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    れんこん

    @goma_hlos

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    れんこん

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    第6回ベスティワンドロ用
    お題「手料理」
    アカデミー捏造のフェイビリです。

    #フェイビリ
    phobility

    窓からカーテン越しに差し込む光が、もう夜が明けてしまったのだと伝えてくる。
    朝といっても、もうきっと世の中の一般の人達は遅いと言う時間だろう。ほんの少しだけ重い瞼を持ち上げて、日差しの差し込み加減から勝手に時間を判断すると、ゆっくりと伸びをした。
    ……あぁ、お腹空いた。

    ほんの少しだけ腰に軋むような痛みがあるけれど、きっと普通に過ごしていたら忘れてしまう。
    ゆっくりとベッドから降りて、ベッドサイドにきちんと畳んでおいた下着を身につけて。
    今日はホリデー。制服に着替える必要も無いから、適当な服で良いかな。
    緩めのパーカを選んで袖を通し、あくびをしながら部屋にひとつだけ付いている洗面台へ。
    いつもみたいに顔を洗ってから歯磨きをして。
    それからベッドサイドに置かれていたゴーグルを取っていつものように隙間なくきっちりとつける。ゴムで締め付けられて変な形になった髪の毛を、鏡を見ながら整えて。最後に馴染みの黒い手袋……これは洗濯したての新しいやつを出してきて身につける。
    これでいつものオイラの完成。

    ベッドのゴミ箱に捨てられている様々な痕跡は、同室の子が帰ってくる前に、忘れる前に処分しなくちゃ。夜のことを思い出させるそれを包み隠すみたいに袋を縛って、それを持って部屋を出る。
    寮の共用スペースにはゴミ箱があるので、そこの奥の方に突っ込んで……これで良いかな。

    くぅ、

    とそこでまた鳴るお腹。

    ちょうど共用スペースに来たのだから、簡単なものを作って食べてしまおう。
    昨夜は結構激しく運動したものだから、こうもぺこぺこにお腹が空いちゃったんだ。
    せっかくつけたばかりの手袋を外してシンクの戸棚の取っ手に引っ掛けて。
    怠い身体のままでも料理するには特に問題ない。
    共用の冷蔵庫には誰が持ち込んだのかわからない食材が沢山入っているけれど、元々頻繁に料理する自分の買ってきた物も多いので、消費期限が切れそうなものから早めに消費していく。
    ……たまに物珍しい人の食べ物があったらちょこっと拝借しちゃうコトもあるけれど。
    今日はホリデー……一般の生徒は案外実家に帰ってしまう事が多い。だから、この共用スペースも今は誰の気配もない。食材も使いたい放題だ。

    適当に余っていた野菜やお肉や卵なんかを適当に炒めたものを作って、そこにどこの出身の生徒のものかわからないけど、ライスを投入。適当に調味料を入れて炒めると、それなりに美味しそうなごはんが出来上がった。『炒飯』ていうのにちょっと似ているカモ。
    お腹がぺこぺこだったので、スペース内のテーブルでとりあえずひとりでぱくぱくと作ったごはんをかきこんだ。我ながらなかなかに上手に出来た。今度から、ちょっとだけライスを使った料理にも手を出してみようか。そしたらグリーンイーストのチャイニーズタウンやリトルトーキョーなんかで働けたりするかもしれないし。

    お腹が満たされて、すぐに後片付けをしながらひとつ思いつく。
    ……あぁ、あの子もお腹が空いているカモ。

    まだ部屋で眠っているであろう親友の顔を思い出して、よし、とひとつ頷いた。
    冷蔵庫を確認すると、先程ひとつ使った卵を除いて残りは3つ。いいや、全部使っちゃおう。
    ボウルに卵を割り入れて、牛乳と塩と黒胡椒を混ぜる。きっと、朝起きてすぐにもりもりと食べるタイプでもないから、具は特に無しのプレーンで良いかな。
    温めたフライパンにバターを落として溶かしたところに、先程混ぜておいた卵を一気に投入。
    少しだけかき混ぜてから火を通して、少し固まってきたら端にちょっとずつ寄せていく。
    慣れたようにとんとんとフライパンを持ち手を数度叩くと、黄色のふんわりとした塊が綺麗に丸まって三日月型を作る。
    固まりすぎないように手早く器に移して、そこにわざとらしくケチャップでハートを形作る。
    これはほんのちょっとのサービス。きっと面白い反応をしてくれるだろう。


    ほっこりと温かいお皿を手に乗せて元の自室に戻ると……まだベッドの上にはこんもりと大きな塊があって、そこからほんの少しはみだした黒髪が穏やかな呼吸と共に揺れる。
    元々夜遊びばかりしているというのもあって、この親友は朝が弱い。
    そっと近付くと、きれいに揃った長い睫毛がその甘やかな瞳を覆って影を作っていて。ちらりと見える首元は白く、でもふんだんに何かフェロモンのようなものでも放っているのか、妙に男性的な色気がある。顔は子供みたいに無防備なのに、プロポーションはしっかりしていて、いつもよりもあどけなくもセクシーな寝姿に、あぁこれはシャッターチャンス……とも思ったけれど、今はオムレツで手が塞がっているので諦めた。

    「DJ〜、起きて起きて、お腹空いたでしょ?」
    「んん……、」

    その形の良い鼻先にわざとオムレツのお皿を近づけると、綺麗な眉間にわずかにシワが寄る。
    あ、ちょっとカワイイかも、なんて思って眺めていたら、毛布に半分埋もれていた顔がにじにじと出てきて、「あ、」と口が空いた。

    「おなか、すいてたんだ……。」
    「んっふふ♡そうだと思って作ってきたんだヨ〜♪」

    どうやら寝ぼけているらしい。
    まだ瞳は閉じられたままで、雛鳥が餌を求めるみたいに可愛らしく開けられた口。
    ……もしかして、食べさせてってコト?
    仕方ないなぁと言いつつも、気分はノリノリ。こんなのスッゴク面白いし、覚醒した時にでも揶揄ってあげよう。

    「はいっ、DJあ〜ん♡」
    「ん、」

    ほこほこのオムレツをスプーンで少しだけ救ってその可愛らしい口元に運ぶと、素直にもぐもぐと咀嚼する。ごくん、と飲み込んだら、もっとと強請られて、もうひと匙すくって食べさせる。
    まるで子供に食べさせているみたいで、ベビーシッターをしていた時のことを思い出してしまう。
    普段は同室の子をおチビちゃんと揶揄っているくせに。
    そして、スプーンの往復を数度繰り返したら、ようやくそのずっと伏せられていた長い睫毛が重たそうにゆっくり持ち上げられた。

    「……あ…、ビリーじゃん、おはよ…。」
    「グッモーニンDJ♪お味はいかが?」

    艶やかなマゼンタの瞳が、こちらを確認するように見据えてくる。その口ぶりからすると、きっと俺っちのことを数多の彼女のうちの誰かだと勘違いしてたのカナ?
    素直に甘えただった姿に納得がいって、なかなか面白いベスティについ意地悪な笑みが溢れてしまう。

    「……あれ…?これビリーが作ったの?ていうか、作れるんだ。」
    「YES!ベスティ♡特製仕様だヨ♡」
    「うわ……さすがにちょっと悪趣味じゃない?」
    「えーっ、可愛いデショ?」

    オムレツの上のハートを見て、げんなりした顔をしてみせるDJ。きっと彼女達の前では思ってもそういう面はあまり見せないだろう。なんだかんだで、優しい男なのだ。見えないところでは結構適当だけれど。
    悪趣味と吐き捨てたものの、アートが上手だと褒めてくれるのもいつものDJらしい。
    俺っちが持つスプーンを奪い取ろうとその手が動いたのでわざと背中に隠してやると、DJは呆れたように溜息をつく。

    「んっふふ♡最後までボクちんが食べさせてあげちゃう!特別大サービスだヨ♡」
    「うげ……。さすがに男同士だと絵面がちょっとキツくない?」
    「そんなことナイナイ!っていうかもうこれだけ食べちゃってるんだから今更じゃナイ?」
    「アハ……、まぁそうかもね。」

    まだ朝の微睡にまだ浸かってるからか、なんとなく雰囲気も緩くて甘い。簡単に流されてくれて、また強請るように口を開けた。
    ひと匙口元に運ぶと、ぱくりと咀嚼した後にわざとらしく舌で、女の子達を虜にする唇を舐めて見せる。あ、何か悪戯を思いついた顔をしている。
    スプーンを持つ手を引かれて、いま湿らせたばかりのその唇を重ねられる。
    ほんのりとオムレツのふんわりした味のキスは、普段から甘いものを好む自分達の中では珍しい方。ショコラ味でもない、キャンディやガムの味でもない、砂糖の甘さを感じないキス。
    なんだかんだ、昨夜の戯れの空気に引き摺られているらしい。何も纏わない腕が伸びてきて、掌を後頭部に添えられる。朝にはちょっと不似合いな夜向きのキスをしてから、お互いの瞳の奥を探るようにして離れる。こっちにはゴーグルがあるだけ、少し上手だ。

    「……いつ、帰ってくるのかな、キミの同室相手。」
    「ン〜。多分電車の時刻から推測するに夕方くらいカナ?もしくはもう少し遅くなるかも。多分早まる事は無いんじゃないかな〜?」
    「そ、ならもう少し寝てられるね。」
    「ンフ、それってど〜ゆ〜イミ?」

    そのまんまだよ、なんて言いながらベッドようやくベッドからもぞもぞと上半身を起こして目を擦る。一糸纏わぬ姿がカーテン越しの日差しに照らされ、身体の凹凸がさらに強調されて、まるでなにかの雑誌の一場面かのよう。ふわぁ、と盛大にあくびをしただけでもなんとなく絵になるのはイケメンの特権だ。

    「今日はトクベツにお着替えのサービスまでつけようか?着替えはオイラのパーカーくらいしかないけどネ。」
    「いや、…いいよ。もう少しこうしてたいから。ダメ?」
    「ん〜ん、イイけど、珍しいネ〜。甘えん坊DJ♡アイタッ!?」

    茶化すみたいにスプーンで一瞬その唇を突くと、反撃とばかりにおでこに指を弾かれて撃退された。やたらと普段から機嫌がいい時は鼻歌混じりで指を鳴らす癖のあるDJのデコピンは強力で、おでこがじんじんと痛む。

    「うぇえ〜ん!DJがいぢめる〜!!」
    「あ、赤くなってるかも。」
    「えっ、ホント!?も〜、手加減してよベスティ!」
    「ベスティ、ねぇ。どうせサービスとか言いながらまた対価として情報とか持っていくつもりだったでしょ?」
    「ウ〜ン、ちょっと惜しい!今の姿を激写させて貰いたかったんだよネ〜!すっごい高値で売れそ、っうわ、なに、」

    オムレツのお皿を取り上げられてベッドサイドのテーブルに置かれ、ベッドの中に引き摺り込まれる。まだじんじんと痛むおでこを指がするりと撫でてから、そのままゴーグルを引っ剥がされた。

    「……あぁ…、やっぱり、赤くなってる。今日は夕方までホントに寝ちゃうつもりだったけど、気が変わったよ。たっぷり治療してあげるね。」
    「あっは……、DJ元気だネ?」
    「お腹いっぱいになったからね。」

    赤いと言われた箇所に舌が這わされて、それを合図にまた、夜ぶりに肌と肌を触れ合わせた。
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    DONE第12回ベスティ♡ワンドロ、ワンライ用
    フェイビリ/ビリフェイ
    ほんのりシリアス風味
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    今日は見慣れない明るく所々にリボンがついた装束に身を包み、機嫌が良さそうに馴染まないタワーの廊下を跳ねていた。
    眩しいオレンジ頭に、ピンと立ったうさ耳はまだいいが、衣装に合わせたのか謎にピンク色に煌めくゴーグルはそのかわいらしさには若干不似合いのように思えた。胡散臭い。そういう表現がぴったりの装いだ。

    「……イースターリーグはもう終わったよね?」

    後ろから声をかけると、ふりふりと歩くたびに揺れるちまっとした尻尾が止まって、浮かれた様子のエンターテイナーはくるりと大袈裟に回って、ブーツのかかとをちょこんと床に打ち付けて見せた。

    「ハローベスティ♡なになに、どこかに用事?」
    「それはこっちの台詞。……そんな格好してどこに行くの?もうその頭の上のやつはあまり見たくないんだけど。」
    「HAHAHA〜♪しっかりオイラもDJのうさ耳つけて戦う姿バッチリ♡抑えさせてもらったヨ〜♪ノリノリうさ耳DJビームス♡」

    おかげで懐があったかい、なんて失言をして、おっと!とわざとらしく口元を抑えて見せる姿は若干腹立たしい。……まぁ今更だからもうわ 3591

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