Recent Search
    Create an account to secretly follow the author.
    Sign Up, Sign In

    れんこん

    @goma_hlos

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 30

    れんこん

    ☆quiet follow

    第14回ベスティ♡ワンドロ用
    お題「契約」
    フェイビリ風味です

    #フェイビリ
    phobility
    #ベスティ
    besty

    こ難しく短い眉を寄せたり、緩く特徴的なカーブを描く唇に当てられた手袋越しの指がトントンとそこを叩いて、何かに悩むような考えてるような素振り。スマホを何度かスクロールして、なにかを見つけたのか、寄せられていた眉が緩んで、口角も緩んだ。
    同じような光景は今まで視界の隅で何度も見てきたような気がするけれど、改めてその様子をまじまじと見つめると、なるほど、ゴーグルをして謎めいてわからない印象を抱いていたけれど、案外その表情も、醸し出す空気すら、わりと豊か。

    「ふ〜……、って、なぁにDJ〜〜!?こないだからオイラの顔見過ぎじゃな〜い?……さては〜、今更俺っちに惚れちゃった!?」
    「まさか。……アハ、もしそうだったらどうするの。」
    「エ〜!?絶世のイケメンに言われちゃ考えちゃうナ〜♡」
    「はいはいっと。せめてゴーグル外してから言ったら?」
    「ンッフッフ、ゴーグルの下はベスティ♡にはトクベツ価格でご案内シマース♡」
    「……アハ。」

    ビリーは、変わった。
    今見ていたのもただただ金を巻き上げるためだけの情報でなく、誰かを喜ばせる為の下調べ。おおよそ……、前話していたジェイの子供のことだろうか。謎の胡散臭い空気感がほんの少しだけふわりと優しく感じるのは、ビリーが何かやらかした時にきっとイーストセクターの面々といろいろあったからなんだろう。風の噂で聞いた程度だけれど、あれからのビリーは前よりも他への警戒心みたいなものが少しだけ緩んだ気がする。
    本人も以前にもまして自分のセクターの事を楽しそうに語るようになって、そのほんの些細な変化におや、となった。
    ……それでも自分達の会話は変わらなくて。
    今だってその大好きになったイーストセクターから離れてわざわざ俺の部屋まで遊びに来ている。

    「良い子になったんじゃなかったの?」
    「NO NO!違う違う!言ったでしょ?元から良い子なの!」
    「……なのにまだ俺から金を巻き上げるつもり?」
    「ムゥ、だってDJも最近俺っちにお仕事頼んでくれないでしょ?オイラも商売あがったりダナ〜?」
    「どうかな。まだ俺の情報売ったりしてるじゃん。」
    「エッヘヘ……。でも売る内容もキチンと厳選してマス♡」
    「どーだか……。」

    「信じてよぉ!」なんて言いながらベッドに寝転がっていたビリーが起き上がって後ろから飛びついてくる。その顔には先程金を取ると言ったゴーグルが乗っかっていて、相変わらず距離が近いのか遠いのか。そして、いつものキャンディのフルーティな香りにほんのりと混じるのは、ドーナツだかケーキだかの香ばしい香り。……いつもなら適当にあしらうその絡みだけれど、今日は何となく悪戯心が疼いた。

    「おわ!?」

    後ろから自分の腰に回された手を掴んでそのままベッドに引き倒す。油断していたのもあって、ビリーは簡単にひっくり返されて、口をぽかんと開けていた。まるで悪い狼みたいにその上から逃げられないように覆い被さって、いつもの胡散臭いゴーグルのゴムのふちに手をかける。
    なになにと騒いで暫くじたばたしていたのに、それにはビリーがはっとしたように、体の動きをぴたりと止めた。……相変わらず察しが良いよね、「情報屋」だから当然か。

    「……契約はもう満期なんじゃない?」

    俺も、キミもさ。
    都合が良いとドライに包んだはずのこの契約が、どんどんそのメッキが剥がれてしまっている。
    わからないと言いながら差し出されたそれの中身を言葉にするには、少し俺たちには気恥ずかしすぎる。

    「そう?オレ的にはあんまり変わんないけどナ」
    「……まぁ俺もそんなにピンと来てはいないんだけどさ」
    「『都合が良い』モノなのは変わんないヨ」
    「まぁ……、そうかもね。」

    初めの頃はアカデミーの中でも、ずっと連んでいるわけでも無かったし、抜け出した先で出会ったらそこそこに遊んだりする距離感で。
    未だにビリーのことはよく知らない。家族も、その昔のことも。ビリーが語るビリーの事は。
    自分だってそうで、考えている事をビリーにわざわざ伝えもしない。……する必要がない、だいたいビリーは言わなくて良いと思っている。
    それこそがわざと作った距離感で、だからこそ心地よく過ごせている、そう感じていたけれど。
    ここ最近の自分たちはどうだ。
    互いの部屋になんの抵抗もなく行き来して、お互いのスペースに入って、物も持ち込んだりして。
    少しくらいそこに侵入しても許されるとお互いが信じてしまっている。……これって、外から見ると契約違反。もはや、戯れるようにドライに作った利害に振った関係すら、お互いの環境と心境の変化でかつてよりうまく機能しなくなってきて。
    ……でも、ビリーと俺の中ではずっと生きている。無遠慮に暴くつもりは、さらさら無い。
    フェイントとばかりに指をひっかけたゴムから手を離して、代わりに行き場をなくなった手でビリーの髪を触った。

    「DJはそういうの、言葉にしないほうが好きでしょ?」
    「アハ……そうだね。元々得意じゃないよ。」

    ビリーは、俺のことを何も知らないけど知っている。それは俺の方も。
    ビリーと居る空間の心地良さは、会話は、結局ビリーとでしか作れない。……正直、それを認めて口に出すのは癪だから、それを見越したビリーの発言に甘えて閉じ込めておくけれど。
    最近はそれすら少しずつ変えていってることすら、ビリーにはわかっているんだろう。
    ……ここの段になってお互いようやくこの関係の価値に気付いても、やっぱりそこには触れないのが「らしい」
    もっと気楽でいいじゃん。take it easy.
    多分ビリーもそう言うだろう。
    他人に羨まれていた事実にほんの少しだけの違和感と、同時に優越感も混じっていたのには自分でも少し笑いそうになっちゃった。
    言葉にしないと壊れるものが沢山あって。
    でも、言葉にしないことで保っているものだってある。それが全て変わる必要は無いよね。
    価値は、俺たちで決める。

    「……満期にしてもイイよ。」
    「へぇ、」

    先程と違った優しく密やかなトーンで語られた言葉に意外性を覚えて、そのまま髪を弄っていた手で頬を撫でた。久々にそのひとの温度に触れた気がして、指が肌に馴染むのに安堵を覚える。
    すると、ビリーが真似をして俺の頬に掌を添えてきた。黒手袋越しでも、少し冷えたビリーの手の冷たさが頬に伝わる。

    「いままでたっぷり貯めてた保険金、全額返済しちゃう。」
    「……契約更新は無し?」
    「DJがお望みならどちらでも?オレはどっちでも損しないようになってるの。」
    「アハ……まぁ元々ビリーの方から持ちかけてきた話だしね。」
    「ンフフ。」

    ほんのり緩んだ頬から指を少しずらして、そのよく動く唇を親指でなぞる。
    ……相変わらず抜け目のないビリーのビリーらしさに気分が良くなる。きっと、全額返済のイミはリアルなマネーでは絶対無い。一体ナニが返ってくるんだか。常にビリーの掌の上で、でもただ遊ばれてやるのも癪だから。

    「……ひとつ上のプランに乗り換えちゃおうかな。」
    「ワォ、さっすがDJ太っ腹〜!」
    「サインは今からしてあげる。」

    相変わらず見えない視線のその先で。
    指でなぞった柔らかい箇所に自分の唇を重ねる。
    頬を撫でていたビリーの手がスムーズに俺の後頭部に回って。
    もう何をされるかも全て理解していたであろうビリーは、相変わらず俺の前では可愛くない。
    少し翻弄してやろうと、その唇を割り開いて舌を捻じ込むと、さすがにビリーはひくりと震えた。

    「……っは、……またよろしくネ、『ベスティ♡』」
    「ま、気が向いたらね。」
    「もう、またそんなコト言う〜!いっつも向いててヨ!」
    「えぇ……?それはさすがに無茶苦茶がすぎるでしょ。」

    変わったらしいその契約の上で、全く変わらない会話をする。そのうちにビリーが用事の時間だからと告げて何事もなかったように部屋から出ていくのも変わらない。
    ほんの少しだけ唇をぺろりと舐めたら残るのは相変わらずのキャンディの香り。
    ……やっぱりショコラの方が好きかな。
    面倒事を避けるためにも今日は一日部屋でゆっくりする予定だったけれど、無性に恋しくなったアンシェルのトリュフを買いに行こうかな。
    机に並んだふたつのマグカップを手に、リビングへ向かった。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💖💖💖💕💕💕💕❤❤💞💘💕
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works

    れんこん

    DONE第12回ベスティ♡ワンドロ、ワンライ用
    フェイビリ/ビリフェイ
    ほんのりシリアス風味
    目の前にひょこひょこと動く、先日見かけた忌々しいうさ耳。
    今日は見慣れない明るく所々にリボンがついた装束に身を包み、機嫌が良さそうに馴染まないタワーの廊下を跳ねていた。
    眩しいオレンジ頭に、ピンと立ったうさ耳はまだいいが、衣装に合わせたのか謎にピンク色に煌めくゴーグルはそのかわいらしさには若干不似合いのように思えた。胡散臭い。そういう表現がぴったりの装いだ。

    「……イースターリーグはもう終わったよね?」

    後ろから声をかけると、ふりふりと歩くたびに揺れるちまっとした尻尾が止まって、浮かれた様子のエンターテイナーはくるりと大袈裟に回って、ブーツのかかとをちょこんと床に打ち付けて見せた。

    「ハローベスティ♡なになに、どこかに用事?」
    「それはこっちの台詞。……そんな格好してどこに行くの?もうその頭の上のやつはあまり見たくないんだけど。」
    「HAHAHA〜♪しっかりオイラもDJのうさ耳つけて戦う姿バッチリ♡抑えさせてもらったヨ〜♪ノリノリうさ耳DJビームス♡」

    おかげで懐があったかい、なんて失言をして、おっと!とわざとらしく口元を抑えて見せる姿は若干腹立たしい。……まぁ今更だからもうわ 3591

    recommended works