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    にっつ

    ぜんねずのSS

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    にっつ

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    完成できなさそうなぜんねずを置いておきます。
    去年のハロウィンに書いていたけど、今年も間に合わなそうなので供養です。

    ※ダークファンタジー
    ※大正軸でも現パロでもない
    ※なんかちょっと暗い

    途中でいきなり終わります!😂

    (仮)in the dark薄暗い森のその奥に、ひっそりと佇む洋館がある。そこには肌の白い美しい魔女が住んでいて、一度そこに足を踏み入れたら、二度と帰れない。

    それが、この村に昔から伝わる噂話だった。



    善逸は持っていたリンゴを齧りながら森を歩いて帰路につく。じきに収穫祭だ。善逸の育てているリンゴも今が旬で、赤くつやつやとした皮と、蜜がたっぷりと入っている実は甘い。肩に担いでいた籠が重くて切り株に腰掛け、休憩がてら残りを食べる。村で毎年行われている収穫祭は、採れた食べ物を祝うとともに、悪霊を追い払うのが村のしきたりとなっている。

    「月末だったよなぁ、確か」

    善逸が一緒に暮らしている祖父の慈悟郎が、そろそろ準備をしなければならないと言っていた。森で調達できるものがあるので、善逸は草や枯れ木を踏み分けながら森の奥へ向かう。鬱蒼とした森は方向感覚がわからなくなるため、幹のところどころに印をつけている。森から村へ帰れるように、その布の目印を確認しながら歩いていく。
    ザ、ザ、ザ……パキリ、ザ……と静かな森で音が響く。

    (蔦や木の皮があると、籠も編めるよな…)

    そう考えながら歩いていると、視界の端に鮮やかな色が目に入った。ずっと先に色とりどりの花が咲いている。こんな森の中にあったっけ?と、物珍しさに興味が沸いて、その花のほうへ向かう。花々の咲く場所までたどり着くと、そこだけ木々がなく、日の光に照らされている。白や黄色、桃色の花々が綺麗でしゃがんでみた。

    「収穫祭、花もいるって言ってたよなぁ……」

    頭の中には村の女性陣の顔が浮かんだ。花を渡したら喜んでくれる子はいるだろうか。そんなことを考えていると、再び何かが目に入る。少し離れたところに洋館が建っていることに気づいて、ビクッと体が強張った。なぜ今まで気づかなかったのだろうかと思うくらい、大きくて古めかしく、木々の間から覗く窓や壁には葉が伝っている。明るい花畑とは対照的でそこは闇に吞まれているようで、恐怖すら感じた。そこで村の噂話を思い出す。

    ”薄暗い森のその奥に、ひっそりと佇む洋館がある。一度そこに足を踏み入れたら、二度と帰れない。“
     サァッと血の気が引いた。噂通りのその場所にいるのだと思うとガタガタと震え出した。

    「かかっ……帰ろ……っ!」

    辺りを見回す。いつも目印にしている木の布がどこにも見当たらない。そうだ、途中から花の方向ばかり向いていて、そこを確認してこなかった。……迷った……?そう気づいたら、さぁっと青ざめた。こんな、いつも通っている森で迷うなんて。でも、この森の果てなど聞いたことがない。それくらい広い森なのだ。耳を凝らしてみても、風が葉を揺らす音と、鳥の鳴き声しか聞こえてこず、遠くまできすぎてしまった。泣き出しそうになってから振り返る。木々の間から見える洋館が善逸を見下ろしている。人はいるだろうか。あんな、古い建物の中に。それしか頼る術はなかった。覚悟を決めたようにして善逸は洋館を周って入り口へと向かう。
    ようやく洋館の門前までくると、黒々とした鉄錆びた門から洋館が見えた。施錠はされておらず、そのまま扉へと向かう。扉も物々しくて、鉄の錠を打つと音が響いた。

    「す、すみませぇん……」

     扉が厚いせいかあまり音が聞こえてこないが、善逸の耳は微かに物音を拾った。人がいる。怖いけれど、もう一度コンコンと錠を打って呼びかけるが何も反応がなく、扉に手をかけた。

    「え……」

     門と同じようになんなく開いてしまって、不用心じゃないかと思う。

    「す、すみませーん、誰かいませんか?」

     洋館の中の入ると、善逸の足音が響く。外から見た通り、薄暗い。コツ、コツとおそるおそる入っていくと、布ずれの音が聞こえて善逸はそこに近づいていく。
     窓から入る微かな日の光が床を照らしている。その先の暗がりに、女性がいることに気づきハッと息を飲んだ。こちらを見ている赤みがかった目だけがハッキリと見えた。
    黒いドレスに、その黒よりも暗い長い髪の、美しい美しい…

    「ま、じょ……?」

    コツコツと善逸のほうへ向かってくるにつれてハッキリと顔が見えた。透き通るというには青白いような肌に、ガラス玉のような瞳。あまりの美しさにドキドキと胸の鼓動がどんどん大きくなっていくのがわかった。

    「森で迷いましたか?」
    「へっ……あっあぁそそっそうなんです。迷ってしまって……村に帰れなくなっちゃって……ここに、住んでいる人ですか?」
    「はい。禰豆子と申します」
    「あっ……俺は善逸。ごめんね、先に聞いちゃって。すぐ道を聞いたら、か、帰るから」
     
     善逸は声や話し方、見た目から、禰豆子の年は同じくらいではないだろうかと考える。にしても、他の人がいる気配がない。

    「ちょっと、こちらへ」
    「へっ…?」

    禰豆子が背を向けて、奥へと案内されると、テーブルとイスのある部屋に通された。座るように促され、しばらくすると禰豆子が部屋へ戻ってきた。差し出された手には何かを持っている。

    「方位磁石です。この方角が善逸さんの住んでいる村です」

    指差す方向を見るようにして覗き込むと針がゆらゆらと揺れている。これで村へ帰ることができると思うとホッとした。

    「じゃあ、返しにくるときは逆にこっちにくれば禰豆子ちゃんの家に来れるんだよね」
    「えっ…?」
    「??禰豆子ちゃんって呼ぶの嫌だった?」
    「……いえ、あの。こちらは差し上げますよ」
    「他にも持ってるの?」

     そう尋ねると禰豆子はどこか寂しそうに笑った。首を傾げながら善逸は家へ帰れるという安堵から、禰豆子に尋ねる。

    「ここの洋館のそばにお花がたくさん咲いていたけど、あれは禰豆子ちゃんが育ててるの?すごくきれいに咲いてたけど……」
    「はい、私が育てていて……今、お茶を入れますね。少し待っていて下さい」
    「あ!まって、これ、俺が育ててる林檎。お礼にっていうのも変だけど」

     す、と籠から林檎を出すと、善逸は禰豆子へ差し出した。

    「ありがとう、善逸さん」
    「お礼を言うのは俺の方だよ」

     少しだけ、頬を染めた禰豆子に善逸の顔が緩んだ。

     お茶を飲みながら、お互いのことを話した。禰豆子の両親は亡くなっていて、この洋館に一人で住んでいることを聞いた。善逸は不思議に思った。食べ物なんかはどうしているのだろう。村に買いにくるにしても、こんなに美しい子が出入りしていたら、村中の人が知っているはずだ。しかし善逸が知っているのはあの噂話だけだ。そもそもあの噂話はなんだったのだろうか。色々と腑に落ちない点があるけれど、善逸はこの方位磁石を返しに来るつもりで洋館を出ると伝えて、二人で出口の扉へと向かう。

    「それじゃあ、また。この辺りの木に印をつけてもいい?」
    「はい。かまわないですよ」
    「ありがとう」
    「さっきより、晴れてる。禰豆子ちゃん、日差しが気持ちいいよ」

     善逸が伝えると、禰豆子の体がこわばる音が聞こえた。

    「……?禰豆子ちゃん?」
    「日の…日差しが苦手なんです。……肌が弱くて」
    「あっ……そうだったの!?ごめんね、それじゃあお花のお世話とか大変じゃない?」
    「……夜の間には外に出られるから」
    「そっか!それじゃあまたね、禰豆子ちゃん」

     手を振って、善逸は洋館を後にした。

     あまり布きれを持っていなくて、数か所にしか印をつけられなかった。禰豆子に借りた方位磁石で村までたどり着くことができてホッとした。


     翌日、新たな印をつけながら磁石を返しに行く。早く禰豆子に会いたくて気がせいて、ビッと枝に腕が引っかかり、二の腕の部分の服が破れ、ケガをしてしまった。

    「いっ……あ、やべ服まで」

    帰ったらじいちゃんに怒られるだろうなぁと思いながら、大して血も出ていないから。と洋館に向かう。

    「禰豆子ちゃあん」
     コンコン、と錠を叩いてからまた中に入る。すると、二階への階段の脇に座って目をつぶっている禰豆子が目に入った。

    「禰豆子ちゃん……!?」

     昨日会ったときよりも、青白く具合が悪そうに見えて慌てて駆け寄った。

    「大丈夫!?具合でも悪いの!?」

    瞼が微かに震えて小さく声が聞こえる。

    「すこし、よこになれば……」
    「わ、わかった。禰豆子ちゃんの寝る部屋は?」

     弱弱しく指差す方向を確認すると、善逸は禰豆子を抱いて、そこに向かった。



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    にっつ

    MOURNING完成できなさそうなぜんねずを置いておきます。
    去年のハロウィンに書いていたけど、今年も間に合わなそうなので供養です。

    ※ダークファンタジー
    ※大正軸でも現パロでもない
    ※なんかちょっと暗い

    途中でいきなり終わります!😂
    (仮)in the dark薄暗い森のその奥に、ひっそりと佇む洋館がある。そこには肌の白い美しい魔女が住んでいて、一度そこに足を踏み入れたら、二度と帰れない。

    それが、この村に昔から伝わる噂話だった。



    善逸は持っていたリンゴを齧りながら森を歩いて帰路につく。じきに収穫祭だ。善逸の育てているリンゴも今が旬で、赤くつやつやとした皮と、蜜がたっぷりと入っている実は甘い。肩に担いでいた籠が重くて切り株に腰掛け、休憩がてら残りを食べる。村で毎年行われている収穫祭は、採れた食べ物を祝うとともに、悪霊を追い払うのが村のしきたりとなっている。

    「月末だったよなぁ、確か」

    善逸が一緒に暮らしている祖父の慈悟郎が、そろそろ準備をしなければならないと言っていた。森で調達できるものがあるので、善逸は草や枯れ木を踏み分けながら森の奥へ向かう。鬱蒼とした森は方向感覚がわからなくなるため、幹のところどころに印をつけている。森から村へ帰れるように、その布の目印を確認しながら歩いていく。
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