「入れてあげよーか?」
あーあー。可哀想だな花道。今回はどうやらなかなかの性悪を好きになっちまったらしい。好意に応える気もないのに、こうしてからかって遊んでる。
数秒前まで、傘がない!と喚いていた花道は、途端に降って湧いた機会に顔を真っ赤にした。ハクハクと口を開閉させて、ふぬっだかぐうっだか唸っている。さっさと頷いちまえばいいのに。そうしたらチャンスは生まれるわけだし、あんまりグズグズしてると……ああほら。女は笑みを深くして、パサ、と花柄の傘を開く。
「あはは、冗談に決まってるでしょ!」
そうして、さっさと雨の中を歩き出し、友人と見られる奴らと塊になってキャッキャ騒いでいってしまった。ねーミサキ、桜木くんと付き合うの?まさか!ちょっとからかっただけよぅ、と。だんだん遠くなっていく声が雨音をかいくぐってこちらまで届いてくる。
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