるのだった。
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