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    まさよし

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    まさよし

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    オーカイだけどカプ要素かなり薄め 謎シチュ

     早起きし過ぎたわけでも、逆に寝過ごしたわけでもない、そのくらいの時間に目が覚めたはずだった。むしろ、いつも人より早く起きて軽い運動をしているのを、昨日深酒をしてしまったからという少しばかり情けない理由で休むことにした分、みんなと同じくらいの時間に起床しているはずだった。
     廊下で誰ともすれ違わないことくらいはいつものことだった。けれど、食堂の近くまで来ても、トーストの焼ける匂いや、食器やコップから出るかちゃかちゃとした軽い音、そして誰かと誰かの話し声、笑い声、たまに喧嘩する声、そんな、人の気配がひとつもしないことには違和感を覚えた。食堂に着いてもそれはしないままで、テーブルの上にも美味しそうな食事などひとつもない。おはよう、今日はずいぶん静かだな。そう声をかけても、誰からも返事はない。今度は先ほどより少し大きな声で、おーい、誰かいないのか? 呼びかけてみるが、やはりなにも返ってこない。
     もちろん、誰かが魔法舎を外すことなんていくらでもある。自分だってしょっちゅうだ。けれど、こう全員が示し合わせたようにいなくなることがあるだろうか。もしかしたら、総がかりでやるような大きな任務があったんだろうか? それに自分だけ呼ばれず、誰からも教えてもらえなかった? それなら辻褄が合うが、あまり現実的ではない……はずだ。俺が、自分でも知らないうちに、みんなからずいぶんと嫌われていたというなら話は別だが。
     それから少しの間食堂で待ってみて、今度は中庭に出て同じように呼びかけてみたけれど、結局誰とも会うことはなかった。魔法舎中の部屋をノックして回ってみようか。それで誰かがいたら安心できるけれど、どうしたの、と聞かれたときになんと答えよう。誰もいなかったから不安で、なんて子どもみたいなことを言うのか? まあ実際にそうなのだけれど、誰かに面と向かって言うのは少し気はずかしい。
     森のほうはまだ見に行っていない。鍛錬に励むシノや、植物の採取やら観察やらをしているルチルとミチル、リケも付き添っていることがあるな、そのあたりの誰かがいないだろうか。たまにミスラが眠れる場所を探して木陰で横になっていたりもするので、踏んでしまわないように注意しないと。
     そんなことを考えながら呼びかけて回ってみるが、結局返事はなかった。本当は薄々気づいていたのだ。それをなんとか、今も昨日までと同じ日常なんだと思い込もうとしていた。
     他にもいろいろと考えた。今日は昨日の続きなのだと信じようとした。その途中でぷつりとなにかが切れて絶えるようなことはひとつもなかったのだと。
     たとえば、さっきも考えたけれど、俺抜きでみんなが任務、に限らずとにかくみんなで一斉にどこかに出かけたというのはどうだろう。それか、もしかしたらみんなすぐそばにいて、不安になっている俺を見て笑って……そこまで考えて、やめた。あいつらはそんな悪趣味なことは絶対にしない。同じように、俺の傷のことを知っているのだから、全員で魔法舎を外すことを伝えないことなどないだろう。
     ついに最初に思い浮かんだように、部屋中をノックして回ることにした。俺はまだ期待していた。誰でもいいから、誰かが一言、どうしたの、と、そう声をかけてくれたら。二階、三階と上がっていくにつれて、息苦しくなってくる。ノックしても、声をかけても、なんなら叫んでも! どこにも、誰もいない。
     そして最後、五階の奥の部屋。他の部屋にしたように、ノックをして名前を呼ぶ。オーエン。俺が唯一見える相手。魔法舎のどこにもいなかった。こいつがここにいなかったら、この扉を開けた先にこいつの姿がなかったら。……なかったら、なんなのだろう。その先に続く言葉はわからないまま、扉をゆっくりと開いた。その先の言葉はいらなかった。
    「最初に僕のところに来てくれたらよかったのに」
     オーエンは、普段通りソファに座って、足を組んで本を読んでいた。テーブルにはクッキーと紅茶が置いてある。昨日までと同じだった。この部屋の今日は、ちゃんと昨日の続きだった。
    「もう誰もいないよ」
     みんなは? そう聞く前にオーエンはつまらなさそうに言った。クッキーを口に放り込みながら、今日の夕食の献立が気に入らなかったときと同じ調子でそう言ったのだ。
    「みんなはどこに行ったんだ?」
    「だから、いないよ。どこにもいない」
     それがあまりにも日常的な会話に思えて、もうみんなどこか、任務でもお祭りでもなんでもいいから、どこかに行ってしまっていないんだと、そう言っているように聞こえた。けれどオーエンは、当たり前で、なにも驚くことなんかじゃないとでも言うように、淡々と言った。どこにもいない。とてもじゃないが、信じられなかった。
    「ああ、誰も、って言うのはうそだね」
    「……な、なんだ。やっぱりみんな、」
    「精霊はいるよ。赤ちゃんの騎士様にはわからないと思うけど」
     一瞬だけちらつかされた希望は、また一瞬で消えていった。悔しいが、オーエンの言うとおり、俺には精霊の気配はほとんど感じられない。それがわかるなら、ここまでの孤独感を感じることはなかっただろうか。
    「だから魔法は使えるよ。よかったね、王都まで歩いて行くところだった」
    「……王都に行くなんて言ってない」
    「行くだろ。まずは王子様がどうしてるか確認しないといけないもんね? 明日まではここで過ごすはずだったのに、忠臣になにも言わずに勝手にどこかに行っちゃった薄情者の王子様に危険がないか見に行かなきゃ」
     あいつを悪く言うな、なにか事情があったに決まってる。そう言い返そうとしたが、とっさに思い浮かんだその言葉の深刻さに気づいてしまい、声にならなかった。そうだ、確かにアーサーは明日まではここで過ごすと言っていた。久しぶりに公務から離れて、オズとパンケーキを作るとか、リケと本を読むとか、……俺と友達として他愛のない話をしたいだとか、そんなことを言って笑っていた。それを全部くつがえすほどのなにかが、アーサーに起きている。
     もう行く、とだけ言って部屋を出た。オーエンはなにも言わなかったし、ついてくることもなかった。

     箒をこれまでにないくらい、自分でも振り落とされるくらいに飛ばしても、王都までの道のりは長かった。眼下に広がる、荷馬車のひとつも走っていない静まり返った街道をなるべく見ないようにしながら、汗ばんだ手で箒の柄を握りしめる。
     城下町の近くで降りて、大通りに出る。日は高い位置にあって、いつもならすれ違う人と肩がぶつかるくらいのひとけがあるはずなのに、やはりそこにも誰もいなかった。
     この傷が出来てから、姿こそ見えなくなったが、その気配はこれまでの何倍も感じるようになった。声や靴の音はもちろん、衣擦れや、風の流れまで、視覚以外のものが、そこにどのくらいの人がいるのかを伝えてくれた。それがすべて俺の思い込みで、俺は本当は人の気配なんて感じられていなくて、だからここにはたくさんの人が溢れかえっていて。そう思い込もうとすればするほど、返って現実がのしかかってくる。
     露店が多く開かれている路地に入ったが、うるさいくらいに賑わっているはずのそこも、今は俺の足音だけが響いていた。そのとき、ひとつだけ、ぽつんと開いている露店を見つけた。胸が早鐘のように鳴って、早足で駆け寄った先で、今日はいやに静かだな、なにかあったのか? と笑いかける。冷やかしじゃないよ。世間話のひとつくらいしてもいいだろ? わかった、じゃあ買うよ。えーっと、これはどこの国で作られたものなんだ? なあ、買うって言ってるんだから、教えてくれよ。もうもらっていっちまうぞ? なあ、返事を……頼むよ、一言でいいんだ。頼むから……。
     つまみ上げた指輪を、そのまま机の上に戻した。この露店は、不用心な主人が置いたままにしてあるものなのだろう。面倒がってこういうことをする店もあるのだとわかっていた。わかっていたはずなのに、期待してしまった。どんなに細い希望でも、すがりついてしがみつくことをやめられなかった。
     魔法舎のやつらだけじゃない。本当に、もう誰もいない?
     城に向かう足が鉛のように重い。怖いんだ。そこに誰もいないことを、アーサーがいないことを、知りたくない。でも、だからと言って、行かない選択肢なんてなかった。
     ふらふらとした足取りで、誰からも呼び止められないまま城門をくぐる。ここで大声で誰かいないのか、なんて騒いだら傷のことがばれてしまう。……いや、ここに誰もいないことはわかっている。返事がひとつもなかったら、その予想が確信に変わってしまう。それが怖くて言えないだけだ。
     怖いから。そんな理由で主君の無事を確かめられないなんて、あってはならない。そう奮い立たせて、アーサー様、と叫んだ。誰からも返事がなく、室内に自分の声だけが反響する。それでも叫び続けた。アーサー様、いらっしゃいませんか。誰か、アーサー様がどこにいるか知らないか。アーサー様。アーサー様!
     叫びながら城の中を歩き続ける。しばらくして、目的の場所についた。扉を何度もノックし呼びかけるが、返事はない。家臣が主君の部屋に許可もないのに出入りするなんて、平時では許されないことだけれど、その罰はあとからいくらでも、喜んで受け入れよう。これでアーサーの無事が確認出来たなら。
     アーサー様、失礼します。そう言って扉を開く。そこには人影があった。息が詰まりそうになった。安堵で崩れ落ちそうになった。けれどその前に、そこにいたのは、そこにあったのは俺の望んだ光景ではないことを理解した。
    「ね、誰もいなかったでしょ」
     扉の向こうでは、オーエンが楽しそうに笑っていた。それはアーサーの椅子だ、そもそもアーサーの部屋に入るんじゃない、そんな当たり前の、けれど今は的外れな言葉をぶつぶつとつぶやく。オーエンは、そんなの僕の勝手、と笑うばかりでろくに返事を寄越さなかった。
    「……本当に誰もいないのか?」
     ようやく絞り出した声は、一国の王子が使うには少し狭いこの部屋の中を一瞬満たして、すぐに消えていった。この言葉を待っていたらしいオーエンが、嬉々として話し出す。
    「そうだよ、さすがにもう信じる気になった?」
    「……もう、そうとしか思えない。でも、なんで、おまえは平気なんだ」
    「だって僕が消したから」
     オーエンは、いつもの嫌がらせが成功したときと同じように笑っていた。いつもと違うところがあるとすれば、その笑顔がまるで、友達にちょっとしたいたずらをしたときのような……そんないたいけなものに見えた。
     それを見ていると、オーエンにとってはこれは異常事態でもなんでもないのだと思い知らされ、その瞬間その言葉を本気にしそうになった。オーエンが、全員消してしまった。魔法使いも人間も、仲間も敵もそれ以外もすべて。けれど、そこまで考えて、ようやく冷静になった。
    「……どうやって?」
     オーエンは当たり前のように言ったけれど、やっぱり、そんなことありえない。
    「おまえは強いけど……この世界にいるすべてを消すなんて、できるはずない」
    「できたんだよ。だからみんないない」
    「だ、だとしても、そんなことする理由はないだろ」
     できた、と迷いなく言い切られてまた揺らぎそうになったが、方法はわからないにしても理由がない。みんなと仲良し、というわけではなかったけれど、それでも少しは打ち解けているように見えたし、実際昨日まではみんなと同じ魔法舎で過ごしていた。これまでのあいつの姿はすべて偽りだったのか? それとも、すべて消し去りたくなるほどの強い感情を持たされるような出来事が、俺の知らないところで起きていた?
    「……確かに、騎士様の言うとおりだね」
     そう考え込んでいたが、オーエンは意外にもあっさりと答えた。
    「僕はべつに、あいつらがみんないなくなればいいなんて思ったこと……少なくとも本気で思ったことはなかった。自分は善人だってなんの疑いもなく思い込んでるやつらの本性を引きずり出してテーブルに並べてやるのがなにより楽しいんだから」
    「そ……そうだろ。おまえがそんなことするわけない」
     あまり褒められた理由ではないが、それでも安心した。よかった、悪いやつではあるけれど……いくらなんでもこんなことをしでかすほどのやつじゃなかった。そう胸を撫で下ろすのも束の間、オーエンは冷たい声で投げかけてきた。
    「じゃあ誰がやったの?」
    「え?」
    「ここには僕とおまえしかいない。僕がやったんじゃなかったら誰がやったの?」
     そんなことわからない、俺の方が聞きたい。そう答えようとしたが、俺の返事を待たずに、今度はとびきり楽しそうな声で問われる。
    「ねえ、誰がやったと思う? おまえが言う、この世界にいるすべてを消す理由があるやつって、今どこにいるの?」
    「……そんなの俺にだって、」
    「本当にわからない?」
     わからない。そう即答できるはずなのに、どうしてか息が詰まって言葉にならなかった。うつむいて、思考を張り巡らす……こともできずに、なにも考えられない頭の中が焦燥感のようなもので埋め尽くされるのを黙って耐える。気づいたらオーエンは俺の隣にいて、また楽しそうな声でささやいてくる。
    「逃げたかった? 騙してたんだもんね? みんな大切な仲間だって言いながら、そいつらをずっと騙してた。逃げたくもなるよね?」
    「……なあ、なにを言ってるんだ?」
    「いなくなりたくなるよね?」
    「だから、なに言って、」
    「でも、自分がいなくなるのは怖いよね?」
     オーエンがなにを言っているのかわからない。誰がやったかだってわかるはずがない。みんな消してしまう。みんなが消えた世界で孤独に生きていく。そんなことを望むやつなんて、いるはずない。みんな消してしまって、そうやって誰もいなくなった世界で、誰のことも傷つけなくて済む世界で、孤独に、穏やかに生きていく。違う。そんなこと望んでない。俺がそんなこと望むわけない。俺じゃない。俺じゃない!
    「いるのが僕でよかったね」
    「……よかった、って?」
    「だって騎士様は、僕の言うことは全部うそだって決めつけて、僕をひとり置いて王都に飛んでいっちゃったから」
    「だって、こんな突飛なこと、信じられるはずないだろ」
    「ほら、謝らない」
     違う。だってそれは、おまえは平気そうだったから。おまえは傷ついてなかったから。
    「僕ならいくら傷つけても、痛みなんて感じないんでしょ?」
     オーエンは笑っていた。それを聞いた瞬間、頭の中が真っ白になって、けれど気づいたときには目の前にあったその腕を掴んでいた。楽しそうに弧を描いていた目が見開かれる。
    「そんなこと思ってない!」
     オーエンは笑うのをやめて、じっと俺の目を見た。からかうことも怒ることもせず、黙ったまま。なにか言わないと。けれど、どんな言葉を選べば正しく伝わるのだろう。考えているうちに、オーエンは怪訝そうに眉をひそめて、見るというよりは睨むと言ったほうが近い眼差しを俺に向けた。
    「ちょっと、急になに?」
    「急に、って……だっておまえが」
    「ふたりとも、なにをしているんですか?」
     思わず振り向く。誰かいるのか? そう言おうとして、すぐに固まってしまった。そこに広がっていた景色は、アーサーの部屋でも、それどころか王都のどこでもない、魔法舎の廊下だった。
    「おはようございます、カイン。……? ほら、手を」
     状況を理解する前に、条件反射のように片手を上げた。手にそっとなにかが……リケの手が触れて、その微笑んだ顔が映る。僕も、と矢継ぎ早に声をかけられ、今度はさっきよりも元気よく手を叩かれる。ぱちん、と軽い音がして、リケの隣にミチルの姿が映った。
    「もう、朝から喧嘩しないでください」
    「喧嘩なんてしてない、こいつが急に……」
    「今日はネロがアップルパイを焼いてくれてるんです。でも、これ以上喧嘩するなら分けてあげませんよ」
    「だから、そんなことしてないよ」
     目の前で当たり前のように広がる日常を受け入れるまで、ほんの少し時間がかかった。まるで額縁の向こう側を見るようにそれを眺めて、それからようやく、ここにあるものが現実なんだと理解した。
     その頃にはもうリケとミチルは食堂に向かって歩き出していて、オーエンもちょうど足を踏み出そうとしていた。
    「オーエン」
     それを引き留めるように名前を呼んだ。オーエンの足が止まる。無視されなかったことに安心しながら、続く言葉を探す。
    「その……ごめん」
    「……なに、その顔」
     けれど結局気の利いた言葉はなにも思い浮かばず、それきりなにも言えなくなった。黙りこくっている俺を見て、オーエンがため息混じりに言う。
    「そんな顔しないでよ。おまえから仕掛けてきたくせに」
     その声にいつものような、さっきの世界で見ていたような、からかいの色はなかった。呆れたような、困ったような、それかもしかしたら、俺のことを心配しているのかもしれなかった。俺は、オーエンにそんなことを思わせるくらいひどい顔をしていたんだろうか。
    「……ああ、悪かった!」
    「なんなの? 悲しんだり笑ったり、騒がしいやつ」
     悪かった、そう思っていることに偽りはないが、どうしてかそれ以上に喜んでいる自分がいた。口元が緩むのを抑えきれない。謝りながら笑うなんて失礼なことだとは思うけれど、オーエンは呆れながらもそれを強く咎めることはなかった。少し機嫌がよさそうに見えるのは、食堂で待っているらしいアップルパイのおかげだろうか。俺もひと切れ分けてもらおう。
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    まさよし

    DOODLEオーカイ 現パロ 社会人してる
     日付が変わってもう小一時間経っている。予定通り進んでいれば今頃はとっくに家に帰ってベッドの中に入っているはずだったのに、現実の僕はほとんど通ったこともないような路上で寒さに震えそうになりながらゆっくり歩いている。原因は隣にいる酔っ払いで、ゆっくり歩いているのもこいつの歩幅に合わせているせいだ。
     カインのことはずっと前から気に入らなかった。第一印象から最悪だった。就活で神経をすり減らしたのだろう陰気な雰囲気の両隣のやつらと違って、まぶしいほどの笑顔で自己紹介を始めたときからずっと。実際に働き始めてからも、例の陰気そうな同期の連中に明るく声をかけて、初対面らしいのにあっという間に仲良くなっていた。先輩や上司からの印象も、ノリのいい元気な、仕事の飲み込みも早い将来有望な後輩、といったもので固まっているようだった。が、もちろん僕はそんな感情は抱いていなかった。僕はあいつに対して、弱みを見つけて壊してやりたい、その評価をなんとかしてどん底まで落としてやりたい、そんな気持ちしか持っていなかった。そのために面倒な仕事をめちゃくちゃな納期で押し付けても、あいつは、勉強になります、の一言で受け入れた。しかも僕の大嫌いなあの太陽みたいな笑顔すら浮かべているのだから最悪だった。
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