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    エイリアン(小)

    @4Ckjyqnl9emd
    過去作品封じ込める場所です、時々供養とか進歩
    お絵描きは稀に

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    POIPOI 11

    夏五ワンライ過去作品
    短いです、とても

    「傑!ほら見ろよ!」
    「はいはい、今行くから待ちなね」
    デコペンではしゃぐ悟が私を呼ぶ。お坊ちゃんな悟は、デコレーションなるものをしたかったらしい。市販のクッキーとデコペンを買って、夕方、私の部屋に押しかけてきた。
    「ほら!これ!」
    「...これ、私か?」
    「そ!」
    ぐちゃ。と市販の丸型クッキーに描かれたそれ。随分と線が暴れているそれは悟曰く、私らしい。
    「ちゃんと見て描いて欲しいな」
    「は?何不満なわけ?」
    仕方ねーなぁ!と言って、悟はそのクッキーに手を加え始める。
    あぁ、あのクッキー、バカ甘いだろうな。
    「ほら傑!」
    「今度はなんだ...ってこれ...」
    「上手いだろ!!」
    そこに描かれていたのはハートだった。茶色いハートが、クッキーの上を堂々と陣取っている。
    「それ、やるよ」
    「え」
    「だって傑、俺の恋人だし」
    こー言うの好きだろ。そう言って私の口にクッキーを押し込んだ。よくよく見れば、耳が赤い。思いつきでやって恥ずかしがるのはどうかと思うぞ、悟。
    ぱきりと砕いたクッキーはやっぱりとても甘かった。
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    Replies from the creator

    エイリアン(小)

    PROGRESS進んでるところまで
    夏五共依存
    「さとる」
    そっと呟いても、その声に答えてくれる筈の人間はまだ目を覚まさない。
    さまざまな機械に繋がれ、死んだように眠る悟はまるで精巧な人形のようだった。
    「悟」
    もう一度、名前を呼ぶ。
    ピクリとも動くことのない瞼を見て、思わず投げ出された手を握った。
    ただでさえ冷たい悟の手がさらに温度を失っているのに気付いて、強く、強く握る。あわよくば、この感触に気付いて起きてくれる期待を抱いて。
    「悟...」
    なのに、強く握った手を持ち上げても、悟は目を瞑ったまま。
    抵抗しない。何も言わない。
    それが酷く悲しくて、私はぐっと唇を噛み締めた。

    『五条が暴走車に撥ねられた』
    そう言った硝子の震えた声を、今でも容易に思い出すことができる。
    変わらない日、いつもと同じ金曜。
    いつも通り二人で朝食を取って、悟がゴミを持って出勤する。
    ゴミを持つ悟に、いつまで経っても似合わないな、なんて思っていた。
    昨日の夕食も思い出せないくせして、悟が撥ねられたその日の過ごし方は馬鹿みたいにはっきり覚えているのだ。
    それなのに、彼がいつも通りに放った、行ってきます。その声が薄らぼんやりとしてきているのが恐ろしくて仕方ない 2408