一旦、幕引き。「ねぇねぇ」
こぽこぽ。
「なんだ」
こぽ。
「ワタシも、見たことないよ?」
「……何を」
ごぽ。
「えーとね、……海底遺跡と、秘宝の島?」
こぽぽ、こぽこぽ。
「あと、黄金郷と忘れられた民の祭祀場と、ナントカ大陸だっけ」
こぽこぽ、こぽぽぽ。
「ワタシも、見てみたいなぁ」
「…………」
ごぽぽ。
「…………お前、どうしてここに還ってくる前に言わないんだ」
「言えば付き合ってくれたの?」
「……全部は厭だが、ひとつふたつぐらいは立ち寄った」
「え、珍しい。ワタシの頼み事を――」
「――大体は聞いてやっていただろうが。珍しいとはなんだ」
ごぼぼぼぼ、ごぼぼごぼ。
こぽぽぽぽ、こぽぽ。
「フ、フフッ、……そういえばそうでした! なんだぁ、残念。言えばよかったなぁ。でも、眉間に皺がないのは珍しいよ。どうして?」
こぽぽ。
「……別に」
「ねぇ、どうして?」
こぽこぽ。
「…………」
「“ハーデス”?」
こぽぽ。
「……」
「……」
「…………」
「…………」
……ごぽ。
「…………ん、……く、」
「?」
こぽ。
「…………随分長く待たせてしまったから、その、詫びだ……!」
「えー、お詫びなんていいよ」
「……まぁ実際! ここに還ってから言われても困るんだがな!」
ごぼぼぼぼぼぼぼ!
「フフ、フフッ……!」
こぽぽ、こぽこぽこぽ!
「笑うな!」
「フフフ……ッ、そんな、拗ねないでよハーデス……フフッ、」
「私は拗ねていない! お前は笑いすぎだヒュトロダエウス!」
ごぼぼぼ!
「ごめんごめん……ワタシに気を遣ってくれるなんて本当に珍しいことだから、嬉しくて笑っちゃった」
「……さり気なく失礼なことを言ってないか? 笑うのもおかしいと思うんだが」
ごぼ、ごぼぼ。
「えー? そうかなぁ……嬉しいと笑いたくならない?」
こぽぽぽ。
「私はならん」
ごぼ。
「笑えばいいのに」
こぽ。
「厭だ」
「……ツレナイなぁ」
こぽぽ。
ごぽごぽ。
「……それで、どうする?」
「ん、何を?」
「お前が見たいと言ったところ、訪れるのは無理だが見るだけなら星海からでも見れるが」
ごぽぽ、ごぽごぽぽ。
「ん〜……」
こぽぽぽ。
「そうだねぇ……見るだけじゃあつまらないなぁ。じゃあ、次回にとっておくよ」
「……次回?」
ごぽ。
「そう、次さ」
こぽ。
「次はワタシたちも自由な“冒険者”になって、一緒に見に行こうよ」
こぽこぽ、こぽぽぽ。
ごぽ。
「……私はすでに見ているが?」
ごぽぽ。
「もう、意地悪だなぁハーデスは。じゃあワタシを連れて行ってよ、海底遺跡に秘宝の島!」
「黄金郷に祭祀場、南方大陸メラシディアもか?」
「そうそう」
こぽこぽ。
「……次がいつになるか分からんぞ? それらもどうなってるか分からん。見るべき価値がなくなっているかもしれない」
「そうしたら、新しいところに行けばいいじゃない。その時、ワタシたちはきっと自由だろうから」
こぽぽぽ、こぽぽ。
「そうかな」
「そうだよ。ワタシたちの役割や責務はようやく終わったもの。ここで、幕引きだよ」
「……そうだな」
ごぽぽ。
「そうだな……なら、次にお前と出逢えることがあれば冒険者にでもなるか」
「フフ、……必ず出逢えるから、それまでに身体鍛えておいてよ? そして、ワタシを護ってね」
こぽこぽ、こぽぽぽ。
「そこはお前も鍛えておけよ……だが、必ず? 自信たっぷりだな?」
「だって」
こぽ。
「ワタシは――ワタシの魂が君の隣がいいって決めているから。だから、出逢えるよ。必ず、ね?」
こぽこぽ。
「……そうか」
ごぽ。
「そうなると、私はいつまでもお前と一緒というわけか」
「イヤかい? しつこいかな?」
こぽ。
「……いや」
ごぽ。
「お前と一緒なら、いつまでも楽しいだろうなと、思っただけだ」
ごぽぽ。
こぽぽ。
「次はどこまでも一緒に、冒険しようよ、ハーデス」
「あぁ」
「もちろん、アゼムも一緒に!」
「……アイツまで一緒だと喧し過ぎるな」
ごぽ。
「フフフ、次が楽しみだねぇ、ハーデス」
こぽこぽ。
「あぁ、そうだな」
ごぽ。
「――次に目醒めるときが楽しみだ」