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    ya_rayshan

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    ya_rayshan

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    大分どころでなくご無沙汰の呪術廻戦✕FGOのクロスオーバーの続き、取り敢えず出来たところまで!
    お待ちいただいた方々、本当にありがとうございます😭🙏
    第二幕の展開はおおよそ決まっているので、続きも頑張ります……!!

    #呪術廻戦
    jujutsuKaisen
    #FGO
    #クロスオーバー
    crossover
    ##クロスオーバー

    ……確かに、彼の能力は強力だ。
     “蒼”や“赫”で、地面や建物が抉れたり崩れたりすることは納得できる。
     だがここまで広範囲、かつ大規模に地形を破壊する程のものは見たことがない。」

     荒廃した呪術高専、その敷地内の森を慎重に進みながら、話題は自然と五条悟のものとなる。
     それぞれの表情は固く、雰囲気は重苦しい。

     エミヤの低く響く声音の中には、信じ難いという気持ちが見え隠れしていて、立香は心の中でそっと同意した。

    「それはあくまでカルデアでの戦闘だからだ。
     本来の世界を離れた事、カルデア──ひいては立香との契約した事、あるいはサーヴァントとなった事が“縛り”となって、悟の能力にある程度の制限を掛けている。
     もし悟が全力で術式を使えば、味方を巻き込まないとは約束できないからね」

     エミヤに応えた夏油は、先程見せた動揺など夢だったのかと思うほどいつも通り、落ち着いた様子で言葉を紡ぐ。

    「特に悟はカルデアに来てから、全く使っていない力がある。サーヴァント風に言うなら、第二宝具というやつさ。
    ……マスターは、心当たりがあるんじゃないかな」
    「あ………………」

     そう言われて、立香はカルデアに登録された五条のマテリアルを思い出した。

     特に霊基的な縛りや不具合は存在せず、ただ五条悟本人の意思で使用を制限されている第二宝具。


    「地面を抉ったり、建物を大きく崩したり壊したりっていうのは、確かに悟以外の術師であっても不可能じゃない。
     でもね。あれだけの広範囲の地形を、まるで初めからそこには何もなかったかのように消し去るような攻撃は、この世界では悟の “茈” を置いて他に無い。」

     確信を持って夏油が告げた言葉に思い起こされたのは、五条が召喚されて間もない頃に行われた戦闘シミュレーション。

     全く異なる世界、常識から召喚された五条悟というの英霊の能力を正確に把握する目的で行われたそれの中で、五条は自身の能力ちからについて殆ど誤魔化すことなく、ほぼ全てを開示してみせた。

     そしてその中には当然【第二宝具“茈”】についての検証もなされた。
     しかし結果は詳細不明。
     たった一度の発動で計器のいくつかにバグが起こり、正確な調査ができなかったのである。

     実際に隣で“茈”の放出を見た立香とマシュの証言と、無事だった幾らかの計器によって判明したのは、敵味方の識別が難しい広範囲、高出力の攻撃であること。そしてその性質は魔術世界で言う虚数属性に近しいものがある、ということだけだった。
     さらに“茈”の超火力というメリットは、広範囲での乱戦では味方を巻き込む可能性と、その際の影響が推し量れないというデメリットを孕んでいる。

     カルデアにおける作戦行動において、無視できないデメリットであると判断したゴルドルフを始めとした司令部と、五条の了承によって“茈”は使用されなくなったのだ。


    「なら、尚更どうして…………」

     脳裏に過ぎる最悪の可能性を、けれど言葉には出来ずに押し黙る立香。その言葉尻を継ぐように、エミヤが口を開く。

    「五条が敵の手に落ちた、ということか?」
    「………限りなく低いが………可能性は、ある。
     私の知る呪術界に、五条悟をどうこうできる術師なんていなかったが、ここには聖杯があるからね……」

     忌々しげに、そしてどこか苦しげにそう応えた夏油は、きっと誰よりも現状を受け入れがたく感じているのだろう。

     だが、状況は無情にもその信じ難い可能性を裏付けている。

     切り取られた地面から離れ、改めて森や建物に残された痕跡を確認すれば、柱を捻りきったり、地面を削り取ったような跡は“蒼”の。建物を大きく吹き飛ばしたであろう跡は“赫”の痕跡と言わざるを得なかった。
     容赦なく突き付けられる証拠は、『可能性』を『事実』に近付けていく。
     段々と口数の減った一行は、崩れ落ちた建物の瓦礫に腰掛け、小休止を取ることにした。

    「やはり、この状況は五条が引き起こしたとみて間違いないだろう。」
    「そうですね。彼がどういった経緯でこの行動に至ったのかは不明ですが……」
    「……………悟が、自分の意志でこんなことをするとは思えない」

     重々しく口を開いた夏油に視線が集まる。
     瓦礫の山の影にどかりと座っている夏油は、普段の飄々とした胡散臭ささえ鳴りを潜めている。

    「悟は、呪術高専のことを本当に大切に思っているんだ。もしこの惨状に悟が関わっていたとして、それがアイツの自由意志だとはとても思えない。
     カルデアから消えた悟本人であるなら尚更だ。」

     そう強く言い切った夏油に迷いはなく、だからこそその言葉は一行に疑いなく受け入れられた。

    「うん。五条さん、高専の話をするときすごく優しい顔してた。生徒のことも、高専自体のことも、ハッキリ言葉にはしなかったけど、ホントに大切にしてるんだって伝わってきたもん。
     そんな人が自分でこんなことするなんて信じられないし!」
    「はい…!私も、この惨状を五条さんが望んだとは、とても思えませんから…!」

     力強く言い切る二人の少女の瞳には、確かな信頼と強い意志が灯っている。その様子に目を細めたエミヤと天草は静かに口を開いた。

    「なら今後は、五条の意志が封じられている可能性も考慮して動かないといけないな」
    「そうですね。交戦も視野に入れつつ、彼の奪還ないし無力化を目的としましょう。もちろん、一筋縄ではいかないでしょうが」

     少しでも二人のに意に沿うようにと思案を始める二人もまた、ハッキリとは口にしないが、五条への信頼と少なからぬ仲間意識があることは感じ取れた。

     夏油はといえば、自分から言い出したことだというのに、こんなにもあっさりと『この惨状は五条の意志でない』ことが受け入れられたことに驚き、いつもの胡散臭さなど微塵もない、どこか間の抜けた顔を晒して固まっていた。

     夏油の知る呪術界において、五条の力を信じる者、縋るものは多くあれど、五条の為人をこんなにも信頼している人間はあまりにも少なかった。それはもちろん本人の自業自得な部分もあるが、個人としての『五条悟』に価値や意味を見出すものがいなかったからに他ならない。五条を『最強』の座に据え、理解の及ばぬモノとすることで、自分達の都合のいいように扱おうとする人間ばかりだった。
     そして五条をよく知る者達も、知っているからこそこうも真っ直ぐに信頼を寄せることはなかった。あるいは、彼が心傾けていた生徒たちであれば、そのような相手もいたのかもしれないが、それでも、五条から『最強』というタグを外して、真正面から向き合うことは難しかっただろう。

    ───そして、それはきっと自分も…………


     五条悟は、呪術界から遠く遠く離れて、ようやく彼と『ただの人間』として向き合い、触れ合える人々と出会うことが出来たのだ。
     その奇跡が眩しくて、夏油は人知れずそっと目を細めた。



     だが、そんな穏やかな時間は長くは続かなかった。


    「──全員、静かに。……誰か近付いてくる」
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