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    れんこん

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    れんこん

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    第12回ベスティ♡ワンドロ、ワンライ用
    フェイビリ/ビリフェイ
    ほんのりシリアス風味

    #フェイビリ
    phobility
    #ビリフェイ
    bilifay

    目の前にひょこひょこと動く、先日見かけた忌々しいうさ耳。
    今日は見慣れない明るく所々にリボンがついた装束に身を包み、機嫌が良さそうに馴染まないタワーの廊下を跳ねていた。
    眩しいオレンジ頭に、ピンと立ったうさ耳はまだいいが、衣装に合わせたのか謎にピンク色に煌めくゴーグルはそのかわいらしさには若干不似合いのように思えた。胡散臭い。そういう表現がぴったりの装いだ。

    「……イースターリーグはもう終わったよね?」

    後ろから声をかけると、ふりふりと歩くたびに揺れるちまっとした尻尾が止まって、浮かれた様子のエンターテイナーはくるりと大袈裟に回って、ブーツのかかとをちょこんと床に打ち付けて見せた。

    「ハローベスティ♡なになに、どこかに用事?」
    「それはこっちの台詞。……そんな格好してどこに行くの?もうその頭の上のやつはあまり見たくないんだけど。」
    「HAHAHA〜♪しっかりオイラもDJのうさ耳つけて戦う姿バッチリ♡抑えさせてもらったヨ〜♪ノリノリうさ耳DJビームス♡」

    おかげで懐があったかい、なんて失言をして、おっと!とわざとらしく口元を抑えて見せる姿は若干腹立たしい。……まぁ今更だからもうわざわざ掘り返しはしないけれど。
    ……先日、ディノの提案で持ち込まれたうさ耳をウエストの全員でつけてイースターリーグに出場した思い出は記憶に新しい。
    変に恥ずかしがるのも情けないと思って、当然みたいにその格好でパフォーマンスみたいに戦ってみたりはしたけれど、後からその写真があちこちに出回っているのは素直にうんざりした。
    やっぱり、キャラじゃない。

    そして気になるのは目の前のオレンジ頭のことで。彼のセクターはうさ耳断固拒否をしたアッシュが居たから、イースターにしては少し渋めの色合いの衣装で、グリーンイーストにあるリトルトーキョーの雰囲気にあわせたのだと、少し珍しい和服のような様相だった。元々他のセクターよりも年齢層も上だからなのか、相変わらず胡散臭いゴーグルをつけたままのビリー以外は良く似合っていたのを記憶している。
    間違っても今みたいに短い丈のパンツでもなかったし、それにあわせた縞のぴったりしたソックスなんて格好ではなかった。

    「ンッフフ、これはネ、明日から特別にボクちんに個人的に頼まれたお仕事の衣装!テーマパークのパフォーマーが怪我して入院になっちゃってネ。情報屋のお得意様からお声をいただいたの♡」
    「ふぅん。」
    「その子はすっごく小柄な女の子だからさすがに俺っちの身体には衣装が合わなくってさ〜?だからHELIOSの衣装部から似たやつを借りてきちゃった♪さっきこの格好で司令に会ったんだけど、『かわいいね』って言ってもらえたヨ♡どう?俺っちかわいい?」

    小首をかしげてわざとらしくポーズを取るのは様になっているけれど、やっぱりその顔の中心のゴーグルが変わらないから、俺からしてみたら特に何も変わらない。

    「かわいいとか以前にそのゴーグルがアンバランスじゃない?」
    「これはオイラのトレードマークだからネ♡」

    それよりも、ウエストの衣装も可愛かったよね、なんて誤魔化すみたいに話を流されるのはいつもの事だ。立ち話もなんだからとなんとなくいつもの談話室のソファに座って、妙ちくりんな格好のビリーといつもの雑談の姿勢に入る。
    ……まぁちょうど話し相手でも探してたしちょうどいいかな。なんだかだかんだ、いつもタイミングが良い。今日はデートにうさ耳をつけてきて♡なんていうさすがに馬鹿げたお願いを複数の彼女が言い出すものだから、辟易して逃げてきたところだった。ウエストのセクターに戻っても、まだうさ耳衣装の名残がその辺の複雑な形の写真立てに飾ってあるし……。
    ……その逃げた先でまたうさ耳に会うのはうんざりしてしまったけれど。

    「DJ、スマホずっと鳴ってるケド?」
    「……あぁ。さすがにウザいから電源切ろうかな。」
    「また依頼してくれたら俺っちが面倒事解決してあげるヨ?」
    「ん〜……、あ、そうだ。」
    「エ、なになに?」

    震えるスマホの画面を強制的に終了させて、カメラを起動する。それからきょとんとしてみせるビリーに向けてシャッターを切った。
    画面にはうさ耳の変なオレンジ頭が映っていて、そのゴーグルにはスマホを構えた自分の顔が反射して少しだけ映っている。
    それをなるべく手早くエリチャンにアップロードすると、ビリーはすぐ自分のスマホを覗いてナルホド、と溢した。

    『うさ耳はビリーにあげちゃった』
    と一言添えてアップロードした写真に次々と通知が飛んできて、そのままスマホの電源をOFFにした。

    「……とりあえずこれでもう、うさ耳の強要はされないかな。」
    「ちぇ〜、ボクちんに依頼してくれても良かったのにぃ!……あっ!でもでも、その写真の使用料くれてもイイヨ♡」
    「いつも俺の写真で儲けてるんだからおあいこでしょ?」
    「ムゥ……。」

    ビリーはつまらなそうにうさ耳を弄ってみせる。
    でも、すぐにその尖らせた口はいつもの雑談に花を咲かせてくる。

    「DJはさぁ、うさ耳カワイイ♡てならないの?」
    「……え?それは女の子がつけたらってこと?」
    「そんなこと一言も言ってないけど、まぁそれでイイよ!」
    「別に似合ってるならいいんじゃない?まぁ今はしばらく勘弁して欲しいけどね。かわいいって言うならまだしも言われ続けるのもなんとなく辟易するし。」
    「え〜、DJあんまり可愛いって言われるの好きじゃないんだ。」

    意外だネ!なんて言いながらビリーは興味深げにこちらに身体を乗り出してきた。
    ふわふわした飾りのついた首のチョーカーの鈴がリンと鳴る。

    「……別にそういうのでもないけど。でも、男にかわいいなんて言う時ってどちらかというと揶揄う感じでしょ?アハ、俺もたまにおチビちゃんとか歳下の子にわざと可愛いねとか言っちゃうけど。」
    「フムゥ、ナルホドね。確かにオイラも稲妻ベイビーは可愛がっちゃうから気持ちわかるカモ!」
    「アハ、珍しく気があったね。」
    「さっすがベスティ♡」

    2人でひとしきり笑った後、ビリーは悪戯に八重歯を見せながら揶揄うようにこちらを向く。

    「DJもカワイイヨ♡」
    「辟易、て言ったのに。」
    「ンッフフ。まぁ〜、オイラはDJと違うけど、わかるヨ。カワイイなんてさ、言う方は無責任に言えちゃうモンね。」
    「……?」
    「カワイイのと可愛がるのとって、ベツモノだよネ。」

    いくら可愛くたって、捨てられた子猫を飼えるひとは限られてるよね、なんてよくわからないけど無関係でもなさそうなことを並べてビリーは遠くを見るように顔を背けた。
    なんとなくざらりとしたものを感じてその明るい馬鹿げた格好とは相反する雰囲気を纏った背中に向けて声を掛ける。

    「……ビリーは、かわいくないよ。」
    「……えぇ、ヒド〜イ!?」
    「いつもお金お金って足元見てて、可愛くはないでしょ。」

    一瞬キョトンとしたように見えたけれど、その似つかわしくなく引き結ばれた口角が一気に上がって、いつもの調子のビリーに戻った。
    かわいくないなんて言われて、嬉しそうにするなんて、それはそれで変だけれど。
    さすがベスティ♡とまた溢して、ビリーはそのへんてこなゴーグルをぱちんとおでこにまで上げて、頑なに見せなかった大きな大きな目を晒した。

    「……これでも?」
    「……。」

    まるで猫のようにに大きくて人懐っこい愛らしい瞳が、こちらをまっすぐに貫いてくる。
    普段からばっちりとメイクを施す女の子よりももっと分厚く長い睫毛がその縁を彩って、深い色のブルーがきらりと光った。
    先程の怪しさと180度違う、子供みたいなあどけなく純粋な面持ちに、わざと顔を背けて見せた。

    「……さぁね。」

    手持ち無沙汰にスマホの電源を再び入れると、俺の投稿にも関わらず、いろんな人からのビリーへの可愛いという言葉が連なった通知が届いていて溜息をついた。

    「……DJはそういうトコがカワイイよネ。」

    蒼が近づいてきたかと思うと、ちゅ、と小さく音が鳴って、鼻先に柔らかいものが一瞬触れた。
    そのまま、それを就寝の挨拶を兼ねているかのように、おやすみと一言残して、賑やかな格好のうさぎは去っていく。丁寧にゴーグルを戻すのは忘れない。

    残された談話室でひとり、いや、相変わらず鳴り続けるスマホとふたりぼっち。

    「……かわいがられるのが苦手なくせに、ね。」

    まるで自分のことみたいにつぶやいて、自分のことでもあるんだったとつい笑う。なるほど、だから俺たちは「ベスティ」なんだ。あんまり認めたくはないけれど。
    鼻をすんと鳴らしたら、ほんのりとキャンディのかわいらしい香りがした。



    お題「かわいい」「うさ耳」
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    今日は見慣れない明るく所々にリボンがついた装束に身を包み、機嫌が良さそうに馴染まないタワーの廊下を跳ねていた。
    眩しいオレンジ頭に、ピンと立ったうさ耳はまだいいが、衣装に合わせたのか謎にピンク色に煌めくゴーグルはそのかわいらしさには若干不似合いのように思えた。胡散臭い。そういう表現がぴったりの装いだ。

    「……イースターリーグはもう終わったよね?」

    後ろから声をかけると、ふりふりと歩くたびに揺れるちまっとした尻尾が止まって、浮かれた様子のエンターテイナーはくるりと大袈裟に回って、ブーツのかかとをちょこんと床に打ち付けて見せた。

    「ハローベスティ♡なになに、どこかに用事?」
    「それはこっちの台詞。……そんな格好してどこに行くの?もうその頭の上のやつはあまり見たくないんだけど。」
    「HAHAHA〜♪しっかりオイラもDJのうさ耳つけて戦う姿バッチリ♡抑えさせてもらったヨ〜♪ノリノリうさ耳DJビームス♡」

    おかげで懐があったかい、なんて失言をして、おっと!とわざとらしく口元を抑えて見せる姿は若干腹立たしい。……まぁ今更だからもうわ 3591